先日、日本調香技術普及協会のセミナーを受講していたら、私が現在使用中のフレグランスのトップノートにイタリアンウィンターレモンが使用されていることを改めて確認。調香師の方からウィンターレモン香料自体の香りも試させていただいた。冬の厳しさにも負けない凛とした清涼感。シシリー産とのこと。季節によって果皮の色も香りも変わる。レモンといってもこれは冬の時期。シシリーという特定の場所、冬という特定の時期。
さてイタリア。ベルガモット、レモン、オレンジ、ネロリ…柑橘系の香りといえばこの国の特徴の一つかもしれない。
香りは土地の自然を反映する。そこに住む人の文化も。
私の記憶に深く残っているイタリアの香水が3種ある。
3種ともイタリアの地名に由来する。どれもトップノートにはイタリアならではの柑橘の香りが使用されている。以下にその名称と発売された時期をあげておきたい。
「ローマ」(ラウラ・ビアジョッティ)1988
淡くあたたかなピンク色の液体は柔らかく深々と女性の肌に溶け込みそうな香りを漂わす。私が使用していたのは1991年の夏から秋。ファッション誌編集者としてこの年の10月にミラノへ取材旅行に出掛けた。その後何年も日本では見かけなかったが、一昨年夏、ウィーンの空港で再会した。
「シシリー」(ドルチェ・ガッバーナ)2003
真っ黒なボックスから現れるレモンのような黄金色。シシリー産ベルガモットがシャープな香り立ちを誘導しつつ、蜂蜜のような甘さと夜に漂う妖艶な花の官能美へと誘う。自信に満ち溢れた女性に似合うと思った。イメージモデルはモニカ・ベルッチ。何か特別な出来事を予感した日、真っ白のトップスを着用した時に不意に使用したことが何度かあった。
「タスカン・ソウル」(サルヴァトーレ・フェラガモ)2008
その名は「トスカーナの魂」を表す。白色の箱の上下の色は今でも忘れられない光沢のあるオレンジ色。ボトルキャップもこの色で、香りもこの色彩イメージを裏切らないものだった。この香りを体感したとき私は、穏やかな陽光、実り豊かな果樹園の風景、洗練された日常生活を想像。男性も女性もシェアできる。カジュアルなスタイルの中にもエレガントな気分を保てる香りを感じた。
私はイタリアといっても、ミラノとフィレンツェしか訪れたことがない。ローマもシチリアもトスカーナも、いつか訪れることがあれば、思い出の3種の香りの一端を感じたいと思う。
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