まずは気品あふれる鮮やかなピンク色。私はこの色を大切な場面で着た。
そして香り。" Y"(1964) や "Paris"(1983)、…。
さらに、かつて池袋にあったセゾン美術館での展覧会「イヴ・サンローラン モードの革新と栄光」(1990)。
ピンクを、着る色として自分から選ぶことはなかった。サンローランのピンクは祖母に選ばれた。20歳という節目のお祝いに艶やかな紅型の振袖を用意してくれた祖母が、その数年後の私の大切な人生の節目に着て欲しいとあつらえた色がサンローラン・ピンク、まさに薔薇色のスーツ。実は不安で一杯だった気持ちが、この色を着ることで晴れやかになり、優しいシルエットで満たされた。そんなことを思い出したのは、昨日観た映画「イヴ・サンローラン」の中でイヴがファッションで何をしたいかという質問に対してこう語っていたから。
「女性を美しくするだけでなく、その不安を取り除き、自信を持たせてあげたい…」
そして、女性のどんなところが好きかという質問には一言こう答えていた。
「魅力。」
"PARFUM"157号 に、この映画についての「アジアン・ポップス・マガジン」編集長である橋本光恵さんの文章があったことを思い起こし、参照したところ、次のような記述が改めて心に響く。
「彼にとっての創造のミューズであるカトリーヌ・ドヌーヴ…等、大女優たちの映画での輝きに大いに貢献、"ココ・シャネルは女性に自由を与え、サン・ローランは女性に力を与えた"とはよく語られる言葉だが…」
確かにサンローランは女性のエレガントな魅力を美しいシルエットに反映させながら、それまでにはなかった、そしてあり得なかったスタイルを次々に生み出した。ピーコートスタイル、パンタロンスーツ、モンドリアンドレス、シースルードレス等、現代でも愛されているスタイルである。映画によって、その創造の背景に起きていた出来事、流れていた時間を感じることができた。
「オピウム」は1977年発表の香水の名前だが、この香水のCMらしき映像も映画の中で初めて垣間見た。「虜にしてしまう」という魅力のほどがよく伝わる映像。当時中国ではこのアヘンを意味するネーミングにおおいに反発したというが、結局この香りの名前は今も生きている。日本の印籠を思わせるボトルとともに、そのネーミング は印象的。
イヴ・サンローラン。そのブランドの名前を知らなくても、このブランドの服を着たことがないとしても、現代女性の多くは、服を着ること、香りを身につけることで自信を持ち、輝きたいと思っている。不安を取り除き、その時ごとの最高の自分でいるために服を選びたいと。自分では気づけないかもしれない自分の魅力が引き出されるためにも。
映画「イヴ・サンローラン」公式サイトでは彼の72年の生涯を年表で眺めることができる。
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