新しきをたずねて、古きを知る…
最新フレグランスニュースにて、歴史ある名香との邂逅。
いずれも
当時の空気の中に静かに芽生えつつあった
未来に繋がる普遍的な人の感受性を
香りで巧みに表現していると思います。
アメリカのフレグランスサイト、Fragranticaの10/16の記事。
Christmas Gifts From Guerlain (By: Serguey Borisov)フランスにて創業1828年。ゲランの歴史を彩ったフレグランス3種を、この記事の概要とともに、私の文献も参照しながら紹介してみようと思います。
まずは " Habit Rouge "(1965)。
今回このフレグランスを旅先にも携帯できるようボトルがピッタリ入る黒のケースがつくられ、まさに愛好者へのサプライズ・ギフトになりそうです。
「アビ ルージュ」と日本では発音されるこのフレグランスについて。
香水評論家の平田幸子氏監修による*『香水の本』では、「赤い上着(乗馬着)」と訳されています。仏語で" habit "は服を、" rouge" は「赤い」を意味します。
そのパウダリーオリエンタルな香りは、60年代当時主流であった爽やかなウッディタイプとは全く異なるタイプであったとのこと。
*によれば
…
深みのある樹木の香りをベースにラベンダー、バニラの暖かみ、ヘスペリデスのさわやかな香りが混ざり合ったエレガンス派。貴族的な雰囲気の人に。
…との記述。
次に " Shalimar "(1925)。
シャリマーとはサンスクリット語で「愛の殿堂」を意味します。
今回、特別なシャリマーのために、専属調香師ティエリー・ワッサーはマダガスカルに旅し、最良品質のヴァニラを求めたとのこと。18ヶ月もの熟成期間を経て得られたヴァニラビーンズは、フランスにおいて極上のヴァニラ香料となり、ゲランのためだけに使用されたということですから、そのような貴重なヴァニラが使用されたスペシャルシャリマーに出逢えるパリの人達は幸運です。
この香りの奥深さについて、20代の頃に魅了されてしまった私が昨年書いた記事が
コチラ 。
そして、" L'Heure Bleue "(1912)。
名香「ルール ブルー」は今年で生誕100年目。
100周年を記念し、バカラの卓越した技術によって作られたボトルは見事。写真で眺められただけでも感激の美術品。ボトルネックを飾るのは繊細な黄金でつくられたスミレの花…
このブルーには、黄昏時のほの暗い「蒼」という文字が当てられています。
" Heure" は「時、時間」を意味するので「蒼の時」。
パリ在住の調香師、新間美也さんは、この香りを著書『香水のゴールデンルール』中で記憶に残る名香の一つとして挙げられ、以下「」のように記されています。
「…代々、香水商として続いてきたゲラン家は、印象派の絵画のコレクターであり、印象派へのオマージュとしてこの香水をつくったという話をきいたことがあります。あるいは、これは、シャンゼリゼ通りにあるゲランのお店の二階の窓から見える夕暮れどきの風景を表現した香りだともいわれています。」