先月、ポスターの絵に目を奪われ、必ず鑑賞したいと思っていたレーピン展。
近代ロシア絵画の巨匠、イリヤ・レーピン(1844~1930)の日本初の本格的回顧展が8/4から10/8まで、東京渋谷のBunkamuraにて開催中。
毎週金土は入館時間が夜20:30までなので本日夕刻、仕事帰りに立ち寄った。
会場に私は2時間近く滞在していたと思う。
一巡したのち、数回は行きつ戻りつ、遠くから近くから鑑賞し、想いにふける。ぜひ多くの人に観ていただき、多くのことを感じてもらいたいと思った。
19世紀のロシアの人々の内面を含めた人間美、寒く厳しい気候風土の中で人としての誇りを持ちながら装われた服装の美。人が集まって独特の空気が漂う臨場感。人が居ない風景画なのに人の痕跡を感じさせる描写。留学先のパリで感銘を受けたという女性の服装、光の表現。激しく苛酷な生き方を強いられた人の表情に浮かぶこの国の歴史背景…「…気がつくと美術はいつもそばにある、…」というような言葉をレーピンが残していたが、この類い稀な感性と技術を持つ画家にとってはまさしく生涯のほとんどがそう感じられたはず。
展覧会ではレーピンの自画像からはじまり、彼の作品の多くを収蔵したモスクワの国立トレチャコフ美術館を開いたトレチャコフを描いた作品でおわる。死の10日前に描かれたという作曲家ムソルグスキーの肖像画や、文豪トルストイの肖像画にもしばらくの間目を奪われたが、なんといっても素晴らしいのは、ポスターにも使われている妻ヴェーラ・レーピナの肖像画である。安らかな寝息が聴こえてきそうな
そのただすまいには多くの人が足をとめていた。
この展覧会は東京展の後、浜松(静岡県)、姫路(兵庫県)、葉山(神奈川県)と巡回する。写真以上にリアルに空気感を伝えるこれらの傑作を、できる限り多くの人が鑑賞されますように。
鑑賞後、なんだかピアノの音が聴きたくなって、松濤にあるタカギクラヴィアカフェ に立ち寄った。まだまだ残暑は厳しいけれど、素晴らしい芸術のおかげで元気になれた。
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