香水史上、特筆すべき"JOY"。
1914年にフランス人ジャン・パトゥが創設した
ファッションブランド、"JEAN PATOU"によって
世界恐慌の只中にあった1930年にデビューした
英語の名前のフレグランス。
当時、新作候補としての提案がことごとく気に入らないパトゥに対し
調香師は、それまでに研究してきた小瓶を差し出したという。
高価な天然香料をふんだんに使った、市販では非現実的な試作を
「まさかこれは絶対選ばないだろう…」と思いながら。
しかし、パトゥの言葉はこうだった。
「これだ、すばらしい!…これを香水のロールスロイスにするんだ」
この瞬間、デザイナーのサプライズという「歓喜」が
コストの制約を超越した。
"JOY"の発売直前に株式市場崩壊、世界恐慌。
裕福だったアメリカの顧客の大半の経済状勢は悪化。
そのような中パトゥは
バカラクリスタルのボトルに詰められた「世界一高価な香水」を
揃いの服を着た従業員に一軒ずつ顧客の玄関先に届けさせたという。
これは文字どおり「歓喜」を贈ったことになるのではないか。
…このエピソードはこれまでに何度も様々な書物で読んだ。
シャネル5番の誕生秘話もそうであったが
稀少で高価な天然香料、ジャスミンとローズの威力はもちろん、
デザイナーが自身のサプライズに忠実な決断(選択)を行い、
絶妙なタイミングをもってデビューさせる情熱がなかったら
こうした名香は市場に登場し得なかっただろうと感じる。
"JEAN PATOU"誕生100年目目の2013年11月。
ブランドの象徴的存在となった"JOY"の名を冠した新作デビュー。
Jean Patou Launches Joy Forever
09/06/13 15:28:58
By: Elena Knezhevich
Jean Patou launches Joy Forever
(Launches/Relaunches, Fragrance)
"FOREVER"(永遠に)。
現に私はこのニュースを知ってあらためて83年前の"JOY"のことや
"JEAN PATOU"の本国のサイトでそのブランドヒストリーを読み直し
記憶に再度刻みつけようとしている。
"JEAN PATOU"Webサイト中のコチラ や
"JOY" のページ から、誕生から100年目を迎えたブランドの顧客への愛情が感じられて温かい気持ちになった。
参考文献
『フォトグラフィー 香水の歴史』
ロジャ・ダブ著
新間 美也 監修
株式会社 原書房
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