2012年5月29日火曜日

天然ベチバーとゲランの新作

緑が日一日と濃くなるこの季節。


夕暮れどき。鬱蒼とした深緑の森。目を閉じると、さまざまな匂いの中に滑らかな木々と土の温もりを感じる。あくまでもさりげなく。

ベチバーという植物の根の香りには、そうした温かみとドライな上品さがある。
この精油自体はどろりとして粘度があるが、まさに根そのもののパワーを感じる。
精油を1%程度に希釈したベチバー水を私は夏には常備し、時折カーテンや網戸にスプレーし、深い緑の森からの涼風をイメージしている。

男性用の香水のベースノートによく使われるそうだが、私の好きな女性用の香水に使われていることも多い。
スモーキーで骨太なベースを感じさせ、深い安心感に包まれる。音に例えるとこれまた私の好きなウッドベースの響きに近い。

この天然ベチバーにこだわったゲランの新しいフレグランスが今月発売されたらしい。カクテル、モヒートにインスパイアされてうまれたゲランオムの最新ヴァージョン。

人気の「ゲラン オム ロー」が、よりフレッシュでウッディな香りに進化
溢れ出す爽快感、「ゲラン オム ロー ボワゼ」


厳選したインド産の香料“ベチバー”がふんだんに使用されているとのこと。その滑らかさ、近いうちに確認したい。

2012年5月24日木曜日

18 visual works from 12 kinds of aromaー 文化学園大学 けやき祭にて

文化学園大学 小平キャンパスにて毎年6月第1土曜に開催されるけやき祭。
今年ももちろん、6月2日に開催されます。

At Kodaira Campus of Bunka Gakuen University , KEYAKI FESTIVAL is held in every first Suturday in June.
This year, of course will be held in the 2nd of June.


この大学を知るには、けやき祭で見逃せないものが2つあります。
一つはすべて学生によってプロデュースされるファッションショー。
もう一つは、学生が実際に履修した科目の中で制作した作品展示。

In this festival, 2 events are must for understanding this university. One is the
fashion-show by produced only students. The other is the exhibition of student's works in their taken subjects.


私はこの大学の現代文化学部において『ファッションとアロマ』という講義を担当する講師です。『ファッションとアロマ』では、学生が各々1種類の香りを選びそれにインスパイアされたイメージをビジュアル作品へと創作します。彼らの作品ももちろん、来る6/2のけやき祭で展示されます。今回の展示は12種類の香りからインスパイアされた18作品。12種類の天然植物由来の香料テスターと共に展示されています。

I'm a lecturer of "Fashion and Aroma" , the name of subject,
in Faculty of Liberal Arts and Sciences at this university.
In "Fashion and Aroma", each student tries to design visual work
inspired by each 1 aroma of natural plants.
Their works,of course are in the exhibition at KEYAKI FESTIVAL.
In the 2nd of June, 18 visual works from 12 kinds of aroma
are exhibited with 12 aroma-testers.


参考までに…(only Japanese)
昨年の今頃も、コチラや、コチラにてご紹介しています。今年のけやき祭については今週大学サイトのコチラにもアップされています。














2012年5月23日水曜日

新作香水にみる原点回帰

フィガロ7月号。27ページ目に夏の香りとして
新作香水のラインナップ。

全10種類を見て感じたのは3つの傾向。

1,クラシックなヴィジュアル
2,天然香料のイメージの奥深さを生かす
3,人と香料の深い縁からのインスパイア

1については
実際に発売されたばかりのフィガロ誌面を見ていただくと一目瞭然。

2 については特に、セルジュ・ルタンス ロー フォアッド オードパルファム。神秘的な清潔感には、紀元前の昔から宝とあがめられてきたフランキンセンスの香りが一役かっているようす。

3については、まさにモルトンブラウン初のコチラのシリーズのテーマそのもの。スパイスロード。アジアを抜きには語れない。中国、麗江がテーマの「リージャン」はお茶の芳しさがイメージされているという。

歴史があって今がある、そんな原点回帰の精神でプロデュースされた「今」を 香りで感じるのも楽しいはず。

2012年5月20日日曜日

『美人の歴史』と『パーディタ メアリ・ロビンソンの生涯』

日曜の日経新聞には、見開き2ページで「読書」のコーナーがある。
本日その中に、先月からチェックしていた本とともに、それよりも先に読みたいと思う本を見つけてしまった。

まずは、先月某大学生協にて発見、思わずその厚みと存在感から手にとり、パラパラと内容を斜め読みしてしまったのが、ジョルジュ・ヴィガレロ著『美人の歴史』

440ページの上製本。美人、美容、化粧、ファッションについての変遷と発達に関し、16世紀以降の社会背景とともに眺める視点が得られそうなので、資料として貴重。目次を見るだけでも想像力を刺激される。
きちんと読む前の私の想像では、そもそもギリシャ神話に登場するナルキッソスが水面に映る自分に見惚れて恋してしまう…といった自己愛が根本にあるのではないかということ。ただし、それはいつでも自分の全身を鏡で眺められる現代に生きている私の一つの視点にすぎない。

上記よりも先に読みたいと思った本は、最近注目を深め、その歴史をより詳しく知りたいと感じていたイギリスが舞台。イギリス史上最高とされる美しい女性についての評伝、ポーラ・バーン著『パーディタ メアリ・ロビンソンの生涯』
アメリカ独立宣言、フランス革命。大きな歴史の節目とも思える18世紀末。ロンドンに実在したという「美人」の生涯を眺めることからも様々なことが感じられると期待。





2012年5月18日金曜日

触覚との関係・嗅覚との関係

最近気づいたことがある。
私の手はよく、自分のどこかを触っている。
そして知らないうちに(ふと気づくと)さすったりほぐしたりしている。

特に自宅でくつろいでいるとき
よく触っているのはふくらはぎ、大腿部、こめかみ、耳周り。
こんなこと、少なくとも子供のころはしていなかった。

手は高性能のセンサーである…
とはアロマテラピートリートメントやリフレクソロジーの施術の仕事をして痛感したこと。多くの人の身体に触れる仕事をしているうちに、手のセンサー機能は鍛えられ、意識化しないうちに脳から疲れや冷えや滞留(むくみ)がある部位へと動くのかもしれない。ここ10年以上修行だと思って続けているバスタイムでのオールハンド・セルフボディトリートメントの効果もあるだろう。

幸か不幸か、私はイヤリングやピアス、ネックレスなど直接皮膚に触れるアクセサリーが金属でできている場合、純銀か金を除いて赤く痒くなってしまうことが良くあった。結果布か石か樹脂性のものが多い。指輪もすぐにはずしたくなってしまうし、美しいはずのネイルエナメルも指先が重くなって疲れてしまうので滅多にしない。おかげで…手のセンサー機能は皮膚が荒れない限り邪魔されることはない。

服も着心地とシルエットで決める。
たとえ最初は視覚で魅かれたとしても。
このあたりは嗅覚との関係と同じ。香水を選ぶのに試着なしはあり得ない。
あくまでも自分の感覚が満足するかを重視する。世の中の評判はどうでもよく。

インターネットが普及して服も香水も通販で購入できる時代だが、一度自分の触覚と嗅覚とで確かめたものでない限り、私が欲しいと思うことはない。でも触覚と嗅覚で選んだ服や香水とは長くつきあえているので、選ぶ手間や時間も無駄ではなかったと思う。…そんなわけで、人生の大半を触覚と嗅覚をフルに生かした女性、ヘレン・ケラーの自伝を最近読んでいる。



2012年5月16日水曜日

beautyworld JAPAN で出逢えた最高の笑顔・ジョジアンヌ・ロール

昨日、日本最大の国際総合ビューティー見本市・beautyworld JAPAN
をチェックしてきました。3年前にチェックした時に比べ海外の出展者が様変わりしていることに加え、現代のライフスタイルに溶け込む、全身・全世代向けの美容を考える意識が強まったことを感じる内容でした。

ブースの多さと人の多さ。この情報量の中、白地に紺色のロゴ、ひときわ洗練されたディスプレイとともに素晴らしい笑顔をたたえたブロンドの女性の立ち姿に目が留まりました。パリから来日されたのでしょう。エステティシャンであり、アロマテラピストの第一人者といわれるジョジアンヌ・ロールさん。尊敬の眼差しを向けた私の目とほんの一瞬ジョジアンヌさんの目が出逢ったとき、しっかりと温かい眼差しで見つめ直してくださいました。まさに美しい精神そのもののような瞳。

配られたパンフレットはこちら。
スカルプケア、ヘアケアのラインナップが紹介されています。




すべての年齢の方に髪質を問わず使っていただけるというその内容の天然成分には、海藻成分や様々な植物成分の他、ラベンダー、サイプレス、レモン、ペパーミント、ローズマリー、イランイランなど、アロマテラピーを学び始めた人にも親しみのある精油名も記されています。

私は'90年代後半、ジョジアンヌ・ロールを深く尊敬する美容家の方が経営されるエステティックサロンに勤務していました。そのときにジョジアンヌ・ロールブランドの入浴剤を使用、その発汗作用には感動したものでした。

アロマテラピーの深い知識のみならず、東洋医学(鍼治療や経絡)を学んだ経歴もあるジョジアンヌ・ロールのプレゼンテーションに触れて、私自身もこれまで学んだことをもっと積極的に活用したいという元気をいただいたような気がします。

こちらのサイト には、ジョジアンヌ・ロールの考え方や経歴、その商品についての情報が掲載されています。


2012年5月15日火曜日

豊洲で再会・パリの味

一日中雨の中、永田町〜豊洲からゆりかもめにて東京ビッグサイトへ。
ほぼ4時間立って歩き通しだった私は休憩をもとめてカフェを探しました。

豊洲で有楽町線に乗り換えようと思った時にみつけたのがイートインカフェのあるパン屋さん。コチラ にて紹介されています。

あたたかい珈琲のお供にはたったひとつ、満足感のある甘くないパンが欲しくて、結局選んだのがフィセルにチーズと生ハムとバジルがサンドされたカスクルート。以前私のコチラのブログ でもご紹介したフランスパンのサンドイッチです。

オーガニックの珈琲と共に、小麦のかおり香ばしく心地良い噛みごたえ、しっとりとしたフレッシュなチーズとハムとバジル。学生のころ一時パリで過ごした時期の私のランチといえばほとんどこれでした。懐かしくも美味しくて、すっかり疲れもいやされてしまいました。これからは豊洲に来たらここに寄りたいと思ったほど。
滅多に来ないからこそ、こんな出逢いはうれしいもの。




2012年5月13日日曜日

ブレンドの楽しさ・足し算ではなく掛け算の面白さ

アロマセラピストは、ケースバイケースで人に心地よい香りを提供することを求められます。ちょっと極端な比喩かもしれませんが、調香師が、作品として一人歩きできるようなフレグランスを創造するいわば「服飾デザイナー」的な役割を担っているとするならば、アロマセラピストが担うのは、その時その場でその人に満足感をライブで提供する「料理人」的な役割ではないかと感じています。

かつて私がリゾートホテルのアロマテラピーサロンを監修し、アロマトリートメントのメニューを考案した際も、レストランのメニュー同様に、いかに空間・接客・感覚(香り)体験の順序をスマートに提供できるかということを大切にしました。

人の好みは様々です。複雑です。
誰しもが、ラヴェンダーやローズマリーそれぞれの単一の香りのどれかに心地良さを感じるわけではありません。料理でも同じ。素材そのままストレートで食べるのは抵抗があっても調理によっては美味しいと思っていただける…
香りのブレンド、すなわち香料(精油など)を複数種混ぜ合わせる意味はここにあります。

ブレンド、といってもいきなりたくさんの種類を混ぜてみてもきっと納得できるような結果にはならないでしょう。まずは2種類を等量ずつ混ぜ合わせてその香りが単一のときとどう変わったかを嗅覚で確認していく経験から始めると発見も多く、楽しいです。単一の香料でも濃度によっても香り方はかなり異なってきます。

これまで大学や専門学校で私が行ってきた香りの講義中、香り初心者の学生に紹介したルームフレグランスのうち、等量ずつ2種類ブレンドを2%前後の希釈でつくったものとして例えば…

ラヴェンダー × ローズマリー
ジュニパーベリー × ゼラニウム
カモミールローマン × イランイラン
ネロリ × ローズオットー


上記はいずれもそれぞれ単一香料のみのときよりも多くの学生に好感をもって受け入れられました。まったく別の香りに変わった、とか、どちらか一方の香りを強く感じる、など単なる足し算ではなく掛け算としてのブレンドの可能性を感じてくれるようでした。

まずはこんな実験から。ブレンドの楽しさを感じつつ、香りで日々を快適に過ごしていただきたいと思います。

精油とはちがいますが、同じく芳香(アロマ)が命のコーヒーに関連して
UCC もっとこだわってコーヒーを飲みたい ブレンドについて もブレンドの意味を考える上で参考になるでしょう。


2012年5月12日土曜日

薔薇×柚子のクールな香り

昨年末。あまりに多忙で体調を崩した。普通にものが食べられない日をすごしたとき、過重なタスクの見直しとともに、休息の必要性をその都度感じられる鋭敏な五感をもっと鍛えたいと感じた。

ちょうど昨春、震災直後の体調不良を改善に向かわせてくれた薔薇の香りを、変動めまぐるしいこの春の多忙期も使いたいと思っていた。

2月。
大切に選んだ花をいけるような気持ちで、私はひとつのルームフレグランスを作った。フレッシュなダマスクローズのローズオットーをメインに、ラベンダーなどを合わせながらトップノートにと鮮烈な印象のユズ精油を加えた。

ひと吹きすると、周囲の空気が洗われたように清々しい。

柚子で引き立つ薔薇のクールなみずみずしさは、静かな空間と穏やかな精神によく調和する。もはや柚子の香りの片鱗も、薔薇の甘さもそれほど表面には感じられない。音楽で例えるならば荘厳なピアノの響き。情報量が許容オーバーになる手前で気分をリフレッシュさせながら先のことを冷静に考える状態になれるから有難い。

4月。
夜遅く帰宅するとこの香りが部屋に漂っている。いつのまにか気に入った家人がせっせと使っているらしく、もはやボトルには液体残りわずか。

5月。
同じブレンドで二本目をつくる。希釈ベースのアルコールが落ち着くまで一日は寝かせておく。

これからもしばらくはこの家でこの香りに助けられながら、元気に夏を迎えたい。



2012年5月11日金曜日

朱色の香り・ブルガリ「オムニア コーラル」

今年2月に発売された朱色の香り。
「全て」を表すラテン語のオムニアという名のフレグランスがブルガリから発売されたのは2003年。同一型のボトルでカラーストーンのバリエーションをクリスタリン、アメジスト、グリーンジェイドと展開しての4作目。

南国ムードに満ちたハッピーセンセーション
「ブルガリ」の新作フレグランス「オムニア コーラル」に注目!
の記事には、オムニアシリーズの他の2種の情報とともにコーラルの魅力が紹介されている。

入手していたサンプルを試す。光を帯びて明るくなった朱色のパッケージ。
トップノートからも、まさに柔らかな朱色のイメージを感じる。

南国ムードの眩しい光を受けた赤い果実や花のフレッシュな印象は、徐々にコクのあるミドルのフローラルノートへ。きらめく水面の奥に揺れるヴィヴィッドな珊瑚の美しさ、透明感にあふれた生命のきらめき。そんな視覚イメージが次々とうかぶ。…ここにひと月以上前にこのフレグランスをつけていただいた試香紙がある。すっかりウッデイなラストノートになっているかと思いきや、この透明感をたたえたフルーティーな甘さは何?なんとラストノートに使用されたザクロの陰影だとしたら…なかなか斬新な残香感。

全体的に非常にデリケート。上品な香り方が一貫性を持ちながら肌の温度と溶け合っていくイメージは男女問わずこれからの季節に使えるような気がする。常にシックなスタイルでまとめながらも口紅だけは赤、もしくは肌は年中健康的な小麦色、そしてもしくは身につけるもの一点だけはヴィヴィッドカラー…という趣向の人には特にお勧め。

2012年5月10日木曜日

紫の香り・ジャンヌ・ランバン クチュール オードパルファム

コチラ でもご紹介していたフレグランス。

紫のリボンから想像する、クールで深いまろやかさ。
フレッシュなラズベリーがキュートな印象を持ちながらもなめらかなピオニーや最高級マグノリアの気品あるフローラルに繋がるのか、そしてラストはあくまでもさりげなく柔らかく優しいウッディに包まれるだろうか。


期待どおり。

クールな印象はそのままに。
丁寧に磨かれた植物の香りがまろやかなオーラを描き、一日をともにするとすっかり衣服の一部として溶け込んだ様子。上質な素材感、熟練技術によるディテールがシンプルなスタイルでまとめられた、あくまでもさりげない着こなしに似合う。

3つの抽出法から香らせる自然・「オードゥ イカロス」(シスレー)

今夜何気なく目をとめたこの記事
若いころの肌へとみちびく「シスレイオム」+デイ プロテクター「オールデイ オールイヤー」男のデイリーな日焼け対策、すぐはじめようが、実に興味深いフレグランスの存在を知るきっかけになろうとは…。

まず、日焼け止め、ということで真っ先に私が知りたくなったのは、このアイテムを肌にのせたときの香り。というのも、私は既成の多くの日焼け止め用ローションのニオイが苦手。夏のさなか、香水はつけなくとも日焼け止めはバッチリ使っている人たちが集結する場所で、このニオイで気分が悪くなったことが何度かある。

「シスレー」というブランドのこのアイテムを調べると、まずその価格がドラッグストアレベルからは程遠く高価。しかもフレグランスも扱うフランスのブランドであるから大丈夫だろう…とシスレーの他の関連記事に目を移すと今度はコチラに興味をひかれる。

25年の歳月をかけて開発されたフレグランスとは?
フレグランスの核となるのは、創業者の故郷、コルシカ島原産の低灌木、レンティスク。この葉から水蒸気蒸留法で抽出したレンティスクエキスをトップノートに、揮発性溶剤で抽出したレンティスクアブソリュートをミドルノートに、さらにレンティスクアブソリュートから真空分子蒸留法(?私にとっても初耳な抽出法)で抽出したハート オブ レンティスクをラストノートに調合しているという。

まさに3次元の香り。それぞれの香り方に調和する香料がブレンドされて、一体どのようなハーモニーなのか。近いうちに確認してみたいと思う。レンティスクという植物の葉そのものも知らない私には、この葉の香りの魅力そのものが未知である。
詳しくはコチラ
のページから。


2012年5月8日火曜日

二足歩行と言葉の使用と…嗅覚と

衣食住。
人間文化のより良い未来のために、色々な角度から過去の歴史を振り返ってながめていく。歴史は、今という謎を解く鍵。

突き詰めていくと、自然科学的視点を持たざるを得ない。
人間という生き物の発達の歴史。

榊原洋一『ヒトの発達とは何か』ちくま新書を読み返している。

小児科医の著者が掲げたテーマは深い。

なぜヒトは歩く(二足歩行する)のか
なぜヒトはことばを発するのか

この本については今後も繰り返し読み考えたいので、後日改めて詳しく書きたいと思うが、目を通すうち、ひとつだけ忘れたくない大切なことに気づいたので備忘録としてメモしておきたいと思った。

二足歩行も言葉の使用も、ヒトの嗅覚に影響を及ぼしたと思われる点。

ともに、嗅覚以外の視覚・聴覚を発達させたのではないか。二足歩行により重い大脳を支えることも可能になり、情報処理機能も高まった…としたら嗅覚は退化して良いのだろうか。もし本来嗅覚が担っていた生命保持・種族保存の役割が危機に瀕しているとしたら、改めてこの機能を思い起こし、鍛えたほうがよい…と私は直感。




2012年5月5日土曜日

シャネルの名言から「匂いたつ」人を想像


香水、それこそ一番大事なもの。ポール ヴァレリーの言葉どおり、
お粗末な香水をつけている女性に、未来はないわ
ー ココ シャネル

(TV番組「ディム ダム ドム」で、ジャック シャゾーとのインタビューに答えて。ガイ ヨブ監督1969年)


ティラー・マッツエオ著『シャネルN°5の秘密』の冒頭には上記が記されています。フランスの詩人ポール・ヴァレリーの言葉を引用してこう答えたココ シャネルは当時80才を超えており、このインタビューの翌年には新作香水『シャネルN°19』を発表、その翌年に亡くなっています。

ココ シャネルのこの名言を思い起こしたのは、服飾史家である中野香織さんによるコチラのブログで紹介されている内容。中野さんが「ファッション歳時記」を連載されている「 まんまる」は北日本新聞購読者にしか入手できないようで、早速私は富山の実家に依頼して送ってもらうことに。本日到着し拝読。




日頃から私が香りを纏う上で大切に考えてきたことが、服飾史家の視点からも説得力のある語り口で綴られており、この文章を郷里の多くの方々が読まれたことを嬉しく思います。

中野さんは、まずは中世イタリア貴族が「スプレッツアトゥーラ」(技とは見えない「さりげない技」)と呼んだ言葉を引用、これを着こなしや振る舞いにおける不変の美の基準として挙げられました。新たな出会いの季節を迎える春、そのさりげない美のための強い味方としてフレグランスがあること、素敵な人だったと記憶に残るのは決まって「さりげなく(ほのかに)」香る人であったと綴られています。

そうですね。まさに香りというものは囁くように人の嗅覚に届いてこそ優雅。
鋭敏で繊細な嗅覚を魅了するには、予期せぬ一瞬の微香でも十分なのです。
そしてこのご指摘も重要。


気づかれなかったらソン?いえいえ、何よりも香りは自分に対する意識を変えます。


そうなのです。出掛ける前に何度も鏡を見るのが眼で確認できる自信のためであるとしたら、鼻からも確認してさらにウットリしてください。もちろん、自分の繊細な嗅覚が心地よいと感じる香り方で。
鏡の自分に見惚れるように、自分から不意にふわりと漂う香りにもウットリしてほしい…間違いなくそのときアナタの表情は魅力的なのだから。

内側からの自信が周囲に「匂いたつ」人として映るということを、中野さんの文章から改めて再認識される方も多いことでしょう。

なお、ティラー・マッツエオ著 大間知 知子訳『シャネルN°5の秘密』/原書房 については、昨年私もコチラにてご紹介しています。


2012年5月4日金曜日

正解は本音のなかにあるかも・ファッション誌を振り返る

教えられるよりもまずは感じたい。
何かに強く魅かれるような感じ方をして初めて私は知識を求め、師を探し学び深めてきたと思う。そのプロセスで得てきたものを糧に生きている。

今朝、服飾史家の中野香織さんによるブログ記事
ファッション誌は「聖書」!? を拝読。中野さんが記事のタイトルにつけられた、!と ? の気持ちが私にも生じた背景についてメモしておこうと思う。

紹介されているデイビット・マークス氏のインタビュー記事には、日本のファッション誌の特徴としてその情報量の多さとともに、読者が服の選び方、着方に正解を求めるバイブル的な存在になっていることが挙げられている。

正解を求める心とは?
こうしておけば間違いではない。
恥をかかない。失敗しない。

こういうことだろうか。確かに私も、未体験の文化風習をベースとする公の席で自分のような立場の人間が何をどう着ればよいかについては、周囲に失礼とならないようにと事前に調べたりすることはよくある。そういう状況以外で「決まった正解」なんてあるんだろうかと苦笑。

失敗は成功のもと、という。自分の選択による私服生活に入って以来、トライ&エラーが続く。何が素敵に見えて何がそうでないか。着て行動してみないとわからないこともある。誰が何と言おうと自分が似合っていると自信を持って、背筋をのばし颯爽と歩いていればそれだけで格好よかったりする。(そもそも東京を歩いていて残念に思うのは、どんなにスタイルがよくて素敵なファッションに身を包んでいても姿勢や歩き方が格好よくないケースが多いこと。)

普段の生活の中で、必ずしもファッション誌でなくとも魅かれたビジュアルは切り抜いてファイリングしておく。対象は時代問わず国内外のアート作品も含む。街中ですれ違った人のスタイリングに魅かれたら一瞬でも凝視してそのバランスを記憶にとどめる。これを続けていくと自分が素敵と感じるタイプの傾向がわかってくる。そのうち魅かれる対象の背景を知りたくなってその文化や歴史を調べ始めたりする…自分は昔からこんな調子だったので、そういう視点を大切にファッション誌の台割を企画したことがあったなあ…と思い起こす。20代後半に短期間編集者として関わったイタリアモード誌。文化紹介に力点を置いていたと思う。しかしこの雑誌は当時の日本ではあまり売れず短命であった(苦笑)。 今は存在しない。

7年前から「ファッションとアロマ」という講義で服飾専攻の大学3年生に、香りという見えないイメージからの視覚作品を課しているが、そこに絶対的な正解はないと最初に伝える。様々な香りから刺激を受けながら自分の五感に向き合い、自分なりの「正解」を探しなさい…(正解はアナタの本音の中にあるかも)と。そういう経験も積んだ学生が未来のファッションを切り開いていってほしいと改めて願う。



2012年5月2日水曜日

被服という文化史・「杉本博司 ハダカから被服へ」

ふわふわの毛に覆われた猫をみておもう。
服も着ないでこれほど美しく強い存在とは。

翻って人はといえばハダカではいられない。
何故なのか。改めて考えてみる。
法律上、衛生上、健康上…というのは大前提として
それらの意味を凌駕するのは
まずは羞恥心という自意識。
他者からの防御。
自分は何者であるかの確固たる表現。
逆に
自分の姿を隠すための変身の表現。

あたたかい地域でほとんどハダカで生活できた人間が
被服の文化を身につけたことにより
さまざまな気候風土の環境に適応して生き延びることをおぼえた。
地球上の広範囲で人が生きられるのも
こうした適応のおかげかもしれない。

所変われば食べ物変わる。
食べ物変われば身体が変わる。
身体が変われば服も変わる。
服が変われば行動は変わる。


そんなサイクルを考えた。

きっかけはこの展覧会のニュースにある。
人類の進化と衣服の歴史「杉本博司 ハダカから被服へ」展が開催中

是非観に行きたいと思う。