2013年3月16日土曜日
『中国古代の香り生活』ー中国香文化史家・千葉恭子氏講演録
国際香りと文化の会 2013年3月15日講演会にて。
最初のテーマは『中国古代の香り生活』。
講師は、中国香文化史家・香司の千葉恭子さん 。
香麗志安(カレージア) 主宰。そもそものご専攻は中国古代史(春秋戦国、秦、漢の時代)とのことで、この研究を基盤に香文化を紐解いて行くために、考古学、植物、精油、フィトケミカル、宗教、文学、美術、工芸…さまざまな分野を幅広く学ばれたということでした。
冒頭でおっしゃったことが印象的。
「本日は中国古代の中でも紀元前200年以降のお話をします。
その時代にはすでに香草・香木は生活必需品となっておりました。当時の中国では生まれてから墓場まで使いこなしていた…というイメージでしょうか。」
一口に中国といっても国土は広く、権力者は次々に変わりましたから、エリアにおいても時代においても一様ではないのは当然ですが、時の権力者は必ず主に国産の桂皮(シナモン)をはじめとする香草、香木を多用していました。そして彼等の共通する最終的な欲望とは「不老長生」だったとのこと。こうした欲望は西も東も同じようです。
これほど香文化の歴史が長い中国で、現代の人たちも日常生活で香りを多用し快適な生活のためにフル活用されているかといえば必ずしも古代の伝統が引き継がれているわけではない、とのこと。
あたかも過去の文化が分断されてしまうかのように新しいことを取り入れるたびに昔の伝統的習慣が捨てられているとしたらもったいないこと…我が国日本にもそのような傾向なきにしもあらず、と感じました。ここ15年ほど日本で普及したアロマテラピーのノウハウのおかげもあってか、空間に芳香を漂わせて楽しむ人は確かに増えたとは思いますが、自他にとって快適な芳香を意識し求める心というのは、環境によって育てられるものかもしれないと改めて痛感した次第。
さすが香料の国、中国と感じたのは五香粉。
私も愛用(食)しています。 五つのうちの花椒は特に中国を感じる香りで大好きです。
千葉先生に教えていただいたことですが、
長安の宮廷の近くの場所に植生し、何らかの形で早くから使われたのは花椒だったという話でした。
そして、寒さに強く枯れても香るという、フジバカマも印象的。
この植物の芳香成分の一つ、クマリンには悪臭を調和させる働きやダニを殺す働きもあるのだとか。香枕にフジバカマが入れられていたというのも納得です。
その他、漢字で書かれた香料が多く登場しましたが、多くは漢方薬や中華料理のほうでお馴染みになったものが多かったようです。やはり、西洋のアルコール希釈ベースの香水というものは西洋独特だったのか、人も地域によって香料の活用が異なり、その発達史も独特なのだと再認識。
毎年私は大学で香料を扱う講義を行っていますが、近年、受講生に中国人留学生が増えています。かれらの興味を大切に、東西広く香りの文化史を伝えつつ、さらに現代のライフスタイルに合う豊かな香り活用を考えさせる機会となるようにしたいものです。
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