2011年2月27日日曜日

日本の感受性とニコライ・バーグマンのフレグランス

春の香りといえば花。淡く優しく儚げな…。
桜を思い浮かべてみればわかるように、日本では、あくまでもふわりと軽く上品に香ってこそ愛でられるようです。そのような香りの感受性をどのように理解されたのかはわかりませんが、まさにこの季節に日本でフレグランスをデビューさせようとしたのはニコライ・バーグマン。北欧デンマーク出身のフラワーアーティストです。

今春デビューのフレグランスについて色々調べていたところ発見したのがこの方のお名前。6タイプの花束をイメージしたフレグランスコレクション、"floral notes"がニコライ・バーグマンから4月27日より発売とのこと。ニュースサイト"Fashionsnap.com" その他、様々なブログやサイトで今月行われた発表会の話題が記されています。

「ヨーロピアンスタイルをベースに北欧のテイストと日本の感受性を組み合わせた独自のスタイル」

ニュース記事中、上記「」がニコライ氏のクリエイションスタイルであるという記述に私は注目しました。1998年に来日以来、彼が日本から感じ、取り入れたいと思ったポイントは、フレグランスにどのように反映され、実際に「香り方の妙」にこだわる日本の香りファンにどう受け止められるのでしょうか。

昨日も某30代日本人女性からこんな言葉を聴いたばかり。
「香りは大好き。いい香りって本当に癒されます~ だから石鹸の香りにもこだわるんです。でも香水はつけない。いい感じに香るのってなかなか無いなって。もっと私のような日本人にもいい香り方だなって思える香水が増えて欲しい。ローカライズ、必要ですよね。」

フレグランス、とは服のように身体に身につけるものなので、着こなしの工夫も勿論必要ではありますが…まずは着てみたい、と思える香りの存在も大切。

梅から沈丁花、桜へ。今この季節、日本にいる私は、改めてその優雅な花の香りを堪能しながら、春爛漫の空気の中で新しいフレグランスのデビューを待ってみることにします。




2011年2月26日土曜日

W100 ピアニスト ジャンルを超えた女性演奏家たち

ブログタイトルは、シンコーミュージック・エンタテイメントから発売されて間もない本のタイトルそのままです。本自体の紹介としては、来月発刊の香りの専門誌にも書かせていただく予定ですが、こちらでは、音楽のテーマとして、本の中で紹介されている一人のピアニストに焦点をあててみたいと思います。







アキコ・グレースさん。ピアニスト、コンポーザーとしてジャズ、クラシック、プログレッシヴ/即興音楽表現など幅広いジャンルでご活躍。初めてアルバムを聴いたとき、次々と移り変わる風景から漂う繊細な香りをイメージしてしまった私は、以来彼女のピアノのファンになりました。

薔薇(ダマスクローズ)の香りを音楽表現する企画を考えたとき、私はその演奏を彼女に依頼しました。2010年節分のコンサート「Le Piano Aromatique ~アキコ・グレースが奏でるローズ・ヌーヴォーの香り~」では、入手し得る最新のローズオットーの香りを聴衆とともに感受、その印象をピアノで即興演奏していただきました。対比としてイランイランの香りも演奏。私はアロマセラピストとして香りと音楽について演奏の合間に彼女とトーク。このときのことは、国際香りと文化の会・会報誌 "VENUS" VOL.22中の論文の一つとして寄稿しています。

様々な楽器の音色、どれも素敵ですが、なぜ私がこうもピアノの音に魅かれるのか。おそらく幼少期の出会いにも関係があります。ちょうど私がピアノを習い始め、香水に魅かれてこっそり使い始めた年齢が6才でした。最大10指の打鍵で無限のハーモニーを奏でられるピアノの音と、有機的な香料が織りなす香りの調べ。確かにイメージとして重なります。嬉しいのは、この感覚を長々と説明することなく、一瞬のうちに共感できること。グレースさんと初めてローズ・ヌーヴォーの香りを鑑賞しながらミーティングを行ったとき、まさにその快感を得ました。

昨年はショパン、シューマンご両名の生誕200周年ということであちこちでピアノコンサートが行われていました。「W100…」では、今まさにリアルにピアノと共に生きる現代の演奏家100名が紹介されています。アキコ・グレースさんもその1人。これからがますます楽しみなピアニストです。








2011年2月24日木曜日

Miss Dior… とナタリー・ポートマン

…昔のノート発見。貴重な資料なので保管していた自分に感謝。香水の学校での講義メモ。授業中速記したノートを後で清書し直してまとめてる。だから今でも内容を記憶しているんだね。書かれている文字が読み易く綺麗。25才の私よありがとう。未来より。…

これは本日のTwitterでの私の呟きです。

昔のノートを探してしまったのは、ゆうべチラリと見てしまった "Miss Dior Chérie" の最新CMのせい。主演女優のナタリー・ポートマンから、"Miss Dior Chérie"の母ともいうべき ディオール初のフレグランス、"MIss Dior" (1947)誕生のエピソードを思い起こしてしまったのです。あの映画 "レオン"(1994)で鮮烈に感じた意志の強さから数年後、スターウォーズ新三部作で魅せたエキゾチックなエレガンス。知性に潜む野性を決して忘れることのない、そんな魅力が現在の彼女の柔らかな女性美の背景にあるのだから。

様々な変遷を重ねた彼女が、この香りを象徴するリボンの揺らめきとともに、ひとつの美のピークを発散しているかのような映像。きっと今年は彼女にとって特別な年となるはず。ベストタイミング。

私のノートからの抜粋を記します。*には文献からの注釈を追記します。
…1947 ミス・ディオール。ディオールにはおてんばの妹がおり、じゃじゃ馬、遅刻の常習犯で、マドモアゼルとは呼ばれず…ミス・ディオールと名付けた。
1940~50年にかけて、ファッションでは(*1)ニュールックが台頭。ナチュラルで、より良き時代を求める心を表現、香りではグリーンタイプの1940年代から(*2)シプレタイプの1950年代へ。

*1
…丸みをつけた肩、女性らしさに溢れた胸元、ふわっと広がったスカート、ウエストを絞ったそのスタイルは、まさに花の冠のような女性美そのもの…そして「ハーパースバザー」の編集長がそのドレスを"ニュールック"と呼び、一躍モード史にその名前が連ねられ、ディオールラインの基礎となりました。
…香水評論家・平田幸子氏の著書「香水ブランド物語」より

*2
…シプレという言葉は、1917年にコティ社がつくった香水「ル・シープル」(日本語でキプロス島の意味)に由来。キプロス島とは当時はバカンス先として大変人気のある場所で、トルコの南方にある地中海の島。ベルガモット、ローズ、ジャスミン、オークモス、パチュリ、ラブダナムを組み合わせたこの香りは斬新で、それ以降につくられた「ル・シープル」似の香水はシプレ調と呼ばれるようになりました。
…調香師・新間美也氏の著書「香水のゴールデンルール」より

新間美也氏によると、"MIss Dior" はグリーン・フローラル・シプレの代表的な香り。「シプレ」は新間氏によって挙げられた香り選びのパーソナリティキーワードでは、「クラシック」、「アーティスト」、「グラマー」のカテゴリー中で紹介されていた香りノートの一つでした。どこかナタリーを彷彿と…。そして2005年発売の "Miss Dior Chérie" は、愛らしい女性にぴったりの甘い香り、モダンシプレと称されていて現在のナタリーに重なります。このタイミングで彼女を選んだ審美眼。さすがディオール。











2011年2月23日水曜日

開襟シャツと長い髪・揺れる香り

弥生間近の今頃は、時に春の陽射しが見え隠れ。昼間のあたたかな一時、ひと足先に春服で出掛けたくなります。

一昨日、陽射しとともに空気の柔らかさを感じ、コートをまずは変えようと思いました。ダウンからライトグレーのスプリングコートへ。そしてタートルネックはもう着ません。スタンダードな白のシャツ。胸元のボタンを上から三つ開けてチョーカーを。ほんの少し首元の肌を見せるだけでも春気分。

当日は接客業務もあり、未知の方ともお会いする予定でしたから、香りは控えめに自分自身が心地よい程度の香り方にとどめたいと思います。こんなときはソリッドパフューム。シャワーを浴びたあとにウエストまわりや膝裏、足首まわりにつけたあと、髪を乾かしてから毛先にもなじませておきました。衣服を身につけて出かける直前、手首に少し。その両手首でそっと毛先から10センチ位上をトントンと。大体胸元の位置です。

夜。忙しい時間が続きます。ふっと開襟の胸元から、体温であたためられた優しい香りがこぼれてきます。鏡を見る暇がなくても自分はまだ元気。ニッコリと笑顔。歩き出すとかすかに長い髪と共に揺れる香り。春風をひと足先に感じられた一日でした。

2011年2月22日火曜日

肉とフルーツとスパイスと・甘みは旨味

塩豚の厚切りの上にのせられた甘い金柑の実。昨夜のパーティーのオードブルの一品です。またしても肉とフルーツの組み合わせに笑顔。想像通りの美味しさでした。

最近私は、ブルーベリージャムを砂糖がわりに肉料理につかいます。きっかけは二つ。頂き物のジャムがたくさんあったこと。そして、肉をより美味しく香り高く楽しみたいと思ったことです。フルーツジャムには甘みはもちろん、芳香と各種ビタミン、ミネラル、そしてタンパク質分解酵素を含み肉を柔らかくする効果をもつものがある、ということは昔から様々な文献でも目にしていました。

肉には独特の臭みがありますが、それをいつも胡椒、生姜、 ニンニクなどで香り付けするのもワンパターン。そこでフルーツの香りとこれに合うシナモンを合わせてみると実に美味しかったのでした。以前中華の料理人の方が豚の角煮には砂糖はもちろん、シナモン等の香辛料も欠かせないとおっしゃっていたことも思い起こして…。

豚肉ブロックの表面に塩を適量すり込み、ラップで密封して一日以上冷蔵庫に保管。これをスライスしてただ焼いても美味しい塩豚なのですが、これに少し塩を足した上で、砂糖の代わりのブルーベリージャム適量とシナモンひと振り。軽く煮込むような感じで焼きます。脂身はある程度あった方が良い、というのは、芳香成分も旨味も脂に吸着するからです。余分な脂分は溶けてジャムのとろっとした成分に包み込まれるようにしてフライパンに残りますから、かえってヘルシーなのかも。

甘みは旨味。塩味と甘味との配合はお好みで試行錯誤するとよいと思います。
これといった配合のキマリに縛られず、その日その日の味覚に正直に作る体験もまた貴重。身体の状態は五感センサーに反映すると私は信じています。特に甘いのが食べたいときは疲れているのかも。寒い地域では塩味や甘味が強い料理がよく出されますが、理にかなっているように思います。

ちなみにサツマイモも、よく砂糖とレモンなど柑橘果汁で煮詰めたものをよくつくりましたが、こちらもブルーベリジャム&シナモンで煮ると抜群に美味しかったです。紫芋とブルーベリージャムならばカラーも共通。








2011年2月20日日曜日

「山形代表」ら・ふらんすストレート果汁100%

大好きな果物、ラ・フランスを昨秋は満喫することもなく新年を迎え、どこか寂しい気持ちでいたところ、見つけたのがこのジュース。
「山形代表」ら・ふらんすストレート果汁100%です。




2010年秋収穫の果実からのストレート果汁。その存在を知ったとき、初めてこの果実を食したときのことを回想してしまいました。追熟されたクリーミーな果肉が醸し出す上品な香り。程良い酸味と爽やかな甘みがなめらかな触感とともに口の中で溶けていく…芳醇とはまさにこのことでした。

このジュースが届いてしばらく、絶妙のタイミングで口にしたいとその時をしばらく待ちました。そして昨日土曜日、セミナーイベントの主催者として夜遅くまで仕事をした夫と私は、昨夜のアルコールも抜けきらない気怠い朝、起きて最初にこのジュースを口にしました。

漂う香りにまずは癒されます。口当たりもなめらか。
繊細な甘みが、ゆっくりと喉を超えるたび深くたたみかけるように染み込んでいき、穏やかな酸味と相まって「ああ美味しい」の一言をつぶやいてしまいました。深い満足感。もう昨日の疲れなど忘れてしまいました。お酒のせいかちょっと頭痛がしていたのも不思議に消えていき、身体がスッキリ。何故?と調べてみたら、果肉のデンプンが追熟により果糖、ショ糖、ブドウ糖に分解され、ビタミンB、Cも豊富とのこと。まさに疲労回復にも格好の飲み物でした。

「ラ・フランス」をネット検索しあれこれ調べて数時間。面白いことがわかりました。まずは、この植物もバラ科の植物!梅といい、桃、杏、チェリー、イチゴ、リンゴ、アーモンド…皆香り高く、果実の美味しさで人を感動させているものばかり。さらにこの「ラ・フランス」という名称の由来。19世紀にこの品種を発見したフランス人によって「わが国を代表するにふさわしい果物である」と命名されたのだとか。結局フランスの土壌は生育に適さず、日本の山形の気候と土壌が合っていたため現在山形県はラ・フランス生産高日本一。「山形代表」ジュースのパッケージデザインは地元、東北芸術工科大学によるもの。県産果実のうまみと栽培農家の思いをシンプルに表現。

またきっと注文してしまいそう。いつか山形に行きたいと強く思います。

2011年2月18日金曜日

青の香り・ブルガリブルー(2000)

先週、懐かしいフレグランスを使う機会がありました。紫がかった鮮やかな青の服を選んだその日、外の空気は非常に冷たいながらも私の心は未知への好奇心で熱くなっていました。選んだフレグランスは、ブルガリ・ブルー。

凛とした信念を秘めながらも柔らかく、洗練された華やかさを醸し出す香り。ジンジャー、ベルガモットから流れる透明感がバニラやムスクのゆったりとした空気に包まれてあたたかな花香料の優雅さを控えめに漂わす。歩くたびにこぼれるように香らせたい。2000年に発売されてから10年後の昨年、現代的解釈のもとに"BLVⅡ"も生まれた位ですから、このまま歴史に残ってほしいものです。

2000年秋の"PARFUM"誌No.115。表紙をめくると瑠璃色の中に"BLV"の文字。ブルガリブルーの香りが1ページに渡り文章で表現されています。一部をご紹介。
…予期せぬ出来事と、心地良いハーモニー。氷のような冷たさから湧き上がる情熱、そしてクールで鮮やかな透明感から優しい穏やかさへと流れゆく香りの魂たち。…香りのメインとなるジンジャーが「氷と炎」という相反するクールでウォームな雰囲気をつくりだします。…

青の服と香りを身につけたその日、私は本当に予期せぬハッピーな出逢いに遭遇したのです。この日のことは生涯忘れないでしょう。その余韻は1週間後も消えていません。あの日の気分で選んだ装いの効果。過去の無意識が示していた意味がわかるのは未来。



2011年2月16日水曜日

冬ケア・3 (心地良い動きで保つボディ)

寒い冬に限らず、生活習慣の中で偏った身体の使い方をしている人も少なくないのではないでしょうか。車移動やデスクワークが続けば脚部の筋肉があまり使われず、運動選手ですら、全身の筋肉を程よく鍛えながらという視点に欠けたトレーニングを続けていると特定の筋肉を含む部位ばかり酷使し、故障しやすくなると想像できます。身近にサッカーを14年続けている高校生の息子がいるので深く実感しています。

痩せ過ぎず太り過ぎず、均整のとれた筋肉量の身体でいつも柔軟な動きができること。これは良く生きるために極めて大切なことと私は思い、「筋肉の使い方」と「腹式呼吸」の大切さを意識した日常生活を送るようにしています。

私がこのようなことを意識したきっかけは3回ありました。
1,10代でソプラノパートを歌うために腹式呼吸を訓練し、全身をつかって高音を発声する心地良さを体感できたこと。
2,20代で出産時の陣痛に備えて呼吸とともに筋肉をリラックスさせる練習を行ったことで安産となり、産後の回復も早かったこと。
3,30代でアロマトリートメント&リフレクソロジー施術を頻繁に行う仕事の中で、仲間が次々に腰や手を故障し辞めていくのを憂い、回避策として、部分でなく全身の筋肉を連動させるイメージで身体を使う工夫を実践。結果として施術者が無駄のない心地良い動きをするというリズムが施術される側にも心地良いものとして伝わることを実感。

日常生活の中で心がけていることを列記してみます。
1,あらゆる動作に筋肉の収縮と拡張を意識し、なるべくゆっくりと大きく動く。
2,同じ姿勢をなるべく長時間続けないようにし、右を使ったら左をつかう、下げていたら上げる動作を入れる。
3,最も重力のかかる脚は必ず毎日90度以上、上げて筋肉をのばすようにする。




"VOTRE BEAUTÉ" 2月号の冬ケア特集最後のページにも、硬くなりがちな冬のボディのために…と軽い有酸素運動やヨガの他、"la méthode Feldenkrais"(フェルデンクライス・メソッド)という初めて目にする名称の考え方が紹介されていました。自分の身体が心地良いように筋肉を意識して動かすようになれば、そうした動作が関節に働きかけほぐされるのだと。興味をもった私が「フェルデンクライス」という言葉で検索したところ…日本フェルデンクライス協会Webがみつかりました。これはモーシェ・フェルデンクライス博士が20世紀に研究、確立したもので、「心地良い体の動きが脳を刺激し、活性化させる…余分な力を使わずに効率よくらくに動かすかを学習…」といったものであると概要を記した文章に書かれています。そして、フェルデンクライス博士の残された言葉も幾つか列記されていましたが私が特に共感したものを一つご紹介します。
「動くことは生きることであり、動きがなければ生きることは不可能だ」

1904年、ロシア領ポーランドに生まれたフェルデンクライス博士はパリ・ソルボンヌ大学で工学、物理学の博士号を取得。柔道も愛好し、西欧人初の黒帯取得者の一人となってフランス柔道クラブも創立されたとのこと。その後サッカーで膝を故障したことをきっかけにさらに解剖生理学をはじめとする人体に関わる科学を広く学び、どうしたら再びスポーツができるようになるかを模索する中でこのメソッドを確立されたのだとか。

フランスと日本の接点をまた一つ、思いもよらぬところで知ってしまった驚きとともに、普段から私が何気なく考えていたことの意義を再確認できたようで嬉しい限り。こんな貴重な情報を得られるなんて、フランスの美容雑誌はさすがと感心。


参考情報:
日本フェルデンクライス協会Webサイト
参考文献:
"VOTRE BEAUTÉ" Février 2011,n°839"




2011年2月13日日曜日

Super Folk Song(1992) by 矢野顕子

日付が変わる前にどうしても書いておきたくなった記憶。
今日2月13日はミュージシャン、矢野顕子さんの誕生日ということを、つい今しがた知ってしまいました。

「 W100 ピアニスト ジャンルを超えた女性演奏家」という本を読んでいたら、音楽研究家の土橋一夫さんによる文章を発見。
そして思い起こしたのです。昔大好きで何度も聴いたアルバム。
" Super Folk Song "(1992) by 矢野顕子。

このアルバムメイキングの映画まで観に行って1人はらはらと涙をこぼしたこともありありと思い起こしました。今でもトップの曲の打鍵の強弱加減まで憶えています。変幻自在のピアノの音色と彼女のしなやかな声の絶妙なハーモニー。

ピアニスト。もう一人、アキコさんという名前の素晴らしいピアニストを私は幸運にも知っていて、私のブログにも書かせていただいたことがあります。
素敵な記憶と再会させてくれた本のこともそのうちにご紹介します。






植物の「気配」は香り・波多野光 個展

私は曲線が好きです。自分の気持ちや、感じた香りのイメージを曲線で描き始めたら、きっと時間を忘れて没頭してしまうでしょう。

波多野光さんの描く植物。その妖しくも流麗な曲線の中に、生きものがただ生きるためにひたすら生きている軌跡を感じ、痕跡としての香りを想像しました。




西荻窪駅北口バス通りを青梅街道の方に向って直進。左手にデニーズが見えた所から二つ目の曲がり角を左折すると、「ギャラリーみずのそら」の案内板が見えます。カフェが併設されたこのギャラリーの窓際には浅い水盤がありました。
晴れているときは周囲の木漏れ日を集めて輝くことでしょう。私が訪れた雨の日は、その雫が一つひとつまあるい波紋を綺麗に描いていました。

ギャラリーに入ってすぐ、正面に梅の力強い枝が伸びる曲線が見えます。線のその先に見えない香りを想像。芳しい梅の花。もうそれだけで胸がいっぱいになってしまい、カフェでひと休みすることにしました。

フルタヨウコさんお手製のお料理をいただきます。さつまいもにほのかな柚子の香り、蕪に桜の塩漬け、イワシの梅煮。春の「気配」を味わいました。デザートのチョコレートムースにも赤いピンクペッパーと桜の塩漬け。きりりと甘みが引き締まって美味しい。ハーブティーはフルタさんのパリ土産。




気分をリセットしてから、再び作品を鑑賞。先ほどいただいたばかりの野菜、花、多肉植物、葉などさまざまな植物の軌跡。特にほのぼのとしたのは、5月頃に見かける紫陽花の芽。それぞれの季節を回想しながら、色々な香りを頭に描いて…気がつくと夕暮れに。私の作った春の香りを移らせるために…と小箱を予約してギャラリーを後にしました。

2011年2月10日木曜日

冬ケア・2(美しい爪と髪は食事から)

"VOTRE BEAUTÉ" 2月号特集記事「冬のお手入れ…25の秘訣」を読みすすめています。冬ケア・1では滑らかな手肌のためのケアをご紹介しましたが、これはボディ全般にもいえることでした。石鹸での洗いすぎは避けて、最低1日1回は全身の乾燥部位に保湿ケアをという記述に共感。私は毎日全身の皮膚を自分のハンドセンサー(手の触覚)でチェックしていますが、特にこの時期乾燥しやすい脚部やお腹周りは手で泡立てた石鹸で軽くぬぐう程度。皮脂が分泌しやすいと感じる頭皮、耳の後ろから首肩、背中上部、バスト付近…こうした部位に対してと同様に洗浄剤で洗っているとガサガサの脚になってしまいます。浴槽に長時間つかる入浴も必要以上に皮脂を奪われやすく要注意。

さて、外からケアする以外に大切なこと。それは当然のことながら、皮膚・爪・髪を含むボディの材料となる食事です。ページをめくると艶やかな皮膚&髪が美しい女性のフォトカット。その隣ページには、健やかな爪と髪をつくる大切な栄養素を含む食事について栄養学者によるアドバイスがありました。…間に概要をご紹介。




…爪と髪は栄養状態を見事に反映。生気のないひび割れた爪の惨状はタンパク質・ビタミン・ミネラル等の不足の結果。栄養バランスを欠いたダイエットを長期間繰り返したりするとこうなり易いので要注意。こうした栄養素は爪を構成するタンパク質であるケラチンの合成に必須なのです。日々の食事から肉を省かないように。週に3回は赤身の肉をメニューにして貴重な葉酸と鉄分も摂取して。亜鉛を含むイワシ、マグロ、サーモンなど油分の多い魚、ビタミン12を含む卵黄やレバーを時々摂ることも同様に大切。マグネシウムを多く含む野菜やドライフルーツ、硫黄を含むキャベツ、タマネギ、キュウリも忘れないで…

栄養素メモ。
葉酸…赤血球をつくり、細胞の新生・増殖に活躍。
鉄分…全身の細胞に酸素を運び、貧血を予防。
亜鉛…酵素の成分として重要。細胞の形成などに関わる。
ビタミン12…タンパク質合成サポート。造血作用に関わる。
マグネシウム…多くの酵素の働きをサポート。骨の成分の一つ。
硫黄…アミノ酸に含まれ、艶やかな皮膚、爪、髪をつくる。

参考文献
"VOTRE BEAUTÉ" Février 2011,n°839"
「栄養学と食のきほん事典」
井上正子(医学博士・管理栄養士・日本医療栄養センター所長)監修
株式会社 西東社発行(2010,5)

2011年2月9日水曜日

殻付きアーモンド・フレッシュな香ばしさ

仕事で立ち寄った、スーパーマーケットトレードショー
さまざまな食品を中心としたプレゼンテーションで大にぎわい。美味しそうな匂いがあちこちから漂っています。

打ち合わせが終わったあと、会場をフラフラしながら目が留まったのは私の大好きなアーモンドの山。しかも殻付き!ソフトなアースカラーの殻のカタチもまさしくあのしなやかにふくらんだ花びら形。バラ科の植物です。




早速試食。ああやっぱり。香ばしくてこれぞ「木の実」。ふうっと鼻に抜けるナッツのあたたかい香りが伝わってきます。アーモンドのように脂肪分の多い植物は長期間空気にさらされると酸化しやすいので、殻付きのほうがフレッシュというわけですね。

小さな頃からアーモンドが好きでした。アーモンドチョコレートであればチョコより中身を楽しみにたべるほど。そして大人になってから、これが食品の中でもビタミンEの含有率が高いと知り、ますます好きになりました。抗酸化作用。有難いです。その他、今日試食させていただいた株式会社小林商事さん(千葉県)のブースでは、食物繊維やカルシウム、マグネシウムなどのミネラルも豊富だと表示されていました。アーモンドを殻付きのままで煎る技術はまだまだ日本では貴重なようで、まだそんなに多くのお店では流通していないそう。これからですね。

栄養分(脂肪分含む)も取りすぎてはいけないので、私は1日に6~7粒程度をおやつとともに頂いています。特に出張やハードなスケジュールのときには10粒位携帯していきます。数粒で何となく元気になれるのも嬉しいです。仕事でお世話になっている女性編集長へのおみやげに悩んだときもアーモンド。美味しくて若々しさのタネ、とご存知なのでいつでも歓迎です。





2011年2月8日火曜日

Future Solution LX・仏美容雑誌にて受賞

フランスの美容雑誌"VOTRE BEAUTÉ"2月号誌面に、この雑誌主催の2011金賞受賞コスメが発表。その中のひとつとして、日本の資生堂による海外向け高級スキンケア化粧品 "Future Solution LX Crème Nuit" が選ばれています。







アンチエイジングのための最先端の科学を駆使した優れた化粧品として評価され、さまざまな皮膚老化を抑え、より良い状態をキープするための夜使用のクリーム。評価したこの雑誌の読者の声が赤い文字で記されていますのでチョット訳してご紹介。
「うっとりするような感触、心地よい香り、高級感あふれる外観。まさに"bijou"(宝飾品)。」
「使用後、肌の良好な状態を実感。使用後1週間で肌はふっくら、顔からも緊張がとれました。」
「なめらかな感触なのに、ベタつきがまったくないの。」
「すぐにとりこになってしまいました。肌はなめらかになり、もう朝に疲れた皺くちゃの顔をみることはなくなったわ!」
「初めて使ったときから肌が輝いた感じ。まさに全く新しい特別な化粧品ね。」

この"Future Solution LX"のサイト(要Flash)をご覧いただいてもよくわかりますが、容器は
抹茶をいれる茶器の棗をイメージさせ、茶のこころ、おもてなしの心を肌へという意図が感じられます。日本で100年以上の歴史をもつ企業が勤勉に研究し続けた結果ですね。皮膚科学と化学の技術が天然植物由来成分を生かしながら、今も未来へも美しくありたいと願う女性の想いに応えようとしています。そういえば、20年以上前に私がパリにいた頃、すでにフランスで資生堂といえば化粧品の高級ブランドとして評価されていたことも思い返しています。



2011年2月6日日曜日

冬ケア・1(滑らかな手肌)

昨日早速入手した"VOTRE BEAUTÉ"2月号。冬のお手入れについて細かく25項目のアドバイスが書かれていて壮観。その今号特集のトビラ見開きぺージ写真がこちら。




各項目について皮膚科学者、栄養学者、ネイルのプロたち、メイクアップアーティストたちが簡潔に的確なアドバイスを記しています。ほぼ常識?と思われる位基本的なことまで丁寧に触れられているところに、この雑誌の誠実さを再認識。せっかくなので一部の概要を紹介し,プラス☆私の見解も述べてみようと思います。まずは手肌から。

「しみのない滑らかな手肌のために」
冬の乾燥した手肌は絶対にお湯で洗わないこと。ますます乾燥してしまう。冷水で洗い、その後はクリームでケアを。アンチエイジング美容液を一日2回塗るのも効果的。…爪ももろくなっていると思ったら要注意。やすりを使って整えるのは3日に1度、親指の先で爪表面を軽くタップして微振動を与えることによって爪の根元へマイクロマッサージを、というのもおすすめ。
☆From sawaroma
アロマトリートメント施術をメインの仕事としていた頃、特に滑らかな手肌であることは死活問題。まず、毎日素手で使用しなければならない石鹸とシャンプーを低刺激のものにし、バスルームでも手にはぬるま湯。洗剤やお湯を使って洗いものをするときは必ず手袋使用。料理の際もなるべく素手を汚さぬように薄い透明手袋着用。紙類を触る仕事のときも紙に水分を取られるのでクリームを塗った上に綿の手袋。ダンボールや硬いものを扱うときも軍手など手袋使用。朝と夜、必ず爪先から肘までトリートメントオイルかハンド用クリーム塗布しながら末端から心臓方向へソフトにさする。乾燥が気になるときは就寝時に手袋着用。外出前には時間によっては手の甲を中心にUVカットクリームを塗布。



2011年2月5日土曜日

冬眠から目覚めた肌・髪・シルエットへ…25の秘訣とは。

極寒の1月もおわり、2月を迎えると明らかに空気が和らぎます。同時にそれまでの寒さ・乾燥ストレスに耐えてきたボディの窮状も自覚しやすい季節。

フランス美容雑誌"VOTRE BEAUTÉ" 2月号の表紙。まさにタイムリーな特集記事のタイトルが。「冬のお手入れのために…各方面のスペシャリストからの25の秘訣」。"SOMMAIRE"(概要)をよんでみるとやはり。

…気がつくと首筋も顔の色も生気なく青白く、肌はカサカサゴワゴワ、ヘアスタイルはぺしゃんこ、ネイルもくすんで。これでいいの!とばかり冬眠から飛び起きたアナタに、各方面の専門家が25のアドバイスを。…

確かに、まずはこの季節の変わり目の意識は大切。身体はすぐには変わらないのでこの2月のうちに徐々に…と。"VOTRE BEAUTÉ" 2月号は是非入手して読みたいと思いますが、その前に私も、なにかすぐに実行できそうなことを書き出してみようと思います。とりあえず朝の行動として5つ。

1,洗髪後はタオルドライの後、毛先中心にトリートメントオイルを軽く馴染ませきしみ防止後ドライヤーできちんと乾かす。
2,両手のひらで顔全体を触り乾燥度合いをチェック。カサつくときは石鹸をつかわず蒸しタオルでそっと拭くだけの洗顔とし、状態に応じた量のローション&保湿剤を手のひら全体で軽く染み込ませるようになじませる。
3,両手両足を前後左右90度の位置で制止10秒。背筋をピンと張る。
4,体重計測。ほぼ毎日同じ時間帯に。
5,衣服を着る前に全身の皮膚を両手のひらで触り、カサつくところにはかならず保湿剤をなじませる。冷えていたら軽くさすってマッサージを。




2011年2月3日木曜日

2月のフリージアから追想した、ロングセラーの香り

節分&新月の特別な日。もうひとつ、花から追想したフレグランスの話。

…あれは確か2月の月曜日の夜。仕事を終えて帰宅すると、窓際の花瓶に黄色いフリージアの話が数本。なぜ月曜と憶えているかといえば、つけたばかりのテレビから、かの有名なドラマ「東京ラブストーリー」のテーマ曲が流れていたのでした。当時は帰宅の遅い日が多くドラマ自体はほとんどみていませんでしたが…。

その頃の私がよく帰宅途中に買って飾っていたフリージア。当時愛用していたフレグランスの一つであった「アントニアーズ フラワーズ」がこのフリージアの香りをメインとしていたこともあり特に気に入っていたようです。ニューヨーク、ロングアイランドのイースト・ハンプトンという海の見える別荘地で花屋を開いたフローリスト、アントニア・ベランカという女性によって誕生した香り。「自分のフラワーショップで香らせたい香りを創りたい!」という彼女の発想が、以来20年を越えてもなお愛されるフレグランスを誕生させたそうです。

日本ではいつも控えめに香りを纏っていた私も、このフレグランスはやや多めに気軽に楽しんでいました。周囲からも笑顔で応えられ、「何という香りですか」と聞かれたこと多数。この香りと暮らした1991年の冬が空けて春を迎える頃、私はチョットした人生の転機に直面します。今にして思えばの話ですが。


参考文献
香りの専門誌"PARFUM" No.151(2009年秋号)
p25「誰もが微笑む香りの花束 アントニアズ フラワーズ」





香りのグラデーション・1

これまでよく質問として受けるものの一つは「どうしたらいい感じに空間を香らせられますか?すぐ弱くなってしまうし、気づいてくれない人もいるし。程よく持続性をもって香らせたいんですけど。」というもの。

プライベートルームの中、香りを感じるのが自分1人ならばその都度自分の感じ方に合わせれば良いのですが、こと不特定多数の人が不定期に出入りする空間は確かに、発信側が意図するようにはなかなか感じてもらえないようです。

人の嗅覚は生命を守るための情報キャッチという機能をもつゆえに、急に異種の香りを感じると敏感に察知するものの、その感知は長くは持続しません。自分にとって決定的に危険ではないとわかると、次なるさらに重要な嗅覚情報をキャッチするため、既知の香りは意識しない限りだんだん感じなくなっていくのです。例えば電車の中でこんな経験はありませんか。…ある瞬間に違和感のある匂いを感じたとしても、携帯電話を眺めたり他のことを考えたりしているうちにいつの間にか気にならなくなっていて、今度は別の匂いが気になっていた…等。

こうした感じ方そのものも、人のその時の体調や空間の温度、湿度によっても変わってきますし、出入りする人自体もフレグランスをはじめ、衣服に染み込んだにおい、外気の様々なにおいを運んできます。さらに香り自体も変化します。特に熱源で温めて拡散させる方法は短時間で広範囲に香りを拡げてはくれますが、高温によって香りの質自体の変化が加速される…。

理想的な状態の香りをどのタイミングで感じさせたいかという目的にあわせて、香源の空間配置をデザインしなければなりませんね。季節によっても実験が必要と思われます。

必須なのは空間の入り口に常に一定の質の香源を設置し、空間の外から入ってきた人が明らかにふわりと感じられるようにすること。空間が広くなければ、このエントランスだけでも十分効果的です。かなり広い場合は、人の動線に合わせ一定の距離を空けて数か所に香源を設置します。要するに受け手側からみて、「…ああなんだか、ここは素敵な香りがするなあ、…あ、挨拶しよう…楽しい気分になってきたなあ…あ、またさっきのいい香りがかすかにしてきた、やっぱりいいなあ…」と、最初は強く感じた香りが徐々に弱くなったかと思うとまたある瞬間少し強調される。そんな香りのグラデーションを描けるように。








2011年2月1日火曜日

PASSION & SIGNATURE …by THANN

如月。春をリアルに待つ心を幸先良く梅の開花が応えてくれる月。
毎月恒例ついたちご紹介のフレグランスとして、今日は先月1/22にご紹介したソリッドパフューム2種類、PASSIONとSIGNATUREの香りを。

まず2種類に共通しているイメージは、ナチュラル・ソフト・ リラックス。どことなくデリケートな紅茶のように甘く温かく、それでいてすっきりとした爽やかさ。そこには複雑な重さはありません。特定の花やフルーツを想起させるよりも、洗練されたリラクセーションムードという、このブランド独自のイメージが感じられるのです。

PASSIONは、ベルガモット、ジャスミン、ホワイトムスクのブレンド。最初は控えめに香りますが体温とともにゆっくりと柔らかく優雅なオーラに包まれてくるのが分かります。もう少しフローラルが主張していてもいいのかな?…と思えるほど上品な香り方です。

SIGNATUREは、オレンジ、スペアミントのブレンド。以前からこのブランドのライスコレクションスキンケアを時々使用していた私にはすぐに分かりましたが、まさにその香りです。最初はPASSIONよりもリフレッシングなインパクトを受けます。徐々に穏やかなリゾートの風が吹き抜けていくようなムードに包まれるでしょう。

これら2種類にはオードトワレタイプもあります。そちらはアルコールで希釈されていますから、ソリッドパフュームよりもシャープに香ります。用途に応じて楽しめますね。7年前に初めてTHANNのスキンケアを使用したときに感じた独特のムードがこんな素敵なフレグランスに進化したとは…嬉しいかぎりです。




秘めた情熱の香り・ジャスミン・アブソリュート

ジャスミンの小さな白い5枚の花びらが南仏グラースの畑に広がる写真を見たことがあります。一面みどりの葉の中に咲き誇る星型の白い花。明け方近くのまだ暗い闇の中で、この可愛らしい花がまるで星のように白く輝き、芳香を放つ情景を思い浮かべてしまいます。

私は様々な花の香りを好みます。特に好きなものがローズとこの白いジャスミンの香りです。どちらも花香料の双璧であると思います。ローズに関してはWebサイトパレチカの中でその魅力を様々な角度からご紹介しています。薔薇は外観の華やかさから感じられる期待に応えるかのように香りも華やか。一方香料用のジャスミンの花は華やかというよりも清楚で静かな佇まい…その花から熱をかけず丁寧に抽出されたアブソリュートと呼ばれる香料は、うっとりとさせる甘美な陶酔感とともに、どこか妖しくも動物的な匂いをたたえた香りを放ちます。まさに秘めた情熱の香り。

このジャスミン(グランディフォーラム・ジャスミンと呼ばれる種類のもの)はインドが原産地とされ、2000年以上の昔からエジプト、ペルシャ、ローマや中国の人々に愛されていたという記述が、文献*にありました。そしてこの花の栽培と香料抽出が、17世紀以降の南仏グラースの天然香料製造会社の始まりとなったというのです。栽培および抽出技術進展に貢献した農学者や技術者として数名のフランス人の名前が挙げられていました。フランスで磨かれたジャスミン・アブソリュートの抽出技術が現在エジプトやインド、モロッコでも適用されています。

かつて異国で出産した友人が、お土産にとこの香料を私にプレゼントしてくれたことがありました。彼女が産後まもなく、アロマテラピーショップに立ち寄ったとき、なんとなく滅入っていた気分がこの香りを感じているうちに晴れやかになったから、というのです。うっとりとさせるこのジャスミン・アブソリュートの香りは産後のマタニティブルーを払拭したのでしょうか。女性でいることを忘れさせない、まさに歓喜の香りと感じたことを憶えています。



国際香りと文化の会・会報誌 "VENUS"1990 VOL.2より
「神秘的な香料素材1」ミッシュル・デマレー(ルール)氏によるジャスミンについての文章を参考にいたしました。