2011年4月10日日曜日

不意に桜の香り…一瞬のタイムスリップ

良く晴れた日曜。私は早朝から東京の自宅を出発、電車で神奈川、埼玉を通り、ふたたび東京に戻ってきた。電車内から見えるあちこちの桜。今日がこの地域一帯における、この花のピークと感じた。

様々な桜をあれほど見ても感じなかったある衝動に不意打ちされたのは昼下がり、とある小学校の校庭の前を通りかかったときのこと。何本も並んだ大きな桜の木の上で花が今を盛りと咲き誇り、穏やかな風に揺られて少しずつ花びらを舞わせていた。「ああ、綺麗。」と意識するより前に、呼吸とともに届いた感覚は私の脳裏に一つのシーンを描く。




広々とした庭に向けて開け放たれた平屋の木の建物。
幾重もの衣を纏った長い髪の女性。
衣擦れのかすかな音。
ゆっくりとした人の動作。
花びらの流れで見える微風。


想像上の…昔の日本のどこか?
現代の風景ではないと思うのに、なぜ日本と思えるのかはわからない。
いにしえの時代にほんの一瞬、タイムスリップした。
数日前、知人がつぶやいていた歌を思い起こす。

世の中に 絶えて桜のなかりせば 春の心はのどけからまし

この歌は平安時代の歌人、在原業平によるもの。…この世に桜がなかったならばどんなに春の心は穏やかでいられるだろうか、いや、あるからこそこんなにも心が騒ぎ、浮き立つのだろう…。桜の花の満開が花吹雪となってこぼれ落ちるか落ちないかのある一時、ふわりと舞う香りは、こんなふうに平安時代の人の心を騒がせたのだろうか。

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