2011年11月11日金曜日

内に秘めた女性の幻影・「フェミニテ デュ ボワ/セルジュ・ルタンス」

今から19年前、パリで話題になったフレグランスがありました。
フランスの美容雑誌"VOTRE BEAUTE"1992年11月号にその広告が掲載。


当時、私は香水の記事目当てに数年間この雑誌を購読していたのですが、このページには何度も目が留まりました。しなやかな女性のボディラインとともに浮かび上がる曲線美のフレグランスボトルは印象的。名前は" Féminité du bois "(木のフェミニティ、女性性)。

資生堂で1980年から20年間イメージクリエイターをつとめたセルジュ・ルタンスが資生堂のために創った香りで、当時パリでは発売されたものの、日本では販売されていませんでした。

想像の中の世界でしかありませんが…
私は「木の精」という存在をよく思い描きます。周囲のあらゆる生き物の生を受け入れながら、優雅に、そして時にしたたかに、長い年月を静かにみつめている存在。それはどことなく、しなやかに時の流れをくぐり抜けていく女性性のようでもあります。

2009年春、「フェミニテ・デュ ボワ」は資生堂ザ・ギンザのセルジュ・ルタンスのシリーズに仲間入りしました。フェミニテデュボワ | パルファム セルジュ・ルタンスラインナップ |ザ・ギンザ 。もう日本でも入手できるのです。ボトルは発売当初のものとは異なりますが、香りはまさしく、私が最初に広告ビジュアルを見て想像したものそのものでした。





なめらかなアトラスシダーの温もりは、フルーツや蜂蜜、スパイスの豊かな恵みとともに神秘的な営みが繰り返される森の秘密を香らせます。

11月の初め、私はこのピンクグレイの液体を纏って出掛けてみました。鏡も見ないのに自分が穏やかな表情でいられることに安心し、感じることへの行動にためらいもなく、静かにスムーズに時が流れていきました。特に意識せずして強調しなくても、自分が紛れもなく女性であることを感じられた豊かな時間でした。


ボトルのキャップは光沢のある球形。スプレーとして使用できるアトマイザーもついています。外箱の中には小さく蛇腹に折り畳まれた栞が入っています。セルジュ・ルタンスからのメッセージが10か国語で記されていました。

東洋由来の香料がメインで使われるフレグランスはオリエンタルタイプとも呼ばれます。西欧の人からみると神秘的な魅力として映ったのかもしれません。木の香りからのインスピレーション。西欧人調香師のセルジュ・ルタンスの感覚が第一のフィルターにかけられました。そうした感受性を想定して、20年近く前にすでに日本からヨーロッパの人たちに愛される香りを提供していた資生堂のローカリゼーション発想。ぜひ記憶に刻んでおきたいと思います。

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