ラベル 講義 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル 講義 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2017年2月8日水曜日

カモミールの香りから・ Ma mémoire de Matricaria recutita



ジャーマンカモミールティー、

イエナグラスのポットで試飲。

2010年より「自然科学概論」講師を担当する静岡医療学園専門学校講義にて)


Dégustation au cours de l'école à Shizuoka, 

l'arôme de la tisane(Matricaria recutita)

avec le verre de Jena.



水蒸気蒸留によって濃く青い精油となるジャーマンカモミール。その状態とは異なる香りを味覚とともに体感する大切な機会です。色と香りを最大限感じてもらうために信頼できる品質の耐熱ガラスポットを用いました。


お茶、といえばほぼ緑茶か紅茶しか飲んだことのない若い学生さんにとって、このジャーマンカモミールは圧倒的に異文化のよう。甘いような苦いような、フルーツのような、花のような匂いがするのに味がない、不思議な感じ、ヨーロッパって感じ、高級そう、なんだか落ち着いてリラックスする、好まないけど面白い、ご飯に合わなさそうなどなど。


飲み慣れていない未知のものに出会ったとき、でもそれが文化は異なれど同じ人間が好み大切にしてきたものだとわかっていたら、まずは自分の身体の感覚に委ねたいものです。素直な感覚が教えてくれることは多く、そうした体験はよりよく生きていくための糧にもなるはずです。


私がこのジャーマンカモミールティを初めて特別に美味しいと感じたのは、とあるワイン専門のバーでお茶を頼んでこれを出されたときのことでした。様々な複雑なワインの味と香りを楽しんだ後、その余韻をかき消すこともなく、どことなく植物が秘める繊細で複雑な感触が調和していたから。優しい、そして単純ではない、深く記憶に響く…。


10年以上も前のこと、イギリスのデザイナーが携わったという滞在型ホテルが某高原に新設され、私はその併設アロマトリートメントサロンを監修しました。前任者が調香したというトリートメント用の香りを創りなおすことになり、私は5種の新しい香りを提供。そのうちの一つが、このジャーマンカモミールをほんの少量活かした"Relaxing"というブレンディッド・エッセンシャルオイル。そのホテルではこのカモミールがブレンドされたハーブティーももちろん定番でした。



Relaxing。今も活用されている様子。

キャリアオイルに希釈するとほんのりブルーのオイルとなり、目にも優しいのです。

http://www.nikionline.jp/SHOP/niki_0003_RELAXING.html


東京にて、sawaroma より。

écrit par SAWAROMA à Tokyo.



2016年3月11日金曜日

Degree Show 2016 of Textile design Major/イメージ香るテキスタイル



東京造形大学テキスタイル専攻
有志卒業・修了制作展2016
3/14まで Spiral Gardenにて


Tokyo Zokei Univercity,
Textile design Major - Department of design 
Degree Show 2016
Until March 14, at Spiral Garden (Omotesando).


Tokyo Zokei Univercity, 
Textile design Major - département du design.
Exposition des diplômes 2016.
Jusqu'au 14 mars, à Spiral Garden.



糸、織物、染物、すべては素材から始まります。
テキスタイル、それは素材からのデザインの成果。

For the thread, the fabric, dyeing, everything starts from materials. 
Textile, that's an fruition of the design from materials.

Pour le fil, le tissu, teinture, tout commence à partir de matériaux. 
Textile, c'est un fruit de la conception de matériaux.



……
かつて、文化学園大学における私の担当講義『ファッションとアロマ』の中で
学生に促した課題を回想。
その課題とは、天然香料の香りのイメージからテキスタイルを想定した視覚表現でした。

……
Je me suis rappelé le défi que j'incitais aux mes étudiants, 
dans mon cours qui s'appelle 《La mode et l'arôme》à Université de Bunka Gakuen .
Le défi,  c'était 《Expressions visuelles destinées textiles inspirés par l'odeur de arôme naturel》.

……
I recalled  the challenge that I encouraged to the my students,
in my course called 《Fashion and Aroma》at Bunka Gakuen University.
The challenge, it was《Visual expressions intended textiles inspired by the smell of natural aroma》.

…written by Sawa Hirano 《SAWAROMA》at Tokyo.



参考記事/ Related articles

18 visual works from 12 kinds of aromaー 文化学園大学 けやき祭にて
http://sawaroma.blogspot.jp/2012/05/18-visual-works-from-12-kinds-of-aroma.html

《On Designing 》by Anni Albers / 日本語版『デザインについて』
http://sawaroma.blogspot.jp/2016/01/on-designing-by-anni-albers.html








2014年7月11日金曜日

札幌にて講演いたします(AEAJ 地区イベント AROMA SEMINAR)

来る7月13日午後。
私は札幌にて
『多分野に活かす「香り」の価値を伝える』
をテーマに講演いたします。

これは
公益社団法人 日本アロマ環境協会が主催する地区イベントアロマセミナー今年度春夏期イベントのセミナーテーマの一つでもあります。

昨年6月には金沢にて薔薇の季節にちなみ、コチラの記事にてお伝えした内容の講演をいたしました。

今回は、国際的にも観光地として名高い北海道の皆様に
「香り」という一つのテーマが
人の文化活動における様々なジャンルに活用し得る可能性を
私が実践してまいりました事例からお伝えできればと考えています。

コチラがそのご案内リーフレットの全内容です。


上の写真はその一部、札幌セミナーのご案内ページです。

リーフレットでも記している
『自然科学概論』からの事例では
香りの記憶がくれた贈り物に書いているように、人間という自然が、植物という自然にその香りを感覚を通して対面し学び得ることの一端をお伝えできればと思います。
2013年度まで9期に渡り実践した大学講義『ファッションとアロマ』からの事例では、18 visual works from 12 kinds of aromaー 文化学園大学 けやき祭にてでご紹介した香りによるヴィジュアル表現へのクリエイション導入の成果についてお話するつもりです。

多分野に活かす「香り」の価値を伝える。
キーワードは可能性と価値。
このどちらにも直結する人間の感覚が嗅覚です。
価値。何に価値があるのか見えにくい時代です。
多くの方々に今あらためて
嗅覚情報の大切さを感じていただけますように。

2013年12月29日日曜日

2013年の10展に感謝を込めて

驚き。
想像に浸る時間。
時空を超えて静かに
展示されたモノと対話する
かけがえのないひととき。

2013年
深く記憶に刻まれた10展について記録した記事を
文章の一部を引用しながら振り返ります。


『香りとファッションの美学展』と平田幸子氏による講演会

漆喰でできた重厚な壁や天井を走る巨大な梁が織りなす空間は
見慣れていたはずのいくつかの香水瓶の新たな魅力を感じさせ
静かに豊かな時間を楽しむことができました。

『Paris、パリ、巴里 ─ 日本人が描く 1900–1945』で佐伯祐三作品に再会

チラシの画のタッチをみたときから
その温もりに憶えがあった。

『ヨーロピアンモード』〜『ローマの休日』〜『ROMA /Laura Biagiotti』

『ヨーロピアンモード2013』/文化学園服飾博物館で目に留まったドレス。
それは、かつてモノクロ映画でしか見たことがなかった
『ローマの休日』の冒頭で
アン王女(オードリー・ヘプバーン)が着用していたドレス。
白のドレスかと思っていたら
淡い穏やかなゴールド。
細かな刺繍模様。

18 visual works from 8 kinds of aroma ー 文化学園大学 けやき祭にて

香りという抽象的なものを視覚表現する経験が
目に見えない時代の空気感を服に表現していこうとする
かれらのクリエイティビティに反映されていく…
そのような期待感を毎年実感しています。

美的好奇心で見る『貴婦人と一角獣 展』

メインの作品と同じように印象的だったのは
「算術」という作品。
算術は、美を表す比率を論証するための学問、
というようなことが記されていた。
どこか数学には美的好奇心が漂う、とは
昔から感じていたことだったから。

『色を見る、色を楽しむ。…』・ブリヂストン美術館にて

魅かれるものは
何度も
近くからも遠くからも
立ったり座ったり
色々な角度から眺めた。

"STYLE'S CAKES & CO."での個展

あたたかみのある木のナチュラルブラウンを基調に
壁のグレイッシュな、というかスモーキーなブルー?の色が
シックな店内。
波多野さんのモノクロームの絵が溶け込んでいます。


国宝 興福寺仏頭展 / 東京藝術大学大学美術館、そして根津神社

実物に対面したときの清々しさと安らぎは素晴らしく、千年以上も前にこのような人物が存在したかと想像するだけでも厳かな気持ちになりました。

緑を抜けて、21_21 DESIGN SIGHT

実際の自然の中からさまざまな色々を採集し再編集する面白さと
抽象的なイメージを自由に色々に置き換えていく試み。
それは、香りの創造にも通じるクリエイション。

「ロマンティック・バレエ」から見る19世紀

バレエを通じ
主にフランス19世紀の歴史背景に思いを馳せた時間となりました。

2013年12月25日水曜日

2013年の8冊に感謝をこめて


2013年も多くの書物に出会いました。
1点の好奇心から波紋のように
世界を拡げてくれる書物の存在はかけがえのないものです。

今年sawaromaブログでご紹介した本のうち
私が、香りの専門誌 " PARFUM " 165~168号(春〜冬号)内
書籍紹介ページ "BOOKS "に於いても
媒体用に新たに紹介文を書いた8冊を記します。

一年前を振り返り
最初の一冊目のみ、記事中の一部を引用します。


塚田朋子 著 『ファッション・ブランドとデザイナーと呼ばれる戦士たちー西洋服後進国日本の千年ー』と出逢えた理由

私が2012年の暮れにこの本に出逢えた理由は、初めてフランスを訪れたときに感じた「美」という概念への問題意識に端を発する。その後経験したデザインコンサルティングの仕事、ファッション誌編集者としてミラノを訪れたときの感覚…香りという目に見えないものの価値を伝えるには素材活用の歴史を知ることだと思い至りアロマテラピーを学び、結果香水を含むファッションの領域に関わる仕事に携わっていること。そのようなプロセスなしには、この本を手にとり一分も経たないうちに今の自分にとって必読の書と決断できなかったかもしれない。

真実を求める現代の知性6人の語り・『知の逆転』を読む

『カフカと映画』/ペーター=アンドレ・アルト 著 瀬川裕司 訳(白水社)を読む

美観美香な果物を活かす・『果物のごはん、果物のおかず』フルタ ヨウコ著/誠文堂新光社

『調香師が語る 香料植物の図鑑』(原書房)と過ごす午後

『今のピアノでショパンは弾けない』から回想した「香る音」

少しの創意で"美"を生む心・芦田 淳 著『髭のそり残し』

…苦さの果ての、そのつぎのよろこびを。『買えない味2 はっとする味』より


限られた時間の中で
自分一人では決して
知りようのなかった
考えつくこともできなかった世界を
文字を通して共有共感できる喜びに感謝を込めて。

2013年11月27日水曜日

ブランドを伝える今年の8香・鑑賞講義より


担当講義「ファッションとアロマ」後期9回目。
(文化学園大学 現代文化学部 国際ファッション文化学科)

8回目まで、アロマテラピーのみならず香水原料としても重要な天然香料20数種類を丁寧に鑑賞、言葉やヴィジュアルで表現する訓練を積みながら各香料の背景知識を得てきた学生たち。彼らに今年日本で発売されたフレグランスのうち主にファッションブランドのものをセレクトし、ネーミング、ヴィジュアル表現の解説後に香り鑑賞の機会を提供。

今年の選択のポイントは「ブランドを伝える」。

50年以上のブランドの歴史をもつフランスのレペットが初のフレグランスを発売したり、メルセデス・ベンツが女性向けの初フレグランスをデビューさせる意味は、
より広く深く、ブランド認知を高めようとする心意気の現れに他ならない。

イッセイ ミヤケにしても代表的なプリーツプリーズ誕生20周年目の今年にこの名のフレグランスを誕生させているし、ジバンシィも1970年代に熱狂的支持を得たという「ジバンシィ ジェントルマン」(1975)を受け、現代のジェントルマンの新解釈として「ジバンシィ ジェントルマン オンリー」をデビューさせている。

クロエも2008年からの香りの表現の中心を成してきたローズにフォーカスし、これまでの香りとともにクロエフレグランス、クロエブランドを強調。

ポール・スミスはデザイナーであるポール自身の私的な世界をこれまでにないほどに表現した香りを時間をかけてプロデュース、フェンディはブランド発祥の地、ローマという原点を軸に赤をテーマとした香りを掲げている。

8点について
私がsawaroma記事で綴ってきたものを以下に貼る。

1,パルファム プリーツプリーズ イッセイ ミヤケ オードトワレ
2013年1月30日全国発売
「視覚から嗅覚への再構築・革新的デザイナーブランドの新香水」

2,ジバンシィ ジェントルマン オンリー オーデトワレ
2013年5月2日全国発売
「"Gentlemen Only"(Givenchy) と"Midnight in Paris"(Van Cleef & Arpels)」

3,メルセデス・ベンツ フォーウィメン オードパルファム
2013年6月5日発売
「現代を軽やかに疾走する女性へ・メルセデス・ベンツ フォー ウィメン」

4,レペット オードトワレ
2013年8月21日発売
「1947年創業『repetto』初のフレグランスが今夏デビュー」
「" Elegance is all " ・繊細なオーラを描くレペットの香り」

5,ローズ ド・クロエ オードトワレ
2013年9月4日発売
「薔薇の優しさにつつまれて・Chloé 新フレグランス発表会」
「ダマスクローズの気品が優しく香る " ROSES DE Chloé "」

6,パルファム プリーツプリーズ イッセイ ミヤケ オードパルファム
2013年9月18日発売
「紫のボトルと香料に魅かれて・Issey Miyake Pleats Please Eau de Parfum 2013」

7,ポール・スミス ポートレートフォーウィメン オードパルファム
2013年10月23日発売
「"Portrait " (Paul Smith )・香るたび、ポートレート」

8,フェンディ アクアロッサ オーデパルファム
2013年10月25日発売
「Fendi L’Acquarossa・生命力と揺るぎない芯を秘めた赤」

学生によるレポートを一読。
香りを伝えるヴィジュアル、言葉での表現の重要性を実感していることがよくわかる。さらに、9月からこの講義を受け始めたときよりも格段に彼らの香りを言葉で表現する力が高まっていることを感じられる。
35名の学生の感じ方は様々。どの8種にも「これが一番好き、印象的」というコメントがある。香りから具体的な人・場所・時間もイメージできている。
8種という比較の上でわかることも多い。
日本、フランス、ドイツ、イギリス、イタリアの名だたるブランドが香りを通じてブランド固有の価値を伝える表現にどれほど創造力を尽くしているか、そのリアルな実感は必要だろう。

2013年10月30日水曜日

18 visual works from 8 kinds of aromaー 文化学園大学 文化祭にて


いよいよ11月。文化祭シーズン到来です。

文化学園大学 第63回文化祭(11/2,3,4日・新都心キャンパス)

教科展示において、私が講師をつとめる「ファッションとアロマ」2012年度学生課題作品から8種類の香りのヴィジュアル作品が展示されます。
場所はC館5階です。

文化学園大学 小平キャンパスでの 6月開催けやき祭にて展示された内容が
11月は新宿の新都心キャンパスに展示されています。

昨年のようすと、この科目については
18 visual works from 12 kinds of aromaー 文化学園大学 けやき祭にての記事で説明しています。

今年は2012年度学生課題作品から
8種類の香りのヴィジュアル作品が展示されます。

オレンジスイート
レモングラス
フランキンセンス
ラヴェンダー
ローズオットー
ジャスミン
イランイラン
サンダルウッド

違う背景をもつ人それぞれ
香りから感じ取るイメージが違うということが
目で改めて確認できます。

想像力が捉えた形の多様性。

香りという抽象的なものを視覚表現する経験が
目に見えない時代の空気感を服に表現していこうとする
かれらのクリエイティビティに反映されていく…
そのような期待感を毎年実感しています。

2013年5月30日木曜日

18 visual works from 8 kinds of aroma ー 文化学園大学 けやき祭にて

文化学園大学 小平キャンパスにて毎年6月第1土曜に開催される
けやき祭 。今年は6月1日に開催されます。

昨年のようすは
18 visual works from 12 kinds of aromaー 文化学園大学 けやき祭にて

今年は、学内教科展示室において、「ファッションとアロマ」2012年度学生課題作品から8種類の香りのヴィジュアル作品が展示されます。

オレンジスイート
レモングラス
フランキンセンス
ラヴェンダー
ローズオットー
ジャスミン
イランイラン
サンダルウッド

違う背景をもつ人それぞれ
香りから感じ取るイメージが違うということが
目で改めて確認できます。

香りという抽象的なものを視覚表現する経験が
目に見えない時代の空気感を服に表現していこうとする
かれらのクリエイティビティに反映されていく…
そのような期待感を毎年実感しています。

2013年5月26日日曜日

全方位へのびのびと・スイートマージョラムの優雅な曲線

窓辺の一輪挿しのスイートマージョラム。
かすかにスパイシーでほのかにフローラルな香りが
緑の小さな葉から漂い
なごみます。




一週間前に講義で使った後
肉料理にも使いましたが
葉の開き方が愛らしく丈夫そうな茎をもったものは
水に挿しておいたのです。




数日後。
有機的なその曲線はゆるやかに上へと伸び
水の中では根を張りはじめました。
なんと愛らしい。

学名 Origanum majorana
Origanum = refers to a plant that stretches and grows in all directions,
majorana = the large form
("375 ESSENTIAL OILS AND HYDROSOLS"/ JEANNE ROSE)

ラテン語の学名が示す意味はまさに上記英語そのもの、
「全方位に向けて伸び成長する」大きくなる植物。

まさに一輪挿しで
この植物の成長力を日々実感。

今年も
スイートマージョラム・スパイシーな葉と可憐な花で撮影できたような花に出逢えますように。


2013年5月2日木曜日

MFU主催・第44回ファッションマーケティング研究会(5/14)にてお話致します

来る5月14日。
一般社団法人日本メンズファッション協会 主催による
第44回ファッションマーケティング研究会
「ファッション業界におけるアロマの活用と可能性
〜五感に訴える売り場づくりとアロマの歴史文化を学ぶ〜」

におきまして、講師の一人として私がお話させていただきます。

MFU。
一般社団法人日本メンズファッション協会(THE MEN'S FASHION UNITY)
の略称です。半世紀の歴史をもつMFUの目的とはどのようなものでしょう。
協会の方にいただいた資料に記載されていましたので「」に記します。

「メンズを起点として、単にファッションにとどまらず、広くライフスタイルの多様性や生活文化の向上、健康な生活環境といった視点に立ち、人々に生きる喜びと感動とを提供しつづけることを目的としています。」

詳しくは、MFU公式Webサイトにてご確認いただけます。

私は、文化学園大学 現代文化学部 国際ファッション文化学科において
2005年より毎年「ファッションとアロマ」という講義を学生に提供して
まいりました。講義の中では
実際に天然香料から最新フレグランスまでを体感する機会を設け
「におい、香り」の文化と人との関わりの歴史を実感しながら
自らの感覚を研ぎ澄まし美的感受性を磨き、感覚表現力を高める
ための教育カリキュラムを企画実践しています。

このような立場から
短い時間ではありますが

・そもそも人にとって「におい・香り」とは何か
・ファッションブランドと香り
・香りの視覚化

について
お聴きいただけるお一人おひとりのご経験から
改めて再考・発見に繋がるようなお話にしたいと考えております。

2013年2月6日水曜日

"Mon Nom Est Rouge"・言葉で紡がれた「赤」の香り

「わたしの名は赤」。
そんなタイトルの記事を真紅の薔薇の写真とともに発見。

My Name is Red - Mon Nom Est Rouge
10/25/12 18:19:32
By: Serguey Borisov


いや、正確にいえば数多くの記事のアイコンから、今日の私の目に真っ先に飛び込んできたのが赤い薔薇の写真だった。

赤い薔薇。
4週間前を思い起こす。



撮影のために用意すべき薔薇はピンクのはずだった。
しかし私は
カメラマンはじめスタイリングを行うスタッフ全員が
薔薇の命や力、強さと圧倒的な魅力を感受しながら撮影に臨むには
この真紅の薔薇の存在が現場にどうしても必要と感じ、持ち込んだ。
撮影対象になるかどうかは問題ではなかった。

さて、上記で紹介のインタビュー記事では
"Mon Nom Est Rouge"(フランス語で「私の名は赤」)という
フレグランスが生まれた経緯が語られている。

モチーフとなったのは
トルコ出身のノーベル文学賞受賞作家、オルハン・パムクの代表作
"My Name is Red" 「わたしの名は赤」である。

この作品に魅了され、深くインスパイアされたディレクターは
赤という色、そのものの意味を掘り下げて言語化し、イメージを描き
各香料を原料手段として置き換えられる調香師に嗅覚表現を託す。
このプロセスが実に興味深い。
なぜならば、私が8年前から大学で実践している講義が
香りの言語化、視覚化をテーマとする表現の探求であるから。

上記英文記事から一部をご紹介。(続く「 」は私による要約翻訳)


We decided it is a spiced rose. Rose with a velvety sensation, with a metallic taste of blood from its thorns. Rose Femme Fatale—passionate, attractive and dangerous. Geranium gives a metallic nuance, cardamom and especially cinnamon share their passion and brightness. Rose is not at all tender. Incense, cedar and musk root ground the rose, make her strong and stable…

「赤の表現としてスパイスで香りづけされた薔薇を選択。そのベルベットのような感触、棘による血液の金属的な味、情熱的、魅惑的、そして危険なファム・ファタル(運命の女)。ゼラニウムからは金属的ニュアンスを、カルダモンととりわけシナモンからは情熱的で明るいトーンを。薔薇自体は決して優しいものではなく、シダー、ムスクルートによってその強さと安定感を引き立たせる…」

その他すべて読み応えあり。
香りによる表現を仕事とされている方々には
特にこの文章に続く調香師のコメントを英文で堪能いただきたいと思う。

さて、「赤」の意味。
時を超え文化を超えて、人が普遍的にこの色から思い浮かべるものは何だろうと考えたとき、筆頭に挙がるのはどんな人の身体に流れている血液の色かもしれない。血液は命には無くてはならない必要なもの、あたたかいもの、熱いもの。同時にこの色が少しでも見えるということは危険と警告をも意味する。多面的な抽象概念を言語化し、小説として紡ぐのが文学者であるならば、多くの香料の香りの持つイメージを言語化し、香りとして表現できる調香師は「香りの文学者」である。

私自身はそのような文学者でもなんでもないが、大切な気分と雰囲気を作るために赤い薔薇の力を借りた。生きている人、熱い情熱をもった人にしか達成できない仕事に臨むために。この色から多くの意味を感じとっていたからであったと振り返る。

2013年1月29日火曜日

ボーボリ庭園とモンジャスミンノワール・ローエキスキーズの香り


先日、文化学園大学での
「ファッションとアロマ」今期最後の講義にて
年末の香水鑑賞講義を欠席した学生のために
2012年発売のフレグランスを数点紹介。

心地よい、となかなかの好評を得たのが
昨年春に発売されたブルガリのモンジャスミンノワール・ローエキスキーズ。
私もコチラの記事で書いていました。

春から初夏に向けて発売されたとはいえ…
よく晴れた日に清々しい空気の中を植物をながめたりしながらリラックスして歩いているときのような気分になれるのが嬉しく、私は真冬でも楽しんでいました。
さわやかなトップノートと残り香の上品な清楚さが、初めて会う人との緊張感もほぐしてくれるため、ここ数ヶ月は仕事での打合せの場でも活用。

そんな折り。
ひょんなことからこの香りは
イタリアはフィレンツェにあるボーボリ庭園の
イメージにインスパイアされてつくられたということを知りました。

フィレンツェといえばかつて訪れた忘れられない街。
当時は庭園散策まではできませんでした。
はっきりと憶えているのはヴェッキオ橋の上から見た街の色彩。
この香りのイメージのような素敵な庭園があったなんて。

どんなところだろうと書棚からこの本を手にとりました。




私の中学時代の恩師である美術のA先生主宰「アトリエビーナス」さん、
つまりA先生の著書。美大志望の学生さんと毎年イタリアに研修ツアーに
同行していたご経験が生かされた一冊。あたたかいタッチのイラストを
描いているのも「アトリエビーナス」出身のイラストレーターさん。




「ボーボリ庭園」発見。86ページ。

…14世紀に建てられたピッティ宮殿の後方に広がるイタリア式の広大な庭園。
古代ローマやルネッサンスの彫刻が多く置かれ、人口の洞窟やヴィオットローネ(松と糸杉の並木道)、イゾロット広場(池に囲まれた島のある広場。オレンジやレモンの木が植えられていて中央には噴水あり)、衣装美術館、磁器美術館などがある。公園は奥に行くにつれて高くなっているので、見晴らしの良い場所が数カ所あり天気の良い日にゆっくりまわりたい場所…(本文より引用しています)

次回フィレンツェに行くなら初夏にと思います。
モンジャスミンノワール・ローエキスキーズの香りの記憶とともに。

2012年12月4日火曜日

それは厳かな水・セルジュ ルタンス ローフォアッド

今年一年に発売されたフレグランスの中から
今年感、
香料素材への新たなアプローチ、
香りとビジュアル表現両面から感じられる芸術性、
これら3点において卓越していると私が感じ、選んだ8点を講義で紹介。

発売順に、ということで筆頭はこちら。
3月21日発売。



セルジュ ルタンス ローフォアッド

冷たい水、という名称ではあり
春から夏にかけてその清涼感、透明感を
ミステリアスな雰囲気とともに楽しんだ人も多いはず。

ソマリアの乳香の醸し出すスモーキーな渋みと
ほの甘い樹脂のスパイシー感がよくこの透明感に映えています。

私はあえて夏に使わず、
今日のような寒い冬の午後に試しました。
感じたのは冷たさというよりも厳かさ。
極寒ゆえにつくられる美しい雪の結晶の気品が香ります。

頭の中に静かでクリアーな空気が漂い
厳かな気分で過ごすことができました。
いつしか冷たさは温かさに変わり
私の一部になっていました。

ボトルに記された文字ヴィジュアルのイメージ通りです。

2012年11月21日水曜日

美濃和紙で「聞く」・花香の囁き

私の講義の中では
さまざまな単一天然香料の香りを「聞く」体験を提供しています。

毎年、その終盤で登場するのが花の香り。
花は植物の生殖のための戦略のかたち・色・香りであり
その香りはきわめて複雑です。

花が咲いているときの自然な状態の香りと違い
精油など
香り成分のみが凝縮されたものは
そのままで香りを聞こうとしても
慣れていない人にとっては、複雑な芳香成分が一気に押し寄せ
強力なものとしてのインパクトに一旦麻痺させられるケース…
あるいはその反動で
数ある複雑な成分の中で記憶にひっかかる特定成分のみが
クローズアップされてしまい
花香全体のイメージが描けない、と訴えられるケースに
よく遭遇します。

「香り」とは
多種の有機化合物である香気成分の集合体が
時間経過に伴う静かなるハーモニーを奏でる音楽のようなもの。
その繊細な存在を全体としてとらえるには
「聞き方」が極めて大切であると私は思います。

昨日の講義では
調香師にとってもアロマセラピストにとっても重要な花香
ネロリ(ビターオレンジ)精油と
ローズオットー(ダマスクローズ)を鑑賞。

香りを聞いていただく媒体は紙。
コチラ にてご紹介の岐阜、美濃にて
サンプルとしていただいた美濃和紙です。
うっすらとした紙ですが、非常に丈夫。自然の透かしが素敵です。

小さくカットしたその和紙に
コチラ の方法にて香りを移しておきました。

結果。
精油原液を直接染み込ませた紙を聞いていただくよりも
花本来のふんわりとした優雅さや
フルーティーな花香のトップノートのみずみずしさが
例年よりも多くの学生に伝えることができたようです。

2012年11月15日木曜日

"Every Bottle of Perfume Contains a World," IFF主催展覧会と香りのディナー


"Every Bottle of Perfume Contains a World,"
「すべての香水ボトルには世界がふくまれている、」

これは、本日私が一気に読んでしまった記事中の言葉であり、日頃から実感していることでもある。様々な地域から産出される数多くの香料を体感し、これらについて学ぶと世界中の文化と歴史に興味を持たざるを得なくなるのだから。

文化学園大学現代文化学部・国際ファッション文化学科において「ファッションとアロマ」という講義を提供する中、毎年学生にいわれるコメントも
「未知の香料に触れて、行ったことのない世界の様々な地に魅かれた」。

さてその記事とは、アメリカのフレグランス情報サイト、FRAGRANTICAより。
A Presentation of Natural Materials by IFF-LMR Naturals(11/14/12 19:19:54. By: Serguey Borisov)
展覧会も香りのディナーも、写真からおよその雰囲気は伝わると思う。
現代に至るまで、人間がいかに香料を文化の重要なファクターとして捉えているかがよくわかる。

天然香料の産地は世界中に拡がっている。
地域ごとに違う文化があり、違う衣服があり、違う習慣がある。
それが一つの香水ボトルから実感できるという。

ハイチのベチバー、
エジプトのジャスミン、
コートジボワールのジンジャー、
エチオピアのミルラ、
チュニジアのネロリ、
マダガスカルのヴァニラ、
コモロのイランイラン
中国のチュベローズ、マグノリア、
インドネシアのパチュリ、
ヨーロッパのフレンチラベンダー、クラリセージ……。

記事後半には
薔薇の写真。広く長く愛される稀少香料の筆頭。

…とある香水を身につけると
まだ訪れたことのない地域の
出会ったこともないような人になれるような気がする。
「私」なんていうものは
勝手に頭の中でつくりあげた概念にしか過ぎず
実は誰でもなく何にでもなれる。
その感覚を揺さぶるのが
場所を超え時を超えて本能に響く香りである。
…そんなことを改めて感じさせられた記事だった。

2012年10月30日火曜日

文化学園大学 第62回文化祭『文化ワールド』・教科展示では「香りの視覚化」も

今年も文化祭の季節が到来。

11/2,3,4の三日間。文化学園大学・文化学園大学短期大学部では、今年も年に一度の「文化祭」が新都心キャンパスにおいて開催されます。

6月の小平キャンパス(現代文化学部)におけるけやき祭でのファッションショー、教科展示も、再び開催。
コチラでご紹介した私の担当教科である
「ファッションとアロマ」2011年度の課題作品も、対応する香りとともに3日間、
C館5階で展示されます。

12種類の香りから生まれた自由な18ビジュアル。
今回も多くの方にご覧いただきたいと思います。

2012年6月8日金曜日

気分転換・消臭・虫除け…エアフレッシュナーの効果

医療資格を目指す専門学校で、植物の香りによってどんな快適性がもたらされるかを学ぶ講義を提供している。

その講義の中での実習の一つが、エア・フレッシュナー制作・使用。
柑橘系のレモン、オレンジ・スイート、グレープフルーツ、ベルガモットをはじめ、ユーカリ、ティートリー、ローズマリー、ペパーミント、ラベンダー、ゼラニウム、ジュニパーベリー、イランイラン…あたりまで精油を体感し特徴について学んだ後、これらの精油をブレンドして約1%に希釈したエア・フレッシュナーを制作、自宅での使用体験を経ての考察を学生に課した。

知識は体感することによって腑に落ちるものであり、さらに深く学びたいと思う好奇心につながる。同じような事例が複数出てくると、それはもっと詳しく検証する価値があるのではないかという研究テーマの発見にもつながる。そういう意味で、こうした実習はきわめて大切。

学生からのレポートによれば、その効用の可能性を実感できたものとして多数挙げられていたのは「気分転換」効果。
疲れているときにも一瞬嗅いだだけで次の行動に移る元気が出たり、高ぶっていた気分が落ち着いたりしたという。
さらに、玄関がさわやかな空気になったと自分が感じただけでなく家人にも喜ばれたり、犬を飼っている人はいつも感じていた犬のにおいが薄らいだ、と「消臭」効果を挙げた学生も複数いた。
そして、ある精油に蚊が嫌がる香り成分があると学んだ学生たちがつくったエア・フレッシュナー。網戸にスプレーしたらその夜はいつもはりついている虫が皆退散するところを目の当たりにしたらしく、精油によっては「虫除け」効果があることを実感したという。

「気分転換」も「消臭」も「虫除け」も、日々の快適性にとって大切なポイントであることをこの実習で改めて実感する学生も多い。せっかく活かせる嗅覚をきちんと使って、より自分にとって快適な状態を作りたいと願うモチベーションにつながればと思う。




2012年5月24日木曜日

18 visual works from 12 kinds of aromaー 文化学園大学 けやき祭にて

文化学園大学 小平キャンパスにて毎年6月第1土曜に開催されるけやき祭。
今年ももちろん、6月2日に開催されます。

At Kodaira Campus of Bunka Gakuen University , KEYAKI FESTIVAL is held in every first Suturday in June.
This year, of course will be held in the 2nd of June.


この大学を知るには、けやき祭で見逃せないものが2つあります。
一つはすべて学生によってプロデュースされるファッションショー。
もう一つは、学生が実際に履修した科目の中で制作した作品展示。

In this festival, 2 events are must for understanding this university. One is the
fashion-show by produced only students. The other is the exhibition of student's works in their taken subjects.


私はこの大学の現代文化学部において『ファッションとアロマ』という講義を担当する講師です。『ファッションとアロマ』では、学生が各々1種類の香りを選びそれにインスパイアされたイメージをビジュアル作品へと創作します。彼らの作品ももちろん、来る6/2のけやき祭で展示されます。今回の展示は12種類の香りからインスパイアされた18作品。12種類の天然植物由来の香料テスターと共に展示されています。

I'm a lecturer of "Fashion and Aroma" , the name of subject,
in Faculty of Liberal Arts and Sciences at this university.
In "Fashion and Aroma", each student tries to design visual work
inspired by each 1 aroma of natural plants.
Their works,of course are in the exhibition at KEYAKI FESTIVAL.
In the 2nd of June, 18 visual works from 12 kinds of aroma
are exhibited with 12 aroma-testers.


参考までに…(only Japanese)
昨年の今頃も、コチラや、コチラにてご紹介しています。今年のけやき祭については今週大学サイトのコチラにもアップされています。














2011年12月7日水曜日

鏡と香水・見えているものとこれから見たいもの

ファッション。装う表現。この言葉の意味を改めて考える機会を持った。

思い起こしたのは、こんなフレーズ。
「私(あなた)は誰?鏡で見えるその姿はこれから一生私の想われ人。」
「今日の私は昨日の私とは違う。会う人も行く場所も違うのだから。」

こんな頭の中での問いかけを、私は香水と出逢った6才の頃から続けているような気がする。現実の鏡で見えた姿に、香水の香りから想像した未来の姿を重ねた懐かしい回想。

鏡で見える人物を最初から自分、と幼少期の私に当たり前には思えなかった。「私は誰?」ではなく、「あなたは誰?」というのが正直な第一印象。
想われ人。Lover、恋人と言ってしまってもよいけれど、もっと本質的な意味を伝えたいのであえてこう呼ぶ。想わずには生きられない。
そして、鏡で見える顔の表情が毎日違うのだからいつも同じわけがない。
鏡は見えているものから色々なことを教えてくれる。そして鏡では見えない未来の自分の姿を喚起させるために香りを第一の衣服として身につける。


…こんなことをあえて文字にしたくなったきっかけは、ファッションとは、飾ることではなく、そぎ落としていくこと(中野香織オフィシャルブログ/2011,12,6)にてご紹介のトークイベント特別講義。

デザイナーからテーラーとなられた信國太志さんのこれまでの歩みや考え方に聴き入り、信國さんがかつてタケオ キクチで手がけられたショーの動画を観客になったつもりでイマジネーションを膨らませながら鑑賞。…これも絶妙な質問とフォローで繋ぐ中野さんの采配のおかげ。改めて感謝。

強烈に魅かれるものとの、本音本気の対峙を経てからでないとわからないことはたくさんある。これこそ宝。本能を駆使しない時間から何かを得ようと思っても無理…。信國さんのこれまでのヒストリーを聴き、自分の回想と参照してもこれは真実であると確信した。

鏡と香水は、「見えているもの」とこれから「見たいもの」を私に気づかせてくれた。特に香水は大人になってからの私の仕事の重要なテーマ。本音本気の対峙の繰り返し。香水を深く知りたいがためにアロマテラピーまで学んでしまった私は、確かに魅かれるものに導かれている。

2011年10月11日火曜日

香りはファッション・語学は音楽

私の職業のテーマには「香り」があり、「語学」がある。この二つを媒介に私は日本という母国以外のことにも広く興味をもてたと同時に見識を深めることもできた。これらのテーマを職業に結びつけられたのは、論理性を鍛えてくれる数学が好きだったこと、文章を読んだり書いたりすることが苦ではなくむしろ好きだったこと、そして、人にわかりやすく伝えたいと願う気持ちが強かったからかもしれない。

こちら にてご紹介したように、私は2005年から「ファッションとアロマ」という講義を担当している。毎年学生には、幼少期からの記憶の中で香りに関わる印象的な出来事を記述させてきた。それは、その後講義の中で彼らが鑑賞していくさまざまな香料に対する感受性の背景であり原点である場合が多いからである。

私自身も憶えているうちに記述しておこうと思う。

「香り」との出逢いは、私に服飾への興味とともに「少しでも自分を含めた周囲を素敵にしたい…」という欲求と好奇心をもたせた。最初に美的な表現としての香水の香りを感じたとき、私は自分がどんな服を着てどんな髪型でどんなたたずまいで存在していたいか、というイメージを頭の中に描いたことを今でも憶えている。それは小学生になるかならないか位のとき。以来私は、洋服を着た女の子の絵ばかり描いていたように思う。おぼろな記憶の中にその当時、「モンシェリ・CoCo」というファッションデザイナーを目指す女の子がヒロインのアニメを見ていた自分もいた。その頃の私はココ・シャネルの名前など知らない。

もう一つ、「語学」との第一の出逢いは英語。やはり5~6歳の頃ラジオから流れていた洋楽。英語の歌詞の音楽。響きもリズムもすべて素敵に感じられた。ただそういう思いがきっかけで、小学生のうちからラジオの語学番組をききはじめ、その発音の習得に夢中になった。好きな歌を覚えるように、聴いたとおりに話せるようになることが何よりもたのしかった。第二の出逢いはフランス語だが、モチベーションは最初は発音マスターではなく、フランス文化を知ろうという理屈っぽいものだった。フランス語も音楽のように楽しく素直に音を自分で発してみようと思えるようになったのは、少し後になってから。この言語を専攻した大学でバンド活動をしたり、様々なシャンソンやフレンチポップスを聴くようになってからである。

結局、「香り」は「ファッション」と、「語学」は「音楽」とそれぞれ私の中で結びついたから今でも関わっているような気がする。好きなことにつながるとモチベーションも好奇心も果てしない。「香り」の「何故?」は科学への興味、「語学」の「何故?」は文法構造と言語に込める考え方、歴史への興味へとつながる。これらは全く尽きることはない。今でもわからないことだらけ。その気持ちのままで、たとえわかったと思っていることが微々たるものでも講義で伝えようとしているし、活用しようとしている。