2012年9月21日金曜日

「薔薇は美しく散る」・40年前の出逢い

今年はどうもマリー・アントワネットにちなんだ本や展覧会、映画の話をよく耳にする、と思っていたら、漫画「ベルサイユのばら」が連載開始から40周年とのこと。長いブロンドと切れ長の瞳が凛々しい男装の麗人、オスカル・フランソワの横顔が懐かしい。

本日ちょうど銀座で仕事があり、松屋に立ち寄ったので「ベルサイユのばら展」
を鑑賞。ほとんどが幅広い年齢層の女性。大盛況。

漫画の中の懐かしいカットが物語の流れに沿って大きく展示されていた。その絵は色がないほうが印象的であり、かつ絵そのものよりも、登場人物と空間の境である線の流れ、セリフの表現に目が注がれる。この表現は黒と白の漫画独特の表現。

かつて私はこの、モノクロの世界とセリフに魅かれたのだとわかった。

少女漫画の女性描写にありがちな丸く大きな瞳ではなく、鋭く切れ長の瞳。オスカルの言葉はことごとく厳しく、哲学的であり、この上もなく潔癖。完璧なまでの気高さである。このような物言いに私は強く魅かれたのだろう。

女性に生まれながらここまで自由な心で生きられた、短くも激しく華麗な彼女の生涯に薔薇の花のイメージが重なる。王妃とならぶ主役の薔薇。

なんとこの作品は、国内で宝塚~アニメーションとファンを増やしたばかりか、世界各国で翻訳され、舞台となったフランス本国の翻訳本もあった。原作者の池田理代子さんは2009年にフランス政府からレジオン・ドヌール勲章授与。世界にたいへんな影響力をもたらした「ベルサイユのばら」だが、当初少女漫画に歴史ものはタブー、との逆風があったらしい。池田さんの「マリー・アントワネットを描きたい」という情熱がこの物語を生んだと知る。

あくまでも線で描かれた世界に魅かれたため、私は宝塚のベルばら舞台を鑑賞したことはない。漫画の、イメージを拡げる力は計り知れない。フランスでも漫画は
"des mangas"で通じるほど固有の文化。

ところで、「バラ・ヴェルサイユ」と発音される1960年代発売の香水、"Bal à Versilles"があるが、この名前の意味は「ベルサイユでの舞踏会」。クラシックな華やかさとあたたかなぬくもりが魅力であり、外見の凛々しい麗人、オスカルのような人からこそ、フワリと香ってほしい。あくまでも線で描かれた彼女のイメージで。厳しさは優しさゆえ、と。


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