2012年3月21日水曜日

『日本の名随筆 48 香』再読から感じた香りと音楽の関係

コチラでも紹介している私の論文「薔薇の香りを音楽に…」を読んでくださった方から、香りと音楽の関係についてはこれまで考えたことがなかったけれど面白いテーマ、と嬉しいご感想をいただいた。

香りと音楽が似たような感覚で楽しめるものだということを、私の個人的な印象かと思っていた時期は確かにあった。しかし、20年以上前に読んだこちらの本
日本の名随筆 48 / 塚本邦雄 編 / 香の中にあった一節を不意に思い起こす。

香ひのピアノは、一つ一つキイを叩くごとに、一つ一つ記憶が奏鳴する。

(北原白秋 「香ひの狩猟者」より)

昨日、本棚を探して再読。北原白秋だけではない。
例えば谷川俊太郎は「匂い」という随筆の中で次のように述べている。

…そうした匂いは音楽と同じように、言葉で説明するのが難しいが、私が生きることの味わいを意識して、そこに喜びと一種のさびしさを感ずる時、いつも匂いが私と人生をむすぶひとつの通りみちになっていたように思う。…

他にも、香りを音楽に喩える表現、香りと音楽とを結びつけて表現している文章がいくつか見られ、一気に再読してしまう。
改めて、日本人の香りに対する感じ方の特徴を垣間見たような気がした。

実際、香りと音楽には共通点がある。
・時間の経過によって変化し、その全体像にて印象をとらえるものである。
・空気中に伝わるものであり、強弱、調和、残響(残香)がある。
・同一時間、空間上で複数種を同時鑑賞することはできない。
・記憶と結びつきやすく、見えないだけに、想像力を喚起させる。


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