2014年8月30日土曜日

クリエイティブのセンスを開く香りの講座『パレ・パフューム クリエイティブ スクール』今秋開校

パレ・パフューム クリエイティブ スクール
(PALAIS PERFUME CREATIVE SCHOOL)

がこの秋に開校されます。

カリキュラム(授業・講師のご案内)ページに記されている
コースタイトルは
アドバンス調香クリエイティブ ファーストステップ。

私は「調香クリエイティブ」講師を担当いたします。
今回のカリキュラム6単位では、
ファッションを専攻する大学生対象に、個々のクリエイティブセンスを香りによって開き、独自の視覚表現を目指す内容を提供してきた9年間の講義経験および、これまでの私自身の香りをテーマとするクリエイションプロセスを活かした、新しい試みを提供する予定です。

開校への経緯はsawaromaブログ
新たな香り講座(PALAIS AROMA SCHOOL)に向けてにてご紹介し、
香り・arôme・parfumにてその名称の考え方についてお伝えしておりました。

7月末にご好評のうちに先行体験セミナーを終えた後、8月から、カリキュラム6ヶ月コース含むモデル形式をWeb上でご提案、様々なリクエストのお問い合わせもいただいたようです。

トップページはこのようなヴィジュアル。
学長含む担当講師2名のブログが直接リンクされています。







本日の学長ブログ記事 には、遠方からの集中セミナーリクエストなど個々に対応したプラン(10月)も提示されています。

2014年8月28日木曜日

2013年産Roseの気高さに癒されて


この春発売されていた
パレチカ 2013年ブルガリア産ダマスクローズのローズオットー。

改めて前年産と比較。
初めて開封したときの記憶から……
ブルガリア産独特のハニースウィートなインパクトは
2012年産のほうが強かったかもしれません。

微妙に穏やかで
しとやかな花の息づかいが
なめらかにユックリと拡がる2013年産。
インパクトよりも
バランスの優雅さを感じます。

毎年確かに
ブルガリア産ダマスクローズとしての香り、
ではあります。
その特徴は毎年の品質保証書に記されたとおりクリアされている、
と2009年以降毎年確認しながら感じています。
違いは
収穫年の天候、土の状態から生まれるのでしょう。


パレチカWeb内コラムページの
コチラ でも記していますが
ローズオットーに含まれる香り成分は
現在500種類以上が確認されており
さらにいまだ未知の成分もあるそうです。
特に微量成分が豊富に
存在するブルガリア産は、
深く豊かな芳香を持つと評価されています。
これは私も実感。

2013年、2012年、2011年、2010年。
各年に収穫、製造された品質証明書を比較。
発行元のブルガリア国立バラ研究所で認定されるには、外観の状態や
香り主要成分の比率が定められた基準内でなければなりません。

分析された主な香り成分の%が示す比率の数字は
毎年微妙に違います。

2012年産については現地の方からも、開花期に雨が適度に降ったため
品質に良い影響を与えたと聴いていましたが、2013年もそうであった
わけではなく…製造元でも心配されていたようです。
しかしながら、
香りの全体像は2013年産ならではの気高さを呈しています。
これは
トップノートから落ち着いた気品を感じさせたいときの
調香素材候補にもなりそうです。

久しぶりの静かな午後。
外は霧雨。
珈琲タイム…と思っていましたが
この気高い薔薇の香りが漂う空間に癒されて
お菓子もいただいていないのに
すっかり笑顔になりました。








2014年8月27日水曜日

イチジクから五感への贈り物

子供の頃
8月も終わりとなると
もぎたてのイチジクを箱一杯にいただいたものでした。

イ・チ・ジ・ク。
この4音は私にとっては
夏から秋への季語そのもの。


この色は
イチジクカラーと呼びたくなるグラデーション。
花の蕾が膨らんだようなかたち。
濃い皮の色の中身は
乳白色と
柔らかなイチジクレッドがリフレイン。

口に含むと
デリケートな香りとともに
きめ細やかなやわらかさと粒々プチプチ。
この、とろけるような触感の中に
ほのかにふんわりとした甘味…

1テンポ遅れつつ
ジンワリと広がる香りは
まさしくイチジク。
この香り、実際には存在しないのに
なぜか
シナモンやヴァニラやココナツを
合わせて想像させてくれます。
ほのかにグリーン、ふわりとヴァニラ、ココナツ、
ゆっくり遠くからシナモンを感じさせてくれたイチジクを
少しの砂糖とともに煮て冷やして一夜置きます。
甘味は一段と口当たりをなめらかにしてくれました。

バターを合わせて加熱すると
引き立つのは香り。

そういえば昨年の初秋も
コチラのイチジクパイを堪能していたのでした。

食べる、ということは
イマジネーションも含めて五感で楽しめるものであり
絶妙のバランスでそうできたときこそ
「美味しい」という幸せを感じられるのでしょう。

生きている限られた時間の中で
こうした食を大切にしたいと
改めておもいます。


2014年8月26日火曜日

緑の中のロダン館・静岡県立美術館

JR草薙駅から、静鉄バスで約6分。
緑の木立の奥深くにありました。

静岡県立美術館




中庭。光と緑と石のハーモニー。




目的は現在開催中の、アニマルワールド 〜9月7日まででした。

石田幽汀の『群鶴図扉風』は近くで眺めると繊細な鶴の表情、柔軟な筋肉の優雅さに惚れ惚れとし、遠くから眺めると、まるで鶴たちが動いているかのような錯覚。

……以降多様な描写によるいきものたちにすっかり心なごみ、
続いてさまざまな風景画に風や水の音を感じ…


ロダン館 へ。彫刻を鑑賞するための空間。





作品については、ロダン館Webサイトに詳しい説明がありますが
この空間でリアルに鑑賞して少なからずの衝撃を受けてから読むと
より深く感じられると思います。

人の筋肉から感じられる精神性。
バルザックの表情は一度眺めたら忘れられません。
『考える人』の全身の筋肉。

ロダンは当時としては前衛的だったようですが
コチラに記された内容

大切なのは巨匠の作品を模倣することではなく、巨匠のような視点をもって実直に対象を観察することであるとロダンは考えていた。


には、私もまさにそのとおりと感じます。
バレエ・リュスで『牧神の午後』の振付を行ったニジンスキーを支持したり
ボードレールの『悪の華』の表紙に挿絵を描いたりしたロダン。



カフェ・ロダン
からの空と水面。晩夏の光と湿度とそよ風と。





四季折々の色に囲まれて
訪れるたびに
新たな色や形を発見できる喜びは
このような美術館にあるのでしょう。

月曜ですが、『水曜日のネコ』を。

密度の濃い週末からそのまま月曜講義の出張へ。
月曜ですが、
すでに週中気分。

もう今夜はネコ気分で眠りたい…
と思っていたら
出逢いました。



水曜日のネコ。。


ふわっと香る
オレンジピール&コリアンダーシード。
生まれは軽井沢でした。

柔らかな泡の余韻に安らいで。

乙女座新月ではじまった
8月最終週。

気がつくともう火曜。






2014年8月22日金曜日

ルミナスなボトル・Jour d'Hermès

…光は夜明けの約束。光に目覚める女性らしさ。…

Jour d'Hermès
オードパルファム《ジュール ドゥ エルメス》
に記された言葉です。

さまざまな角度から感じられる魅力、
それは形があるようでいて
無いようで…
けれど
見つめていれば必ず
一瞬一瞬きらめいて伝わる
微細な神秘性。

Luminous…光り輝き、
漂うように香る、この繊細な魅力は
このボトルで視覚的にも表現されています。










Jour d'Hermès
オードパルファム《ジュール ドゥ エルメス》。
エルメスの専属調香師ジャン=クロード・エレナによるフレグランス。
フランスでは2012年12月、日本では翌年3月にデビュー。
明るいシトラスと軽やかなスパイシー感のイントロは
いつしか優雅な花々のオーラ漂う官能的な空気へ導かれて。







2014年8月20日水曜日

気分は秋色

日中の灼熱がおさまると
夜風は秋へ。

いつしか日は短く
虫の音色は変わっている。

某木曜夜。
纏わりつくような湿気を抜けてたどり着いたお店。
ドアを開けると静かな冷気と白檀の香。

ゆったりとした空間に座り、
ブルゴーニュの白とともにいただいた一皿。


ブリーを筆頭の3種類とともに
ほおずき、干し葡萄、干し無花果…まさに秋色。


そして日曜夜。
スパイシーなカレーを頂いたあとのチャイ。


ミルクティよりも深く
ココアよりも柔らかなこの素敵な色に
カルダモンやシナモンの温かさを感じて
秋の夜長を想像。


2014年8月17日日曜日

ハートなプラム・夏の神様

この夏は
幾朝このフルーツに救われたことでしょうか。

窪みにそってカットするとハートのかたち。
太陽という名の山梨産。


白く靄がかかったようなブルームたっぷりの皮ごと
そのほとばしるキュンとした酸味から
繊細な甘味へのグラデーション。

目覚めたばかりのふらふらボンヤリが
みるみるシャープに。視界を開いてくれます。

芳醇なバラ科の植物らしく
チェリー、ピーチ、梅、桜…
そして薔薇をも彷彿とさせるアロマのプラム。

この夏は
ネクタリンやソルダム、貴陽、太陽と
さまざまなプラムから元気をいただきました。

トマト、ゴーヤ、甘酒とともに
私にとっての夏の神様です。





2014年8月16日土曜日

シャンパーニュとブルゴーニュ・原産地ならではの香り

親しい人達と
一期一会の特別な時間。
そういうときにこそふさわしく、
有難い味わいと香り。


フランスの北部、シャンパーニュ地方で作られるものにのみ
名付けられることを許されたシャンパーニュ。
DELAMOTTE社の辛口、BRUT。
ラベルの下に小さく記された
Le Mesnil sur Oger というのも地名です。

そしてブルゴーニュは
CHASSGNE - MONTRACHET(地名)の
BRUNO COLIN(生産者)による2011年産の白。
キリリとしたミネラル、ハーブの第一印象が
いつのまにかまろやかで芳醇な余韻に変化したことを記憶。

ラベルの下に小さく
Appellation d'Origine Contrôlée
(AOC : 原産地統制呼称)。

地域(土地と気候)と品種、
そこで製造に関わる人の想いと献身。
さらに、その価値を充分に知る人により
大切に管理される過程を経て
初めて体験することができることの素晴らしさ。

フランスの魅力は地方にこそ、と
実感させてくれた7年前の番組を思い起こし、検索。
NHK『ブルゴーニュ小さな村の豊かな実り』が10/5より放送開始!の記事を見つけました。

ワインが地域ごとに多様であるように
フランスでは地域ごとに極めて多くのチーズが生産されています。
variété (変化に富むこと、多様性、種類の多さ)
という単語を仏和辞典で調べるとすぐに次の例文を見つけました。

Les fromages français sont d'une extrême variété.
(フランスのチーズは極めて多種多様だ)

………
貴重なスペシャリテは、特定の場所が育んだもの。
その価値を忘れずに護ろうとする人の想いと共に。


2014年8月13日水曜日

1秒香るだけでも麗しい・Repetto Eau de Parfum



香りの魅力は
一瞬で感じることができるもの。

昨年、コチラ
の記事でもご紹介のレペットが、初のフレグランスを発売して1年目、新たな香りを発表。写真は先月、ブルーベルジャパン株式会社主催イベント会場での展示です。
前作オードトワレのボトルの形は受け継がれていますが、表面は全てフロストに。黒の外箱とともに、一層なめらかで官能的なニュアンスを感じさせる香りを想像させます。





昨年発売されたオードトワレのブログ記事
にもそのボトル写真を載せましたが
クリアなガラスの透明感とはうってかわって
艶かしい新作ボトル。
舞台に向かうプリマドンナの
秘めた熱い想いと緊張感が
紅潮した肌に描く
官能的なオーラさながらに。

レペット公式サイトでは
この新作のイメージを
コチラの動画や文章で表現。
オードトワレの優雅で柔らかな流れを踏襲
これから舞う自らのイメージを
一瞬の決意に秘めて舞台に向かうエトワールさながらの
華やかさと余韻に溢れた香り。

夏に旬を迎えるプラムの鮮やかなフローラルフルーティの旋律が
新たなトップを引き立てて
まろやかな花びらの甘美な舞へ。
包み込まれるようなうっとり感は
オリエンタル調の余韻を深く響かせるアンバー、パチュリ、ヴァニラです。

先月
ちょうどバレエ・リュスのコスチューム展を鑑賞したときに
この香りを纏い、プリマドンナの心に想いを馳せました。

長い髪が風になびく瞬間…
裾がゆるやかに波打つたび…
わずか1秒香るだけでも十分に麗しいオーラが漂いそうです。







2014年8月10日日曜日

TOKYO・涼景

盛夏の東京。

都心で出会った夏の風景。
いずれも
厳しい暑さの中
新作フレグランスの発表会が行われた場所。

6月、六本木にて。
緑と白とブラウンと。




7月の初め。
表参道・骨董通りの夕暮れ。
白い壁、土色のベンチに薔薇の花。




7月も半ば…
青山にて。
ほんのり淡いスカイブルーにベージュと白と深緑。




8月間近。
六本木にて。
浮雲ふわりの空、陽射しに照らされた植物と高層ビル。
パラソルの下、冷えたシャンパンを楽しむ人たち。



いずれも
その日初めて出会った香りの思い出とともに。

2014年8月9日土曜日

香り・arôme・parfum

肯定的に「におい」のことを示す日本語、「香り」。

この「香り」を表すフランス語の代表的なものに
parfum (英語では perfume)
arôme (英語では aroma)

の二つがあります。

これらは
「人にとって快い好ましいにおい」を示すという意味では
重なるところも大きいのですが、語源も違うようですし
フランス語の辞書に書かれてある内容も異なります。

parfum の語源は「煙によって」、
すなわち火をもって燃やすことで感じられた
(何か特別な意味を感じさせるような)イメージを与えた、
という印象を私は感じています。
だからこそそうした香りは
神に捧げられたのかもしれません。
ゆえに私は「香り」を抽象的に示すときに使用したくなります。

arôme については語源は不明ですが
aromates (芳香性植物)からの香り、
コーヒーやワイン、酒類の香り…と
一川周史先生
(その三冊の貴重なご著書から私がフランス語の恩師と尊敬する)
は記されています。
私自身も、アローム、アロマという音の響きからは
人が呼吸とともに体内に入れて感じる総合的な香りの印象というか、
生きるため、食事という本能に直結した感覚が選んだ
「原始的芳香」のニュアンスで感じとっています。

確かにフランス語の辞書(手元にある旺文社プチロワイヤル)でも
parfum は1香り、芳香、2香水、
3アイスクリームなどの風味・フレーバーに続き
4番目に、雰囲気、印象…と記され、意味は広く深いようです。
一方、arôme は1も2もなく
コーヒー・ワインなどの良い香り、芳香、アロマとしか
記されていませんでした。

アロマテラピーという造語のせいで
「アロマ」は「治療」だとまで
極端なことを言われる方がいらっしゃいます。
でも言葉というものは
本来の意味に立ち返って使用されることが必要なときもあります。

さて、そのような想いから、
先月札幌でのAEAJ主催イベントに
多分野に活かす「香り」の価値を伝えるの講演時、
私の頭の中では 「香り」=〈parfum〉をイメージしていました。
それゆえ、講演の中で紹介したスライド資料の中には
次の写真にある、ボードレールの引用文を入れました。


上記は私のiPAD上の資料データを撮影したものです。

視覚に訴える色彩、聴覚に訴える音に対し
嗅覚に訴える香りが parfum 。

そのような経緯から
コチラ で予告し、9月から開校される新スクールの名称は
parfumを英語にしたperfumeを用いることにいたしました。

学長のマレーン・澤田先生の本日のブログ記事のタイトルにある名称がその結果です。

開校が近づきましたら改めてご紹介いたします。


2014年8月8日金曜日

8月8日、ブルーベリーを眺める

昨日買ってきたブルーベリー。
今日の曇り空の自然光では、ブルーというよりグレーに近い。
ブルームがかかった白っぽさ、
グレイッシュでどことなく青みはある微妙な色合いは
同じく有機的で複雑な色味の陶器に合わせてみたくなった。


遠目ではますます黒っぽく
それでいてなにか貴重なもののように見える。

ブルーベリーの外観の面白さは
実の先端の開口部。


五弁の花々が見えた。

宝石のようなこの実を口に含むとまずは
独特の酸味と風味。甘みは極めてほのか。
でもこの独特の風味、
幻のように鼻から抜けていく神秘的な香りを確かめたくて
何粒も何粒も…と。

あとに残る静かな余韻は記憶の中に深く刻まれる。

この、繊細でつかみどころのない魅力が
きっと白いチーズケーキの甘さを引き立てたりするのだろう。

フレグランスでも
このブルーベリーのイメージが活かされた
コチラ が記憶に新しい。

日本ブルーベリー協会によると、なんと今日8月8日はブルーベリーの日だった。


2014年8月7日木曜日

目にも涼やかな愛らしさを・Marc Jacobs Daisy Dream


先月、コチラ のイベント会場には、新作含む数多くのフレグランスが
色調に沿って華やかに展示されているコーナーもありました。こちらでは、パルファム ソムリエールによるコンサルティングも提供されていたのでした。



その中で、目に涼し気なブルーカラーのボトルたちをクローズアップ。


透明感のあるガラス、
シルバーのひんやりとした光沢に加えて
ミッドナイトブルー、マリンブルー、アクアブルー…
手前のアイスブルーは『ライトブルー』のキャップです。

さらに手前には…
思わず手にとってしみじみと眺めたくなってしまった
この愛らしいドリーミーなボトル。


その名も
Marc Jacobs Daisy Dream。
初夏のコチラの記事
Marc Jacobs Daisy Dream
05/08/14 01:50:09 (16 comments)
by: Sanja Pekic
をチェックして、そのソフトなブルーの涼やかさと白い花々とのデコレーションによる可憐さが印象的だったことを思い起こしました。

Top notes: blackberry, pear, grapefruit
Heart: blue wisteria, jasmine, lychee
Base: white wood, musk, coconut water

ということで…
ブルーウィステリアの気品や
ココナッツウォーターの柔らかな余韻が
ふんわりエアリーな夢を感じさせそうです。
まさにDaisy Dream。

日本でも8月13日発売とのこと。
目にも涼やかな愛らしさを。

情報提供
ブルーベル・ジャパン株式会社
香水・化粧品事業本部
カフェデパルファム


2014年8月3日日曜日

旅する気持ちで ・ 広山 均著『グラース慕情』

夏の休日。
旅する気持ちで読んだ一冊。
かつて愛用したフレグランスへ想いをめぐらす記憶の旅、
そして南仏グラースの四季を香りとともに想像する旅。



『グラース慕情』広山 均著 /フレグランスジャーナル社

著者の広山氏によるご講演を、「国際香りと文化の会」や「香りの図書館」主催のテーマで少なくとも3回は拝聴したことがある。私が天然・合成ともに香料の知識を深める機会を得られたのはこの方の恩恵に依るところが大きい。真摯で張りのある落ち着いた語り口が印象的で、何よりも実際にグラースで学ばれた日々で感じられた想いをいきいきと語られた表情は今もよく憶えている。今年80歳を迎えられる広山氏にとって今も慕情として忘れ難い香りへの想いは、多くの読者に香りの魅力の再発見を導く貴重なメッセージとなっている。

慕情。
ゆえに穏やかな語り口が聴こえてくるようであり
ふと開いたどのページから読み始めても香りのタイムスリップができる。
ときにフランス語読みの音のままカタカナになっている言葉に微笑む。

名香を生み出した調香師の創造性について
語られているくだりは特に興味深い。
これといった方法論があるわけではない。
確かなことは
グラースの地に実際に咲く生きた花々の香り、
歴史に残る名香…
こうした本物のお手本を感受できたからこそ
新しい香りのカタチへのインスピレーションから創造へのプロセスが生まれた。
かつてご講演の中でも仰っていたがこうした広山氏の見解には
私も深く同意したい。

2014年8月2日土曜日

白い花の秘密

八月。
真夏の暑さを
目から涼しく感じさせてくれた白い花とグラス。
昼間の光の中では、清楚ですがすがしい。



先月、とあるレストランにて撮影。
この花に香りがあったかどうかは確認していない。
名前も知らないが、私にはその姿から
夜に咲く白い花の香りを想像した。

……夜に咲く白い花。
静かな闇の中、その姿は
昼間より一層妖艶な香りを放ち
受粉を手伝う生物を巧みに誘い生を繋ぐ。
全ての白い花がそうなのかはわからない、けれど
たとえばジャスミン。チューベローズ……。

6月にコチラ に記した『国際香りと文化の会』WEB上の中村祥二氏による連載の夏号が、まさにこうした植物をテーマに興味深く綴られていた。
コチラ トップページから、夏号「夜に香りを強める花」をクリックするとその文章を読むことができる。

風蘭、チューベローズ。
白い花の秘密、夜に香る花の秘密。
その目的に合った花の形状…………。
花の香りに興味のある人であればすぐに引き込まれる内容。

そういえば コチラも白い花だった。なんとなくその形を思い浮かべると、これも夜に香りを強める花なのかもしれない、と想像。