2014年4月15日火曜日

『シャネル 、革命の秘密』読後の余韻・「ありたい」への徹底

520ページ。
2日で読んでしまった背景のひとつには
かつての大学時代の恩師、フランス人教授の言葉があった。
「歴史は、今が当たり前のものではないことを知るために学ぶもの。
私は特に現代の女性に伝えたい。今の女性のライフスタイル、社会的立場が当たり前ではなかったということを。」

黒の表紙。
白の文字は
監訳者である中野香織さんの明瞭な日本語により
この本が何を語るものであるかを伝えている。
そして小口のきらびやかな金色。


第 19 回 Discover Book Bar ~ 『シャネル 革命の秘密』刊行記念 ―仕事と恋とファッションと ~へ、今週中頃に発売予定の本をひと足先に入手するべく参加した週末。トークショー冒頭で監訳者であり服飾史家の中野香織さんはこの本のことを端的にこうおっしゃった。

ーこれは
シャネルが見た
20世紀の芸術史、文化史でもあります。ー

まさにそのとおりで、
シャネルという一人の人間の
一生87年間に関わった人物、現象の多様ぶりが
ここまで豊富な資料に基づいて詳しく綴られた本は初めてであると感じた。
どんな人の生涯も、全て順調ではないように
彼女の生涯も明暗の繰り返しだったこともわかる。

一読したくらいでは
到底おびただしい数の登場人物の名前を記憶できてもおらず
読了という表現で言い切りたいと思えない。

一読目、読後の深い余韻として翌日まで響いているのは

ーシャネルは、自分ではないものに「なりたい」とは決して思わず
あるがままの自分で「ありたい」と死の淵まで願い続けた女性だった。ー

そんな「ありたい」への徹底。

男性に「なりたい」とは思わない、
だが人間であるという意味で、男性と対等で「ありたい」。
生きるために男性と同じく職業を持ち働く、
働かなければ何者にもなれない。
そのためにはそれにふさわしい服装のスタイルが必要だ。
女性のデリケートな身体にとって動きやすく
かつ女性として防御するべき要素を忘れず
女性そのものが本来
誰もが生まれながらにもつはずの美しさを引き出すために。
シャネルがその生涯をかけて挑んだことの大きさに
改めて敬意をおぼえる。

紙の上ではなく
生身の女性をモデルにしか服のデザインをしなかったという姿勢。
徹底して清潔を求めたシャネルだからこそ
不衛生をごまかすための香りではなく
女性そのものを輝かせる香りをつくったという
その根底に流れるエレガンス。

それらの事実は、現実の女性の一人として
私も深く共感できる。

3年前に78歳のシャネルの生き生きとした写真集を
『ココ・シャネル 1962』ダグラス・カークランド写真展で眺めた。そのスタイルが今でもなんら古くないと思わせること自体に驚き、同時にこの女性の深く知性に満ちた強い眼差しにエネルギーをもらったことを思い起こす。

ココ・シャネルの言葉より・" COCO NOIR " に寄せての中でも引用したが、

" Il n' y a pas plus joli qu' une topaze, cette eau dorée "
Gabrielle Chanel
(トパーズほど美しいものはない。まるで金色の水のよう。)
ガブリエル シャネル

その言葉をこの本で再び回想。

そして
この本を世に送ることに携わられた全ての方々へ
しみじみと感謝をおぼえずにはいられません。
有難うございました。

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