2010年11月4日木曜日

オレンジ花の清楚な白・ネロリ

白のクラシカルなドレス。明るい色の髪。
陽光とそよ風に心を洗われ、晴れやかな気分が身体を潤していく…。
今でも、フレッシュなネロリの香りに遭遇するとそのようなイメージが浮かびます。ビターオレンジの白い花から得られる香料です。

かつてフレグランスの調香に用いられる代表的な香料を学んでいたときのこと、このネロリは柑橘系の香料のカテゴリーに含まれていました。清楚な印象の奥に一瞬うっとりとさせる濃厚な魅力をもつこの香りは、なるほどオーデコロンには欠かせないと言われるだけのことはあると感じます。

ネロリに初めて対面したときの人の反応は実に様々ですが、今でも特に忘れられないのは20歳の男性の言葉です。
「たとえば好きな人に振られてしまったとき、この香りを嗅ぐとよさそうですね。」

レオナルド・ダ・ヴィンチもこのオレンジの花から香料を抽出しようとしたと文献で読んだときは驚きました。彼が試みたのは精油を得るための水蒸気蒸留法ではなく、油脂に香り成分を吸着させるために花びらを敷きつめることを繰り返す手間のかかる方法であったそうですが… 。そうまでしてこの香りを求めるヒトの情熱の一端を感じます。ビターオレンジの花を蒸留した精油について最初に記述したのは、イタリア人の自然愛好家で1563年のことだったという記録もあるそうです。

オレンジの花から得られる香料が何故ネロリと呼ばれるのでしょうか。17世紀にこの香りを好みイタリア社会に紹介した姫君のいた国がローマ近郊のネロラ公国。この国のプリンセスであったアンナ・マリア・デ・トレモイルは、手袋やステーショナリー、スカーフなどあらゆるものにこの香りをつけていたそうです。ネロリとはまさに、流行が生んだ名称です。

ネロリの産地はチュニジア、モロッコ、イタリア、フランスなど。
オレンジ花の清楚な白。その香りは今も広く愛されています。

参考文献

「フレグランス
クレオパトラからシャネルまでの香りの物語」
エドウィン・T・モリス 著 中村祥二 監修
マリ・クリスティーヌ 、沼尻由紀子 翻訳
求龍堂 発行


"AROMATHERAPY FOR HEARING the SPIRIT"
GABRIEL MOJAY
1997 Gaia Books Limited,London
Healing Arts Press

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