2021年の終わり頃、豪徳寺のIRON COFFEEで、グァテマラ産ゲイシャ種の豆を挽いていただく。芳醇かつクリアで軽やかな絶妙香。稀少なこの香りを楽しみながら年越しをするために200グラムを購入。大晦日、最初の一杯。何故こうもデリケートに芳醇な香りが一瞬のうちに感覚に溶け込んでいくのだろうか。余韻は記憶にのみ鮮やかに刻まれ、口の中には跡形もない。
そんなキレの良い、クリアな輝きの香りで迎えた2022年の元旦。爽やかな気分が空の色に重なった。初詣に訪れたT駅の書店で、ふと手に取った文庫本のタイトルは『コーヒーと小説』。コーヒーロースターの編者により選ばれた12の短編小説集である。目次を開くと、太宰治、芥川龍之介、江戸川乱歩などの短い作品名が並ぶ。私の未読作品もある。
太宰治の『グッド・バイ』。未完でありながらも完成されているのかもしれない…と、この作家に生まれて初めて敬意を抱いた。物事に終わりはあるようにみえて無いとも言える。想像は無限だ。
芥川の『桃太郎』。『グッド・バイ』の後で読むとひときわ鮮烈な印象をおぼえる物事の裏表。
江戸川乱歩はさすがの語り手。謎解きへの誘惑に引き込まれてしまう。
江戸川乱歩の『日記帳』を読んでいたとき、自身から、珈琲の匂いとも調和しそうな、ウッディアンバーのフレグランスが香っていた。その日の装いに私が選んで纏っていたLOEWE 001 。これを甘い香りと評する人もいるが、形容詞一つでは言い表せない。001という名の通り、始まりのイメージが持つミステリアスな期待感がなまめかしくたちのぼる匂いなのだから。
…écrit par 《SAWAROMA》
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