2011年10月11日火曜日

香りはファッション・語学は音楽

私の職業のテーマには「香り」があり、「語学」がある。この二つを媒介に私は日本という母国以外のことにも広く興味をもてたと同時に見識を深めることもできた。これらのテーマを職業に結びつけられたのは、論理性を鍛えてくれる数学が好きだったこと、文章を読んだり書いたりすることが苦ではなくむしろ好きだったこと、そして、人にわかりやすく伝えたいと願う気持ちが強かったからかもしれない。

こちら にてご紹介したように、私は2005年から「ファッションとアロマ」という講義を担当している。毎年学生には、幼少期からの記憶の中で香りに関わる印象的な出来事を記述させてきた。それは、その後講義の中で彼らが鑑賞していくさまざまな香料に対する感受性の背景であり原点である場合が多いからである。

私自身も憶えているうちに記述しておこうと思う。

「香り」との出逢いは、私に服飾への興味とともに「少しでも自分を含めた周囲を素敵にしたい…」という欲求と好奇心をもたせた。最初に美的な表現としての香水の香りを感じたとき、私は自分がどんな服を着てどんな髪型でどんなたたずまいで存在していたいか、というイメージを頭の中に描いたことを今でも憶えている。それは小学生になるかならないか位のとき。以来私は、洋服を着た女の子の絵ばかり描いていたように思う。おぼろな記憶の中にその当時、「モンシェリ・CoCo」というファッションデザイナーを目指す女の子がヒロインのアニメを見ていた自分もいた。その頃の私はココ・シャネルの名前など知らない。

もう一つ、「語学」との第一の出逢いは英語。やはり5~6歳の頃ラジオから流れていた洋楽。英語の歌詞の音楽。響きもリズムもすべて素敵に感じられた。ただそういう思いがきっかけで、小学生のうちからラジオの語学番組をききはじめ、その発音の習得に夢中になった。好きな歌を覚えるように、聴いたとおりに話せるようになることが何よりもたのしかった。第二の出逢いはフランス語だが、モチベーションは最初は発音マスターではなく、フランス文化を知ろうという理屈っぽいものだった。フランス語も音楽のように楽しく素直に音を自分で発してみようと思えるようになったのは、少し後になってから。この言語を専攻した大学でバンド活動をしたり、様々なシャンソンやフレンチポップスを聴くようになってからである。

結局、「香り」は「ファッション」と、「語学」は「音楽」とそれぞれ私の中で結びついたから今でも関わっているような気がする。好きなことにつながるとモチベーションも好奇心も果てしない。「香り」の「何故?」は科学への興味、「語学」の「何故?」は文法構造と言語に込める考え方、歴史への興味へとつながる。これらは全く尽きることはない。今でもわからないことだらけ。その気持ちのままで、たとえわかったと思っていることが微々たるものでも講義で伝えようとしているし、活用しようとしている。





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