白地に潔く黒の文字が記された表紙。本体は赤の扉で始まります。アパレル全史、まずはこのフレーズだけでも興味深いのに、「イノベーター」で読む、とのこと。益々響きます。著者は服飾史家の中野香織氏 http://www.kaori-nakano.com 。発刊を心待ちにしておりました。
https://www.njg.co.jp/book/9784534057525/
生地や皮革で作られた服だけではなく、バッグ、靴、香水、宝飾品を含む人間の外見を作る装備すべてを「アパレル」と定義した上で、その歴史を作り上げてきたイノベーター(変革者)56名が紹介されています。
なぜ「アパレル」という言葉が選ばれたのでしょうか? 「ファッション」や「モード」よりも具体的に、ビジネスとしての産業分野を示せるからのようです。詳しくは冒頭で著者により提示された関連用語の定義を読むと明快です。
第一章は
「現代につながるファッションビジネスの起点を探すと、1858年にいきあたる。」
という文から始まります。タイトルの「アパレル全史」という表現が腑に落ちました。
最初に紹介されるイノベーターがオートクチュールの始祖にして元祖スターデザイナーのチャールズ・フレデリック・ワース。フランス名はシャルル・フレデリック・ウォルト、と言えば香水ファンにはあの名香が思い出されるのではないでしょうか。私も保有しております。
JE REVIENS par WORTH en 1932
http://sawaroma.blogspot.com/2015/08/je-reviens-par-worth-en-1932.html?m=0
デザイナー、クリエイター、ブランド、経営者、エディター等の名前が8章に渡り並んでいます。既に知っていたつもりでも、著者が鋭い切り口で捉えた「イノベーター」としてのプロフィールに新鮮な好奇心をくすぐられ、夢中で一読してしまいます。
そして1月25日。中野香織氏がゲスト講師のセミナーを拝聴しました。テーマはまさにこの本。
フレグランススペシャリストの地引由美氏主催による 『La causette parfumée ラ コゼット パフュメ – 香りのおしゃべり会 』第31回です。当日は満席。
http://lacausetteparfumee.com/kaori/rapport-lacausetteparfumeevol-31.html
改めて、何度も読み直したくなりました。それぞれの時代を映す人の装いとふるまいの背景には、あらゆる偏見、差別や格差をも乗り越え、人間がより自由に生きようとする情熱的な模索のプロセスを感じさせられます。
écrit par 《SAWAROMA》