2013年8月29日木曜日

「君と歩く世界」(原題 : " DE ROUILLE ET D'OS ")が伝える生身のリアリティ

「君と歩く世界」(原題 : " DE ROUILLE ET D'OS ")
両面チラシのうち、公式サイトトップページに使用されている、女性が背負われた写真よりも、私は二人が同じ正面をまっすぐに向いた写真のチラシに魅かれる。



シャチの調教師と格闘家がどんな出逢いをするのかと興味を持った。

浮いた言葉などゼロ。肉体を持つ生身の人間のリアリティ。
言葉は肉体から生まれる。
本来、生きものにとっては頭脳を含めて肉体なのだが
現代、頭脳以外の肉体はどこかおざなりにされている。
そのことを鮮烈に思い起こさせてくれる映画。

映画冒頭、最初のセリフは5才の男の子の "J'ai faim!"(おなかすいた)。
生身の身体は空腹にもなるし、あったはずの身体の一部が無くなれば悲しい。
そして、動く身体があれば使いたいし動かしたい。
男が男にできることを本能的に求めるならば、女も同じ。
感覚が通う全身からの情報が脳に集結し、感情、表情、行動、言葉を生む。

本音は必ずしも言葉になるとは限らない。
表情、行動にまずは現れる。

ラスト間近。
スクリーンの闇の中で、"Je t'aime."(愛してる)の声。
そんな言葉を言いそうにない人物が、誰かに向かって一言だけ。
この言葉の重みも、
原題 "DE ROUILLE ET D'OS" (錆と骨)の意味も
この映画全編を通して初めて響いたと感じた。
格闘家であれば記憶にあるはずの、口の中の味だとか。

4月公開当時に見逃したこの映画を
幸運にも今週見ることができたのは
下高井戸シネマのおかげと感謝。
今週金曜日まで、夕方4時からの上映です。

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