2014年6月29日日曜日

『友よ、さらばと言おう』(MEA CULPA)/フランス映画祭2014

フランス映画祭2014
上映作品の一つに
2月にフランスで公開以来
ずっと私がみたいとおもっていた作品
MEA CULPA
土曜の夜に上映されると知り、楽しみにしていた。


なぜこの映画をみたいとおもったのか。
主役の一人がお気に入りであるだけでなく
タイトルと
紹介されたストーリーイントロの中に
「あらゆるものを失っても、
生きようとする人間の心を動かすもの」
を感じたからだった。

期待通り。
90分はあっという間に過ぎていった。
絶妙な表情と力強いフィジカルなアクション、
日常をいとも簡単に破壊する想定外の事件…。


映画終了後に
フレッド・カヴァイエ監督のトークショー開催。

原題『MEA CULPA』。
それはラテン語で「自分の罪、あやまちを認める」
といった意味になるそうで、
監督がこの作品の主旨を伝える言葉を探しに探して決定し、最後まで見終わった人に感じてほしいとの想いをこめたとのこと。

一方、8/1から日本でも公開が決定し邦題として選ばれた
『友よ、さらばと言おう』の意味を知ったカヴァイエ監督は、これもこの作品の大切な部分である魅力のひとつを引き出してくれた良い邦題、とコメント。

8月になったら再び新宿の映画館で見てしまうかもしれない。


2014年6月26日木曜日

香りの専門誌 "PARFUM" 170号(夏号)発刊


香りの専門誌 "PARFUM" 170号 (夏号)が20日に発刊。




眩しい陽射しを受けて
花のように微笑む女性に
改めて夏の到来を感じてしまう表紙。

生きているものにしか出せない輝くオーラ。
それは困難さえもスリルと感じられるキラキラした好奇心と
大好きなことを想像や創造の対象にできる
しなやかなひたむきさなのかもしれません。

特集『避暑地の出来事』でご紹介の香水は
スリル満点、新しい時間の扉を開いてくれそうなものばかり。

『香り立つ女優』はクラウディア・カルディナーレ。
幼いながらも私が映画の1シーンで目を奪われた粋な女性は
この人だった…『ブーベの恋人』。

『パルファムインタビュー』では
LAINE DE VERRE〈ガラスのウール〉という
不思議な名前の香水のご紹介。
セルジュ・ルタンスがこの新作に込めた想いも綴られています。

4冊の本が紹介されている"BOOKS"。
今回私は
『シャネル、革命の秘密』
『10皿でわかるフランス料理』、
2冊のご紹介文を執筆しました。
いずれも香り抜きでは語れない内容。

夏の優雅な過ごし方は
あのマイペースな猫をお手本にと
『キーワードで見えてくるあなたの香り』では
ノンビリ猫の12のイメージとともに
12の新作香水が色とりどりに
添えられています。

2014年6月23日月曜日

至高のダリアとは?・Dahlia Divin Givenchy for women

秋の新作フレグランスニュースの中でも
個人的に香りへの期待度が高いのが
Dahlia Divin Givenchy for women

そもそもシプレタイプの香りが好きなことに加えて
ベースノートにsandalwood, vetiver and patchouli。
あえてムスクと記載されていないベースノートには稀少価値すら感じるほど。

トップにプラム。ミドルに白い花。
エキゾチックで奥深くなめらかな香り方に期待したい。

ジバンシィのダリアシリーズは2011年のダリアノワールに始まった。
形は風次第・DAHLIA NOIR の香りと秋の空気でも描いていたように、ノワールで描かれた女性はどこか危な気でミステリアスで風の一部になって舞っていきそうな位のファンタジーを醸し出していた。
新作のダリアディヴァン。
divin というフランス語の意味は
神の、神への、崇高な、至高の、このうえなく素晴らしい…
といった感じ。そして描かれた女性は著名な歌手、アリシア・キイス。
このイメージ訴求の謎も
香りとともに考えてみたくなる。





2014年6月20日金曜日

夏のブルー・L'hortensia bleu



数年前、この紫陽花の色がこころに響き
こんなブルーのニットを買った記憶がある。
白のインナーやブラウンのボトムスに合わせてよく着た。



こちらもみずみずしい。8月、札幌の北大植物園で咲いていた。



思い浮かべるだけで涼やかな気分になる夏のブルー。
明日は夏至。

2014年6月17日火曜日

ふんわり爽やか・トロピカルシトラス


スッとひとすじ、レモングラス。


ふわふわの泡から、ほのかにライムの酸味。

フルーツぎっしりのぷるぷるゼリーは
スパークリングワイン&レモングラスのフレーバー。
そよ風のごとく微かなその香りは
フルーツの甘みや香りを引き立てる絶妙な存在感。

真っ白のパンナコッタ。
ココナッツの優しい甘みが
全体の爽やかさに程よく調和して。
シンガポールでいただいたココナッツジュースの余韻を回想。

ふんわりトロピカルな甘さと
爽やかシトラスの一体感。

穏やかな夏のそよ風のような一品でした。
ペンギンペストリー さんの旬の新作です。





2014年6月15日日曜日

香水は何処に置かれるか

それは洋服のように
綺麗な状態で、日の当たらないクローゼットのような場所に。

香料が光や酸素や温度で劣化することがわかっているから、
ということもあるけれど
ある日、どんな香りを纏っているのかは
家族にすら秘密にしたい、と私は思う。
これは口紅やアイシャドウも同じ。

お気に入りの何本かは
クローゼットの扉を開けて手の届きやすい所に。

1枚の服だけで日々の装いがつくれないように
1種のフレグランスだけを使うことはできない。

先日鑑賞した映画 "Jeune & Jolie" (2013年フランソワ・オゾン監督)
の中で印象的だったシーンのひとつが
17歳のイザベルと母が共有している化粧室のドレッサー。
鏡の前には数種類のフレグランスが置かれていた。
なんとそのうちの1本は
某ブランドの特徴的なリボンのついたボトルだったので
すぐに何であるかわかってしまったが
奇遇にもその時私が身につけていたものでもあり
記憶に残ってしまった。

邦題『17歳』
のイザベルはさほど服装に凝ってはいない。
いやむしろ、凝っているように見えないところが美しい。
友人同志のパーティーに出掛けるとき
素顔で行こうとしたら、弟のヴィクトールに
「最低限したほうがいいよ」とアドバイスされるほど。
この弟が実に良かった。愛がある。
とはいえ、イザベルは
高校生であるときの自分と、そうではない「女」を創るときとは
服を替える。母のグレーのブラウスを拝借してしまうところが
なんとも愛らしいと思ってしまった。

たとえばフランス人にとって
フレグランスは日常的な必需品ゆえに
ラフにいつでも使えるよう、ドレッサーに置いているのかもしれない。
それはそれで、使いやすくてよいとは思う。
かれらは劣化の心配など無用な位のペースで使い切るだろうから。
遠い昔、私の母が
ドレッサーの上に無造作にフレグランスを置いてくれたおかげで
6歳の私はこの素晴らしいフレグランスというものに出逢えた。

確かに美しいボトルは多いが、飾っておくだけでは意味がない。
中の液体は人とともに香るために創られたのだから。






2014年6月14日土曜日

『国際香りと文化の会』WEBにて会長連載スタート

2013年7月、惜しまれつつも休会されていた
『国際香りと文化の会』からお知らせの葉書が届きました。

WEBサイト上で、中村祥二会長の連載が始められたようです。
早速拝見。コチラ のトップページにもその旨が記載されており、2014年春号の内容として
「バラの香り」が写真付きで掲載されています。

資生堂において調香師を40年以上つとめられ
特に薔薇や蘭の香りに造詣の深い会長のお話は
これからも機会があればうかがいたいと思っていたので嬉しい限りです。

ブルガリアのダマスクローズの香りは
透明感のある、強い蜂蜜のような甘さの中に
フルーティーノート、バニラ様の匂い、独特のマリンノートを持ち
いつしかウッディな落ち着きまで感じさせる、複雑で奥行きの深いもの…。
これを何かのブレンドにほんのすこし加えるだけで
きらめくような高級感が上品に流れる香りになる…。
会長の文章を拝読してあらためてその素晴らしさを振り返ります。

ちょうど薔薇の季節ということで
かつて薔薇を特集された
会報誌 VENUS VOL.22を読み直していたところでもありました。

夏号も楽しみです。















2014年6月12日木曜日

"Jeune & Jolie" よりも『17歳』が響く

17歳。
人によっては…
21歳かもしれないし
25歳かもしれない。

危険を知らない危うさ。
怖さよりもスリル。
何かの埋め合わせ。

主役の女性の表情に
あぶなげで孤独な知性がほのかに香る。




2013年のフランス映画。
原題 "Jeune & Jolie" も深みがあるが
邦題『17歳』のほうが
エンドロールを眺める脳裏に響いた。

アルチュール・ランボーの詩、
最後に登場する女性にとっても
「17歳」はなぜかキーワード。

音楽が時間を香らせていた映画、として忘れない。





2014年6月10日火曜日

映画「みつばちの大地」から想う、花と蜂と人


「みつばちの大地」公式Webサイト 。この映画が5/31から岩波ホールで上映されると知り、ずっとみつばちのことを考えていた。

私が子供のころからみつばちのことを
可愛い、愛らしいと
感じてきた背景にある記憶をたどる。

いつもミツバチが香りのよい花々の近くにいたこと、
横顔でわかる大きな楕円の眼、
細かな毛でおおわれたまるまるとした姿、
花々の近くでふわふわと浮遊するかのような動きをしていたことなど。
そして途方もなく美味しい蜂蜜。いつも有難うと思ってきた。

先週末、映画を鑑賞。
ドキュメンタリーである。
このパンフレットには、監督が地球を4周しながら取材した
世界各地でミツバチに関わる仕事をしている実在の人達の紹介はもちろん
監督の語りを含む全シナリオが記載されていた。



この映画を映画館で鑑賞することの最大のおもしろさは
その映像にある。

女王蜂が空に飛び立ち
その後を命懸けで交尾のため追いかける雄蜂。
こんな空中のドラマはこの映像でしか見られないと思う。

大きなスクリーンに映し出されたミツバチの巣箱での行動。
こんなに暗い中でひしめく彼らが
完璧に役割分担をまっとうするためには
嗅覚、触覚を最大限に働かせているに違いない。

そして満開の桜さながらに素晴らしいアーモンドの樹々。

ミツバチの行動を研究するドイツでの実験。
人間によって強制的につくられた女王蜂のいる巣箱、
いわゆる「家畜化」したミツバチが輸出される現場…。

さまざまな人達がミツバチに関わっている。
ミツバチなしでは人の食糧が成り立たないから。
ミツバチにとって食糧とは花。
花の蜜と花粉がかれらの栄養となっている。
香りのよい花々のある環境にミツバチは養われ
健康なミツバチが飛び交う大地であればこそ
人は多くの豊かな食糧を得られる。

花と蜂と人。たいせつな繋がり。
5年前の夏、ブルガリアの壮大なラベンダー畑にも
たくさんの蜜蜂が飛んでいた。
たとえば
人が花の芳香を愛するがゆえにこうした香料植物を栽培し続けることも
ミツバチに恩恵があるのかもしれないと思うと、心が和らぐ。

参考資料
一般社団法人 日本養蜂協会 ミツバチの生態


2014年6月7日土曜日

「中村誠の資生堂 美人を創る」で出逢えた香りのメッセージ


資生堂ギャラリーでは
2014年6月3日(火)から6月29日(日)まで
昨年6月に永眠されたグラフィックデザイナーでアートディレクターの
中村誠(1926-2013年)の回顧展「中村誠の資生堂 美人を創る」が
開催されています。

「中村誠の資生堂 美人を創る」/資生堂ギャラリー



昨夕、降りしきる雨の中銀座へ。
ゆっくりと鑑賞しました。
上映されていた10年前の中村誠氏へのインタビュー番組まで
しっかりと拝聴。

香水も含めて
化粧という行為によって
ひときわ匂い立つ女性の美しさ。
その、はかなくも抽象的な概念を
多くの秀逸な人の才能と技術を駆使し
アートディレクターとして視覚化することに尽力されたプロセスに
展覧会タイトル「美人を創る」は見事に合致しています。

印象的な作品として
1963年に海外向け広告としてつくられたポスター
〈FOREVER ENCHANTING〉。
一目みて、近年話題になったある香水を思い浮かべます。
プリーツプリーズの花々が躍るようなイメージの香り。
3人の女性が纏う淡いブルー系の衣装は
まだ若かりし三宅一生氏によるものだったと知り納得しました。

そして、私が18才の春からしばらくの間愛用していた
とある香水のポスターを眺め
深い感慨に浸ります。
この香水のモデルは山口小夜子さんではなく
異国の女性のようですが
ヴィジュアルには、その顔写真の表情が
実に繊細に活かされています。
視線を下に移しながらも好奇心に打ち震えるような喜びや
幸せな記憶からさらにもっと…と予感に浸る陶酔感。

これまで
フランスをはじめとする
多くの外国香水のヴィジュアルを見てきましたが
中村氏の作品のインパクトもひときわ秀逸です。
さすが、一枚の資生堂広告に描かれた女性に
深く感銘を受けてこの世界に入られた情熱の人。

日本にも、香水のイメージを
このように表現されていたクリエイターが
存在していたことを改めて嬉しく感じました。

ヴィジュアルもさることながら
さりげなく添えられた言葉も
何度も読み返してしまいました。
3点の香水ポスターに記された言葉を引用します。

ーほのかな香りほど悩ましい。資生堂練香水「舞」ー
ー恋がつもって咲かせたかほりは何色ですか 資生堂香水「すずろ」ー
ー香りは希望。愛のたかまり 愛の深まりの。資生堂香水モアー


2014年6月6日金曜日

'91年の2つの香り・今に生きる

2日前の記事で触れた
1991年秋にミラノで出逢い
その香りとボトルの印象のみから魅かれ
日本へ連れ帰ったフレグランスの一つを
Fragranticaで検索すると発見。
コチラ

ミラノのモンテナポレオーネ通りを散策中に立ち寄った
PUROFUMERIA ? だっただろうか。音の記憶でスペルを書いてみる。
薬局の延長上のような化粧品店に入り
まずはボトルに魅かれ、次に香りを試して即買うことに。

みずみずしいオレンジ…花々がさらさらと
海風に運ばれて私のもとにたどりついたような安らぎ。
たしかこの香りへのラブレターのような文章を
香りの雑誌に寄稿した。

この一年後、私は本物の安らぎを実感するような出来事を体験する。
そのときの実感が本物であったことは23年経った今だから
腑におちたのかもしれない。

そしてこのフレグランスを生み出したブランド、
クリスチャン・ディオールのサイトにまだ健在である。
キャッチコピーが23年後の私に深く響く。

実はミラノのあの店ではもう一つのフレグランスに魅かれた。
こちらはボトルキャップのインパクトと
その香りの、いまだかつてないほどのフローラルブーケ感。
Fragranticaにて検索。
コチラ

そして、これも健在。
ジバンシィのサイトのコチラ に。

ディオールのDUNE も ジバンシィのAMARIGE も
時代を反映してはいるが
決して万人に好かれることを最優先で作られたとは思えない。
熱烈に好きと思う人もいれば嫌う人もいる。
本来香りはそういうものだ。表現されたものは。
しかし、諸刃の剣ともなり得るユニークな特徴は
支持者には深く長く愛される。そして記憶から消えない。

2014年6月4日水曜日

懐かしいイタリア土産より・切手の中の花


探し物をしていたら懐かしいものを発見。
1991年の秋にミラノへ、ファッション誌の編集者として
取材旅行に出掛けたときのお土産だった。
どこで買ったのだろう、
滞在中のホテルの近くにあって毎夕立ち寄った書店だったのか、
開催中だったバッグ見本市MIPEL会場近くだったのか。
この古切手を一目で気に入ったことはよく憶えている。



古切手シート5面綴り。
上の写真は花の切手が集められたもの。
よく見ると、イタリア以外のものが多い。
POLSKAはポーランド、MAGYAR POSTAはハンガリーのもの。
POSTA ROMANAはローマのものだろうか。
なんだか怪しげで妖艶な花が多い。
薔薇の切手はハンガリーのものだった。

どんな花なのか、
すこしずつわかっていくのが楽しみでもある。

そのときは見てもわからないようなものでも、
後から秘密を解きほぐしていけるような魅力にあふれたものだと思い
あのとき買っておいてよかったと思う。

そういえばあのときミラノでは迷わず直感で買ったものが多かった。
香水といえばディオールのデューン。これも懐かしい。
今にしてわかるのは、当時を反映した香りだったということ。

2014年6月2日月曜日

"ME"・ブルーベリーのリズムとチュベローズの滑らかさ

ほんの僅か。
身につけるだけで余韻が長い。
トップノートのブルーベリーは
音に例えると細い高音ではなく
ズンと身体の奥に最初から響くベースの重低音のよう。
そのリズムが忘れられず
ついつい時々
着替え用のレイヤーフレグランスとして愛用。
フローラルでもウッディでも
最初にまとっていた香りの余韻を壊さず
新たな解放感。


ランバン・ミー。
ちょうど昨年の今頃。
コチラ
展示会でいただいたミニチュアは
いまも遠路の出張や外出時に携帯する。
帰路の前にひとしずく。
ふわりとブルーベリーのリズムを刻みつつ
滑らかなチュベローズの妖艶な幻が見えてくる