昨日、大学での講義「ファッションとアロマ」9回目として実施した香水鑑賞会。講師である私がこの実施を通して感じたことを少しずつ記録しておこうと思う。
主にファッションブランドから今年発売された香水9点とそのビジュアル資料を鑑賞する機会を提供。資料にはブランド側から発信されたリリースにとどまらず、国内外(今回はフランスの雑誌)の媒体から私がピックアップしたものも含まれる。昨日実際に受講したのは、国際ファッション文化学科のスタイリスト・コーディネーターコース、映画・舞台衣装デザイナーコース、プロデューサー・ジャーナリストコースの3年生約90名。
私からはまず広告用ビジュアル資料のみを見せながらコンセプトやブランドの歴史背景、いわばその香りのコンテクストを解説する。その直後学生には、視覚表現と私の解説から印象に残った表現や事象について記述させながら実際の香りを想像させる時間を設ける。その間私は別室(視聴覚室)にて香水本体とパッケージ、ビジュアル資料とともに、数本の試香紙に各々の香りを吹き付けて放射状にボックスセットする。
もちろん、9点もの香水を一箇所に固めて展示などしない。ある程度の間隔をもたせる。しかも学生にも時間差で誘導。香水の鑑賞方法についても事前に指導する。あくまでも試香紙の香りを一巡して試し、印象に残るものについてのみ、講師が指定したテーマで記述させるレポートを課す。
この一連のメニューを経て提出されたレポートを一読し、私が感じたことその1は、「違いがわかる」とはどういうことかについて。
印象に残ったレポートが二つあった。一つは、ゲランのイディールのボトルがディオールのジャドールに似ているという指摘。展示したのはゲランのみ。ディオールは学生の記憶から。もう一つは、9点の香水のうち、パッケージ&ボトルデザインにピンクを使用したものは4点しかなかったのに「どうしてこう香水の広告はピンクばかりなのか」といった指摘。
確かにイディールのボトルとジャドールのボトルは、上部が細長く底が丸く拡がる形であるという点では共通するかもしれない。だが、実際のボトルを見たり触ったりするとまるで違うものであることのほうを強く感じるものだ。似ているようで全然違うものがある、ということをもっと感じてほしいと実感。
そして、実際はピンクが広告に使われているもの4点以外は、黄色、青、ベージュ、ネイビー、ゴールド、シルバー、赤など様々な色が使用された香水の視覚表現を見せたのであるが、ピンク系が最も強烈な印象だったのか、他のものの色彩表現の違いへの言及が足りないのは残念。
つくづく、人は自分の見たいようにしかものを見ないということに尽きるが、ファッションを専攻し、表現者を目指すのであれば、一見似たようなものの集まりの中にある違いや、自分の第一印象だけでなく、その印象の強弱のコントラストの背景に何があるのかをふと考えてみるような習慣を身につけてもらいたいと感じた。そのためには五感をフル活用させて多くを体験するしかない。しかも他人事的ではなく自分のために。これからの時代、ますます多様化する社会の中で動く空気感を読み取るためにも。
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