2019年8月2日金曜日

表紙とタイトルに魅かれて・『猫たち』/フロランス・ビュルガ著



Un livre que j'aimerais lire , attiré par le titre et la couverture.

読みたい本と出逢う。タイトルと表紙に魅かれた。


https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784588130281


「猫たち」。ひときわ鮮やかな色彩の表紙に、あの特徴的な尾のかたち。思わず手に取ると意外に厚みはない。開くと程よい大きさの文字が、心地よい余白とともに並んでおり、丁寧な引用注釈も添えられている。動物哲学者としての著者の見解とともに、多くの詩人、作家、哲学者の言葉にも出会えるのだ。


これは欲しい。表紙を外した本体の装丁も端正で眺めるたびに嬉しい。大切にしたい。


最初はなんとなく色々なことを感じながら読むだろう。一度文字を追っただけではわからないことも多いはず。何度も読み返して味わいたくなる本でなければ、入手したいとは思わない。目次の6章は「共同生活」「儀式的なもの」「コミュニケーション」「友愛」「愛」「残酷さ」。これらの言葉だけでも探求の価値がある。


一度目の読後感。「生き物」としての存在という観点において、本来猫も人も同等であることを忘れたくない、という思いを強める。「言葉」という文字と音の信号のみがコミュニケーションの手段ではなく、「行動」そのものへの感受と反射そのものも慎重に考察していきたいと感じた次第。猫に限らず、同種であるはずの人間、同居人に対しても。


言葉というものは、発信者と受信者が共にその仕組み(単語の意味や文法)を共有していれば細かなことまで伝え合える便利なものである。しかし共有していなければ伝わることはない。一方で、「生き物としての本能」から出現する行動は、漠然とではあるが種を超えて伝わる。注意すべきなのは、人間という種特有の都合だけで異種を見ようとする落とし穴。


猫は「人間たち」をどう感じているか。ちょっと猫になったつもりで考えてみよう。そしてこの初回の読後感を忘れそうになった頃にまた期間を置いて読んでみよう。毎月でも、毎年でも。そう思いたくなる本と出会えた今年の夏を忘れない。



以下は「訳者あとがき」より。

著者のフロランス・ビュルガ氏はフランスにおける動物哲学の第一人者で、彼女の主な研究領域は、動物的生の現象学、現代産業社会における動物の条件と権利である。本書の原題は直訳すると『見知らぬ者と生きる 猫に関する哲学的断片』。同じ法政大学出版局から同時期に刊行されたマルク・アリザール著『犬たち』日本語版と書名を統一するために『猫たち』とされた。


écrit par SAWAROMA



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