2013年2月28日木曜日

収穫年の香りを楽しむ・ローズヌーヴォー

ダマスクローズ、という
紀元前の昔から
その香りが愛されたオールドローズの一種。

アロマテラピーを知る人は
この薔薇の天然精油、ローズオットーを思い浮かべる人も多いでしょう。
化粧品や香水に調合される天然香料としても貴重ですし
アロマテラピーを楽しめる精油として紹介される中でも
ひときわ稀少価値が高く高価です。

この香りに私が真底感激したのは2000年暮れのことでした。

精油原液一滴が
私の手元から周囲に自然に揮発していく香りから…
満開の桜を思い浮かべたり
繊細なタッチで紡がれたピアノの響きが聴こえたように感じました。
2000年、その年に収穫されたというローズオットーに出逢った瞬間の衝撃。
ワイルドで華やかで陰影深く、複雑な魅力をもった花の香り。
その夜はぐっすりと深く眠ることができました。

それから9年後。
世界最高品質といわれるブルガリア産ダマスクローズの
ローズオットーの存在に感銘を受けたという方との出逢いから
パレチカ というブランドが誕生しました。

パレチカは
ブルガリアでの収穫年を明示したローズオットー、
フレッシュなローズヌーヴォーの香りを
2009年(ブルガリア日本外交復興50周年)以来
毎年薔薇ファンや香りファンに届けているブランドです。

ローズ・ヌーヴォー と命名したのは、ピアニスト、アキコ・グレースさんとの出会いがきっかけでした。

素敵な時間 はアキコ・グレースさんによる薔薇の香りの音楽表現によってつくられたのです。

それはワインのように 深く華やかに香り、生きたものゆえに毎年違うのです。

ヌーヴォーの香りを聴いて /毎年この感激を共有される方が少しずつ増えています。

現時点で入手し得る
最もフレッシュなローズヌーヴォー、2012年産は
NEWパレチカとして
新しいパッケージで香りを楽しめる小物とともに
4月30日にリニューアルデビュー。
公式サイトはコチラ です。

2013年2月26日火曜日

重低音の余韻香る・ピアノ&太鼓デュオ

今日は乙女座にて満月。
昨晩の素晴らしい音の余韻が
まだまだ身体の奥に響いていて
大好きな香りのラストノートさながらに
私の頭の中で漂っています。

ヒダノ修一 presents
Akiko Grace & ヒダノ修一
Kaleidoscope



一音一音を全身から創り出す
グレースさんとヒダノさん二人のライヴ。
私は昨夏に続き二回目ですが
夏以上に感激しました。

まさに
コチラで書いていた期待以上の特別な時間を体験しました。


数えきれない情景を独特の空気感とともにイメージできた音の連続。

1500年の歴史をもつという和太鼓。
太古の人がこの楽器で求めた音の神秘性。
馬の皮でつくられたというそのしなやかな音は
身体の奥の奥まで響きます。
ヒダノさんの
強弱も速さも残響も自在に操る動きが展開された場所。


きらびやかな高音から
太鼓の重低音と絶妙なハーモニーで絡む官能的な低音を
陰影深く
立体的に奏でたピアニスト、グレースさんのいらした場所。


プログラムより

スペインの熱い空気が喧騒の中から香ってくる
"Madrid Madness"

濁流の水しぶきから、流れが運ぶ樹々の野生的な匂いまで伝わった
"最上川舟唄"

命をかけて戦う騎士の気迫に
燃え立つような翼を拡げて輝く火の鳥が加勢する奇跡のストーリー
"FIRE BIRD"

その他、
お二人の素晴らしい音は
様々な国のさまざまな空気を伝えてくれました。
今回誘ってお連れした方々も大満足。
有難うございました!

2013年2月24日日曜日

『香りとファッションの美学展』と平田幸子氏による講演会

昨日訪れた蔵の街・とちぎ

訪れた目的をこの記事のタイトルに記しました。

まずは展覧会鑑賞です。
『香りとファッションの美学展』開催中・とちぎ蔵の街美術館でご紹介の美術館は、蔵の街大通り沿いの『とちぎ山車会館』の奥にありました。

フランスではかつての城や駅を改修した美術館がありますが、これは200年前に建てられた土蔵3棟が改修され、平成15年(2003年)に開館した美術館です。








漆喰でできた重厚な壁や天井を走る巨大な梁が織りなす空間は
見慣れていたはずのいくつかの香水瓶の新たな魅力を感じさせ
静かに豊かな時間を楽しむことができました。

18世紀から21世紀まで。その社会背景を映す服飾文化やアートが
香水瓶のヴィジュアルからも思い浮かべることができます。
改めてこれだけの香水瓶を眺めつつ、当時のファッション画を
参照すると、そのときごとの時代が求めてきたものがよく感じ
とれるのです。

香水に興味のある人は、そもそも「自分が他人にどう見られるか」
に興味のある人であると思われますが、そうした方々にはもちろん、
人間文化という大きな範囲でとらえた近現代の歴史に興味をもつ
方々にもこの展覧会をお勧めしたいと思います。

さて、栃木を訪れたもう一つの目的はこちらの講演会。
美術館から徒歩2分。道路を渡って斜め右。
小山高専サテライトキャンパスのスタジオ1には
午前中から講演会案内が掲示されていました。




展覧会の監修者でもあり、創刊41年目の "PARFUM" 編集長である
平田幸子氏による講演会。

14:00からの講演会はスタジオ2にて。
蔵の佇まいが生かされた素敵な建物。




講演会はほぼ満席。蔵の街美術館館長も同席されました。

人が紀元前の昔から香りを必要とした歴史背景にはじまり
18世紀のフランス革命後のモードの大衆化にともなう
香水文化の拡がりと変遷が
平田氏の柔かな語りで紡がれていきました。

平田氏によるお話から
人がなぜ香水を必要とするのかを
考えるヒントを得た方も多いのではないでしょうか。
それは服と同じように
防御のためだけではなくコミュニケーションのためでもあること。
他の人とは違う自分を意識することの大切さの現れであること。
そして何よりも
人が心地良く美しくありたいと願う気持ちに
昔も今も、年齢も、性別もなく
これが人にとっての永遠のテーマであることを
改めて思い起こすひとときとなったことでしょう。

2013年2月23日土曜日

蔵の街・とちぎ

栃木市に初訪問。
もう忘れません。
素敵です。

白壁。黒瓦。木枠。
風情あふれる蔵の街。

栃木駅北口からの
蔵の街大通りには魅かれる建物がいくつもありました。
小江戸、
とよばれるのがよくわかります。




何度も振り返ってしまった、白・黒・茶・紺のコントラスト。




こんな瓦屋根の八百屋さん。




とちぎ山車(だし)会館前では清々しい太鼓の音。




本日の目的地の一つはこちらでした。




あまりに風が冷たくて…
お昼の食事はこちらのお蕎麦にしました。
手打ちで美味しいお蕎麦でした。




「路傍の石」で知られる山本有三は栃木市出身。

魅力的な蔵の街。
もっとあたたかいときに
ゆっくりと散策したくなります。

詳しくは栃木市観光協会

蔵の街大通りにあったマロニエ で美味しい珈琲をいただいていたら、地元の方と初対面にもかかわらず気さくに談笑。

この街を訪れた理由は
次の記事で記します。

2013年2月20日水曜日

"Gentlemen Only"(Givenchy) と"Midnight in Paris"(Van Cleef & Arpels)

二つのフレグランスに出逢いました。
デリケートな余韻を大切にされる方からのご紹介。




2013年デビューの"Gentlemen-Only"(Givenchy)
淡い紫色の液体、ヴィジュアルイメージの男性から想像する
爽やかな中にも軽くない余韻が香りからも感じられます。

写真奥のディープブルーのまるいボトルは
2010年デビューの"Midnight in Paris"(Van Cleef & Arpels)
落ち着いた大人の魅力からこぼれるあたたかさや深み。
まさに古き良き時代のパリを彷彿させる、ネーミング通りの香りを感じました。

どちらもフランスのブランド。名前は英語です。
特に"ONLY"の響きは英語ならではと感じました。

2013年2月19日火曜日

桜を待つ・Kisa ragi の香り

香りの専門誌 "PARFUM" 編集長、平田幸子氏による
香りスクール(調香体験)に参加。

私にとってなじみ深い天然香料だけではなく
デリケートで立体的なテクスチュアを感じさせる数種の合成香料を鑑賞し、自由にそれらのイメージを言葉におきかえていくプロセスを楽しみました。
誰かのためではなく、自分のために。

今回忘れられなくなった合成香料は
ふんわりと秘密のぬくもりを漂わせるメチル ディハイドロジャスモナイト
静かな余韻が深く哲学のように沁み渡るようなイソ イー スーパー
水墨画のように凛とした佇まいのガラクソライド。
そして以前から知っていたものの
この時期にはことのほか待ち遠しい
やわらかなクマリンの香り。

エヴァリュエーターである講師の先生がつくられたベースは
さわやかな海風と太陽が良く似合う透明感のある香り。
淡いブルーをイメージさせるその香りに
待ち遠しい花の香りをプラスして
今の気分の香りを自由に作ることができました。




香りを" Kisa ragi "と名付けました。
今の私の気分をそのまま置き換えた、香りの記録です。
しばらくこの香りとともに
桜を待ちたいと思います。

寒さの中にも
ふくらんだ花の蕾からこぼれる春の香りが
空気を少しずつ柔らかく軽やかにしてくれますように。

2013年2月17日日曜日

レンズ豆とレモングラスのスープ

今日からまた新しい一週間がはじまる。

先週食べたものの中で特に記憶に強く残っているのが
レンズ豆とレモングラスのスープ。

オーダー時、まさかこのようなスープであるとは
知らなかった。単なるパンケーキセットについてくる
スープ、としか記されていなかったから。

とある初めて入るカフェ。
店内テイクアウトコーナーに沿って箱入りの野菜たちが並ぶ。
席につくと、かなり大きなカラフェとグラスが運ばれてきた。
思わずなみなみと水をついでしまう。

友人とは結構深刻な話をしていたし
私自身そのときあまり空腹ではなかったから
軽く食べられればいいという程度の気持ちだった。

スープが運ばれておどろく。
その色、名前、ドロリ感。理屈抜きに美味しい。
レモングラスの爽やかな香りが豆の風味に良く合っていて
これはインド料理の定番かもと想像。
なんだかとっても栄養がありそうに身体が感知したらしく
ゆっくりではあったけれど完食。これだけでも満足。
元気になった。

このカフェ。
私は吉祥寺のお店で体験したが
発祥はパリだとか。
東京に3店ある、ローズベーカリー

レンズ豆について調べてみた。

コチラ
によると、やはり栄養価の非常に高いものだった。
タンパク質、鉄分が豊富らしい。まさに私の身体が感じたとおり。
ビタミンB群、ビタミンE、葉酸…すべて大切な栄養素。

水でふやかす必要もなくそのまま料理できるなんて素晴らしい。
煮込み料理に最適でインド料理、イタリア料理、フランス料理ではよく使われるらしい。日本ではほとんど栽培されていないらしいが乾燥豆を信頼できる店で買えば良質なものが入手できそう。ハードな仕事で疲れやすいときには、このレンズ豆のスープをつくって乗り切りたいと思う。


2013年2月16日土曜日

レモンのお祭り・" Fete du citron "は今日から

2月16日。

今日から、フランス南東部の町マントンにて
80回目のレモン祭りが開催とのこと。

Fete du citron

マントン。
現地の人が発音したら、モントン、と聴こえるかもしれません。

イタリア国境に近いらしく
空気も人もイタリアムードが混在していそう。

マントンのレモンはそれはそれは素晴らしい香りだそうです。
上記サイトの中で、とある料理人の男性が絶賛しています。
星形フランスの右下の角にあたるマントンの位置からすると
魚介類もオリーブオイルも美味しそうなので
抜群の香りのレモンで美味しい料理がたくさんつくれそうです。

私の自宅近くでは現在梅まつり開催中で
晴れた日にはふんわりと梅の香りを楽しんでいます。
レモン祭りのある南仏を想像すると
これもまた春が待ち遠しくなる
農業国であり香り文化の国であるフランスの素敵な習慣なのだと
改めて感じます。

マントンにはジャン・コクトー美術館もあります。
いつか訪れてみたい街。


2013年2月14日木曜日

Dr.john's のキシリトールチョコレート

チョット面白いチョコレートその2。


デンタルクリニックにて購入。

アメリカの歯科医プロデュース。
砂糖不使用、オールナチュラルとのことで
「美味しそう」には思えなかったのですが
ドクターによると意外に美味しいとのこと。

ロマンティックに
デコレートされたチョコばかりがひしめく今日…

私はこの一風変わったチョコレートを試すことにしました。
ダークプレーンかダークアーモンドということで
後者を選択。3ピース×4列で43g、180kcal、キシリトール5g。

あっさり軽やか。
砂糖や脂肪分のヘビーな感じは確かに無く
カカオの香りも後味も上品です。
私は食後1列いただいたので1gチョットのキシリトール摂取。

板チョコをついつい一列、二列…と食べてしまいがちな人には
一度勧めてみたいと思いました。

2013年2月13日水曜日

数字で感じるカカオの香り

こんなチョコレートを頂きました。



CACAO CONTENT 37%(ハイミルクチョコレート)
CACAO CONTENT 43%(ミルクチョコレート)
CACAO CONTENT 56%(スイートチョコレート)
CACAO CONTENT 65%(ダークチョコレート)

なるほど。( )のように呼ばれるチョコレートとしての
絶妙なカカオの含有率を1%刻みで研究された成果かも…
と想像すると、この数字は情報として貴重。

カカオビーンズを炒っただけのものを
食した経験からすると
65%のバランスでも十分に甘く
カカオのほろ苦さと酸味が
その上品な甘みに立体感という余韻を残しています。

これは情報とセットで楽しめる
カカオの素敵な香り。
ガーナ産カカオが使用されていました。


2013年2月11日月曜日

真実を求める現代の知性6人の語り・『知の逆転』を読む

ある本を、ぜひとも読みたいと思ったら、そう芽生えたモチベーションそのものがかけがえのない出会いという宝物となる。そういう本は読む時ごとに新たな発見が必ずある。私は本当に読みたい本しか読んだことはない。

年末に発刊のニュースを知り、是非とも読もうと思って入手したのがちょうど一週間前。すでに第3刷目。既に多くの人に読まれていることだろう。私はこの一週間で二度は読んだ。そのせいか本の表紙が浮いてしまう。鮮明ではないが帯つきの表紙の写真を添える。




私がこの本を読もうと思った動機は二つ。
まずはインタビュアーでもある吉成真由美氏の『やわらかな脳のつくりかた』などの著書を過去に数冊愛読し、大切に保管していたという事実。吉成氏自身、アメリカの大学院の心理学部において脳科学を専攻した経歴をもつサイエンスライターである。

「…もしも、膨大な時間と労力をかけ、社会の枠組や時代の圧力にへつらうことなく、目をこらして物事の本質を見きわめようとし、基本となる考え方の踏み台を示してくれるような人がいるのであれば、ぜひその話を聞いてみたい。…4p〜5pより」
これは前書きで吉成氏が記した文章からの引用だが、私もこのモチベーションには共感する。すべて物事は、本質を考えることを忘れてはいけない。

もう一つは、6名のプロフィールを読み、各人の興味に忠実に深く学問を追求した彼らが、吉成氏が投げた問いにどのように答えたかに深く興味をおぼえたことだ。少なくとも過去50年を最前線で走り抜けてきた、生物学・生理学研究者、言語学者、脳神経科医、コンピュータ科学・認知科学者、数学者、分子生物学者。

知の逆転
ジャレド・ダイアモンド、ノーム・チョムスキー、オリバー・サックス、
マービン・ミンスキー、トム・レイトン、ジェームズ・ワトソン
吉成真由美[インタビュー・編]
NHK出版新書


本の概要については上記サイトにて確認できる。

さて、読後に私が感じたことを全て記そうとすれば相当長くなりそうであるし、またこれからも何度も読み返すつもりゆえ、今無理矢理まとめたいとは思わない。

読後第一印象の中で、とりわけ強く記憶に残ったことのうちの一つを綴る。

ノーム・チョムスキーはさすが言語学者である。言語の用い方そのものから鋭い指摘を行う。インタビュアーが「資本主義」という言葉を用いた直後のことだ。そして彼は、質問「特に若い人たちへの推薦図書は?」に対して正直に「わからない」と答え、「一番いいのは、自分で探して、驚くようなこと、予想もしなかったような本を発見するということでしょう」と語る。自分で発見する喜びをどう導くか。「香り」という科学でもあり文化でもあるテーマを大学の講義で学生に提供する私自身の課題を改めて振り返らされ、感慨深い。

" Eternity Summer edition for 2013 "の淡紫に、藤の花の香りを想う

ひと足越えてふた足はやい夏のニュース。

Calvin Klein Fragrances for Summer 2013
02/09/13 03:17:30
By: Sanja Pekic


ここ数年、カルヴァン・クラインの夏限定の香りには魅かれるものも多く、香りとその年の夏の記憶がセットになっています。

2013の" Eternity "レディースの香りでは
まずボトルの色に魅かれました。
淡いむらさきから海のブルーへ。

英文記事の説明によると

ひと気のないビーチのロマンティックな雰囲気を反映させた香り。
海からのそよ風のようなトップノートから優しいウィステリア(藤)の花の香りのハートノート、ホワイトアンバーのベースへと続く…

藤の花。
姿の麗しさに加えて、あのみやびなやさしい香り。
4月から5月の連休のころに通る藤の花の道を思い起こしました。

海風のさわやかさにこの花の香りが続く幸せを想像すると
夏が楽しみに思えます。

さて、藤の花とはどのような香り?

日本でも解析と再現への研究が進められている様子。

コーセー、藤の花の香りの解析と再現に成功
2012年1月25日(日刊工業新聞)


古くから和歌にも多く歌われてきた藤の花。
魅力ある和の香りとして
今を生きる私の記憶の中でも生きています。

2013年2月10日日曜日

梅香に逢いに行く ( 蓮久と月影 )

昨日あたりから
玄関を開けると
かすかにやわらかく甘い香り。

もう見頃かもしれない。
梅香に逢いに行く。



蓮久。
この梅の花は表の色は淡く裏は濃い。
愛らしいかたちそのままの可憐な香り。



空高く力強く伸びて花を育てる木。




月影。
澄み渡る空に凛と。
その青みがかった蕾から
迷うことなく開いたかのような五つの花びら。
グリーンがかった清涼感をともなう清楚な香り。




大気に引き立つ白い光のような姿の艶かしさ。
月影という名は忘れない。


羽根木公園にて。
第36回せたがや梅まつり

薔薇の香りとナイトガード

ここ数日、私は目には見えないストレスから
二つのものに守られている。

ストレス、とは
ある意味そのダメージを現実に受けたと実感して
初めて認識できるものかもしれない。
そのような経験があって初めて
他人のストレスをも想像できるのではないか。

記憶をたどれば
10代の頃から私が特にお世話になった医師は
産婦人科医と歯科医。
10代後半には近親者の大病と自身の進路への悩みという
不安定な心情がホルモンバランスに影響したと想像。
そして20代以降。
強い好奇心とチャレンジ精神が選んだ職歴は
当時の歯科医に指摘され初めて意識した歯への負担を伴った。
睡眠中や真剣に考えているときに強い力でくいしばることが
歯に徐々にダメージを与えるとともに唾液の質も変えていた。

強い緊張と忍耐と体力を三拍子そろって
集中的に発揮させなければならない仕事を受けた後は
必ず歯にダメージを受けていた。

昨年末
こうした教訓から
信頼できる歯科医の指導のもとに
根本的に自分の意識と生活を見直し
睡眠の質とリラクセーションの意味を再考した。
アロマテラピーによるリラクセーションの重要性も
改めて実感した。

その結果
今の私にとってストレスケアに欠かせない二つのものが
明確になる。
とりわけ先月末の深い悲しみを伴う体験とともに
この2週間はこれらの重要性を再認識することになる。

クレンジング、スキンケア、ヘアケア、ボディケア。
これらを全て一本でできるようにと
ローズオットーを希釈したスイートアーモンドオイルの瓶。
自分をいたわる時間を優雅に愛おしく思える薔薇の香り。
そして
上部の歯型に合わせデンタルクリニックでつくってもらった
ナイトガード。
リラックスしているときは口中で歯どうしが触れ合うことは
ないのに、起きているときでもついつい一人考えにふけると
くいしばりがちな私の睡眠中の守り神である。

ストレスが無い人などいない。
ただし、その現れ方は人様々。
個々どのように防御しながら付き合うか、それが大切。
まずは受け止めることから。



2013年2月8日金曜日

「香水瓶」( NHK「美の壺」)再放送と名香 " JE REVIENS "

香水評論家の平田幸子氏が約2年前に出演された番組が
来週2月12日、NHK BSプレミアムにて再放送されます。

コチラ でもご紹介されていますが、NHK「美の壺」2010年2月18日放送内容の再放送です。

その中で平田氏により紹介されるというウォルトの名香 " JE REVIENS "(1932)。
「ジュ ルビアン」と日本で発音されるこの名前の意味はフランス語直訳では「私は再び来ます」ですが、発売当時は「再会」と訳されていたそうです。




上記写真は、平田幸子氏の著書『香水ブランド物語』(株式会社 学習研究社)中の25ページ目。発売当時のラリック作アールデコのボトル写真をご覧いただけます。

私自身にとっても、この香りは忘れられない名香です。
20代半ばから30代にかけて不安多い日々の中
ロマンティックでエレガントな雰囲気と
淡いブルーのミステリアスな面影とともに
優しく私の心に寄り添ってくれた香りでした。
優美な気分だけではなく
この香りと共にいると
不安を乗り越えた穏やかな自信と笑顔が溢れてきたものです。

香りのプロフィールはFRAGRANTICAのコチラにてご覧いただけます。

フローラル アルデハイド。
柔らかく優美に香る香調。
使用されている多くの香料をみて今更ながら納得します。
この香りを愛用した後
アロマテラピーを学ぶ上でより深く知ることとなる天然香料のうち
とりわけ私が強く魅力を感じ癒されたものがこの " JE REVIENS "に
調合されたものの中にもありました。

いまでも、この香りをしっかりと思い起こすだけで
私は優雅な気分に再会することができます。
そんな世界が見事にネーミングとボトルにも表現されています。

2013年2月7日木曜日

春の足音・アキコ・グレース&ヒダノ修一によるピアノ+太鼓

如月。
寒さの中にも
春の香りがかすかになびき
耳をすませば
春風の音が近づいています。

ちょうど3年前の如月、節分の夜。
フレッシュな薔薇の、力強くも繊細な香りを
ピアノで音にしてくださったアキコ・グレースさん。
アロマセラピストである私が、彼女の音に癒された夜でした。

今年の如月は
彼女のピアノと、太鼓のヒダノ修一さんによる
ダイナミックな美音で
ひと足早い春の音を感じられそうです。

2月25日夕刻のそのコンサート情報は
コチラ、アキコ・グレースさんのブログにて
ご覧いただけます。

このお二人のユニットは私も昨夏に体感。
コチラ に綴りました。

ピアノ+太鼓のユニット「Kaleidoscope」は今回で第三弾目。
スタンダード/ブルース、「最上川舟歌~後期コルトレーン風」、
そして今回は、ストラヴィンスキー「火の鳥」(デュオ)、バッハの
「ゴールドベルク変奏曲の主題による即興曲」(ソロ)の新プログラム

今回の内容も魅力的。

ストラヴィンスキー「火の鳥」は、昨年末のコチラにて
音楽を背景に舞台を鑑賞した記憶がまだ新しいですし
バッハの「ゴールドベルク変奏曲の主題による即興曲」といえば
私にとってはかけがえのない音楽の一つとして
昨春コチラにも綴っていました。

きらびやかで繊細な高音はもちろん
グレースさんの左手から生まれる力強い低音は
身体の奥深くに響く太鼓の音とともに
今回もきっと
心地よく明るい春を感じさせてくれることでしょう。

2013年2月6日水曜日

"Mon Nom Est Rouge"・言葉で紡がれた「赤」の香り

「わたしの名は赤」。
そんなタイトルの記事を真紅の薔薇の写真とともに発見。

My Name is Red - Mon Nom Est Rouge
10/25/12 18:19:32
By: Serguey Borisov


いや、正確にいえば数多くの記事のアイコンから、今日の私の目に真っ先に飛び込んできたのが赤い薔薇の写真だった。

赤い薔薇。
4週間前を思い起こす。



撮影のために用意すべき薔薇はピンクのはずだった。
しかし私は
カメラマンはじめスタイリングを行うスタッフ全員が
薔薇の命や力、強さと圧倒的な魅力を感受しながら撮影に臨むには
この真紅の薔薇の存在が現場にどうしても必要と感じ、持ち込んだ。
撮影対象になるかどうかは問題ではなかった。

さて、上記で紹介のインタビュー記事では
"Mon Nom Est Rouge"(フランス語で「私の名は赤」)という
フレグランスが生まれた経緯が語られている。

モチーフとなったのは
トルコ出身のノーベル文学賞受賞作家、オルハン・パムクの代表作
"My Name is Red" 「わたしの名は赤」である。

この作品に魅了され、深くインスパイアされたディレクターは
赤という色、そのものの意味を掘り下げて言語化し、イメージを描き
各香料を原料手段として置き換えられる調香師に嗅覚表現を託す。
このプロセスが実に興味深い。
なぜならば、私が8年前から大学で実践している講義が
香りの言語化、視覚化をテーマとする表現の探求であるから。

上記英文記事から一部をご紹介。(続く「 」は私による要約翻訳)


We decided it is a spiced rose. Rose with a velvety sensation, with a metallic taste of blood from its thorns. Rose Femme Fatale—passionate, attractive and dangerous. Geranium gives a metallic nuance, cardamom and especially cinnamon share their passion and brightness. Rose is not at all tender. Incense, cedar and musk root ground the rose, make her strong and stable…

「赤の表現としてスパイスで香りづけされた薔薇を選択。そのベルベットのような感触、棘による血液の金属的な味、情熱的、魅惑的、そして危険なファム・ファタル(運命の女)。ゼラニウムからは金属的ニュアンスを、カルダモンととりわけシナモンからは情熱的で明るいトーンを。薔薇自体は決して優しいものではなく、シダー、ムスクルートによってその強さと安定感を引き立たせる…」

その他すべて読み応えあり。
香りによる表現を仕事とされている方々には
特にこの文章に続く調香師のコメントを英文で堪能いただきたいと思う。

さて、「赤」の意味。
時を超え文化を超えて、人が普遍的にこの色から思い浮かべるものは何だろうと考えたとき、筆頭に挙がるのはどんな人の身体に流れている血液の色かもしれない。血液は命には無くてはならない必要なもの、あたたかいもの、熱いもの。同時にこの色が少しでも見えるということは危険と警告をも意味する。多面的な抽象概念を言語化し、小説として紡ぐのが文学者であるならば、多くの香料の香りの持つイメージを言語化し、香りとして表現できる調香師は「香りの文学者」である。

私自身はそのような文学者でもなんでもないが、大切な気分と雰囲気を作るために赤い薔薇の力を借りた。生きている人、熱い情熱をもった人にしか達成できない仕事に臨むために。この色から多くの意味を感じとっていたからであったと振り返る。

2013年2月5日火曜日

『香りとファッションの美学展』開催中・とちぎ蔵の街美術館

2月2日より3月31日まで、栃木県栃木市のとちぎ蔵の街美術館において
『香りとファッションの美学展』が開催されています。

香りとファッション。
どちらも、言葉の上ではまさしく抽象的です。
確かな存在感を持ちつつも、見えるようでいて、見えないもの。

確かに言えることは
感受される香りもファッションも実際には
まずは香水瓶やパッケージ、ネーミング、化粧、髪型、服装など、視覚的にとらえられる形で提示されてきたということです。

今回数多くの貴重な香水瓶とともに、20世紀初頭に活躍したポール・ポワレのファッション画(ポーラ文化研究所蔵)も展示されます。同時に鑑賞することには重要な意味があります。

ポール・ポワレ。パリ生まれ。自らのブランドのためにオリジナルの香水を作った初の服飾デザイナー。1911年のことです。この流れに続くのがココ・シャネルでした。(ティラー・マッツエオ著『シャネルN°5の秘密』原書房より)約100年前に端を発するファッションブランドと香水との縁の深さが改めて感じられるでしょう。

展覧会監修者は、香水評論家・香りの専門誌PARFUM編集長の平田幸子氏。
会期中の2月23日午後には、平田氏による講演会も行われます。

■講演会 「時代を象徴する香水瓶とファッション」
講 師:平田 幸子 氏(パルファム編集長)
日 時:2月23日(土) 午後2時より
会 場:小山高専サテライト・キャンパス スタジオ2
※申込不要、入場無料(先着30名)
※参加者には香水専門誌「パルファム」や香水サンプルをプレゼント
(講演会情報は美術館サイトより引用)

香水を中心にファッション、アート、映画等…。時代を反映する美を追い続けてきた創刊40年以上の専門誌の編集長をつとめられた平田氏の視点は貴重です。

とちぎ蔵の街美術館は、およそ200年前に建てられた土蔵を改修し、平成15年3月に開館されたものです。栃木駅からは徒歩15分。江戸時代の名残、歴史的な風情を漂わす蔵の街を散策しながら来館することを私も楽しみにしています。

2013年2月3日日曜日

雪と山と人


生まれ故郷は北陸、富山県です。

東京から上越新幹線で越後湯沢まで行き
北越線に乗り換えて。

越後湯沢は雪の世界。
まるで水墨画のように厳かな佇まい。


直江津、糸魚川を過ぎると
ブルーグレーの日本海。
穏やかな波の動きが遥か遠くまで。

富山に着くと
うっすらと青い空に輝く立山連峰。
その清廉な美しさに思わず何度も立ち止まります。
肉眼での感動は、私のカメラでは再現できず。

父とのお別れの会場近くには
凛と立つ木がありました。


すくすくと枝を伸ばし
すべてが上を向いているようでした。

18才まで過ごしたこの地は
毎冬雪に覆われながらも
毎朝綺麗な山を眺めることができ
あたたかい人たちにまもられていた場所なのだと
改めて感謝の気持ちに浸った3日間でした。