2012年2月28日火曜日

ペイズリー文様に感じる・人が大切にしたもの

1月にエトロの新フレグランスとともにコチラでご紹介していた展覧会に行ってみた。

ペイズリーに詳しい知識のない私がこの文様に深い興味を持ったのは20代のとき。カシミア、ではないがウールの大判ショールを上半身に纏っての外出中。電車から降りてホームを歩いていると一人のマダム(私より明らかに年上の綺麗な女性だったのでこの呼称が相応しい)に呼び止められてこう言われた。
「とっても素敵な香りをまとっていらっしゃいますね。もしよろしかったら何という名前の香水をおつかいでしょうか、教えていただけませんか。」
ちょっと戸惑う。非常にシンプルなティーローズの香りをショールに吹き付けていただけなのに。今は日本では見かけないが当時は比較的容易に入手できるフレグランスだった。そんなに素敵??きっとこのペイズリー柄の視覚との相乗効果が魔法のように働いたのでは?…

以来、ペイズリー柄のこのショールを宝物のように大切にしている。

カシミアショールがインドからヨーロッパに輸出されたころ、虫喰いの害からショールをまもるために、エキゾチックな香りのパチュリーの葉が一緒に挟まれたというのは有名。パチュリーの香りはオリエンタルな高級衣料のサインともなり、カシミアでもないショールにフランス人がこの香りをつけて高く売ったという話も聴いたことがあった。必ずしもペイズリー柄かどうかはわからないけれど。

さて、展覧会。
ペイズリー文様 発生と展開(文化学園服飾博物館)

まず、「ペイズリー」という言葉は発祥地インドとは関係なく、スコットランドの地名であったことに驚く。ちなみに、「バンダナ」はインド・グジャラートで「絞り染め」を意味する「バンダーニー」に由来するのだという。
ペイズリー文様とは、先端が片方に曲がったしずく形の文様を指す。起源は、インド北部のカシミール地方の可憐な花文様。徐々に様式化し、さらに18世紀に入ってインドの染織品がヨーロッパや周辺地域にもたらされたことで、それぞれの地域に広がる。展示では、起源となったインドの花文様から、ヨーロッパで流行した細長く複雑なデザイン、アジア・アフリカ各地域で取り入れられて独自の解釈が加わったものまで、ペイズリー文様の変遷と地域的な広がりが見られる。

ある地域では、花や葉ではなく、唐辛子がしずく形のモチーフになっていたとされ、疫病が流行したときに唐辛子が役立ったから、と大切な頭部に身につける帽子の柄にされていた。

また、アフリカ地域では、豊穣のしるしとしてナッツや木の実がしずく形のモチーフとして大胆に描かれていた。

人は、人にとって役にたつもの、大切なものを忘れないように柄にして目に焼き付け、後世にも身に付けるもののヴィジュアルとして伝えたかったのではないかとふと感じる時間だった。

展覧会は3/14まで。



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