2011年6月19日日曜日

「シャネルNo.5の秘密」(原書房)から見えた女性美の表現

先週入手して一気に読み終えた一冊。
ここ1世紀のうち、最も世界で売れた香水が「シャネルNo.5」であることは専門家の方から聴いて知ってはいた。しかしながら、具体的にその驚異的なロングセラーぶりを文章で読むとその秘密が知りたくなる。

まずはこの事実。2009年12月初旬、「女性対象の調査で、もっとも魅力的な香水の一位はシャネルNo.5」と世界に配信されたニュースが存在したということ、その調査で上位20位に名を連ねる香水のうち、シャネルNo.5以外すべてが1980年代以降につくられたものだということ。なぜ1921年(日本では大正時代後半)にデビューした香水が90年も愛され続けるのか。

原書房新刊案内 にはこの本の目次が一覧できる。私が特に興味深く読んだのは第一部。シャネルが10代から20代前半に経験した環境とその中で育んだ美的感受性(何かを美しいと感じる感受性)には深く共感した。このベースがあってこその「シャネルNo.5」であるとしたら、それは時代を超えて求められる女性美の一つの表現にもなっている。

女性の美しさ、好ましさには二つの理想像がある。清潔感を保つ清楚さと華やかな官能性。どちらか一方だけでは片手落ちだ。ココは香水を通じてそう教えてくれたように思う。

そしてもう一つ大切なことがある。人間の女性はあくまでも人間であり、女性である。いかに花が美しかろうと人は植物ではない。薔薇でもなくジャスミンでもない。これらの香料を使うとしたらそれぞれがもつイメージを、絹やカシミアのような素材として使うにすぎず、イメージを完成させるためのアーティフィシャルな要素も必要としたにちがいない。なぜならフレグランスは、女性が自分のイメージを表現するために「着る」ドレスなのだから。

この内容の監修者である調香師、新間美也さんのブログ「シャネルNo.5の秘密」(2011,4,14) には、監修者じきじきのご推奨のお言葉とともにこの本の写真もアップされている。シンプルに黒と白の装丁。



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