2011年1月5日水曜日

名香

香水は香りの芸術作品、と私は常々思っています。機能をもつものとしてみれば、それは衣服のように身につけるファッションアイテムとしてとらえることもできますが、アートとしてとらえたとき、純粋にその香りを嗅覚から脳への回路を通し「鑑賞」してみるのも楽しいでしょう。まだ自分が生まれていない頃に発売された香水などの場合、香りが調香された時代のイメージが脳裏に浮かんだりして面白いものです。まさにイマジネーションで旅するかのように。

日本人は「香りを聞く」香道という香りの芸道を発展させてきました。6世紀仏教伝来とともに入った香木の文化は、平安時代に貴族の教養としての「薫物」へと発展し、武家社会になると禅宗の影響より一本の沈香を嗜むことから微妙な味わいの違いを愉しみその異同を当てるという「組香」として遊戯化、こうした香の文化が江戸時代に完成され、明治時代に剣道や茶道とともに芸道として残すべきものとして大成されたそうです。…以上は、京都松栄堂12代当主である畑 正高氏監修による、カラー写真満載の「香が語る日本文化史 香千載」(光村推古書院株式会社)を参照しました。

香水評論家の平田幸子氏の著書に「香水ブランド物語」があり、その巻末に「モードの歴史」年表があるので、ちょっとそれを見ながら古いものを幾つかご紹介してみましょう。とりあえず1900年以降のものを。

1919 ミツコ(ゲラン)
1921 シャネルNo.5(シャネル)
1930 ジョイ(ジャン・パトゥ)
1932 ジュ・ルヴィアン(ウォルト)
1933 フルール・ド・ロカイユ(キャロン)
1948 レール・デュタン(ニナ・リッチ)
1959 カボシャール(グレ)
1966 オー・ソヴァージュ(ディオール)

…名香を挙げ始めたらキリがありませんが、エルメス専属調香師のジャン=クロード・エレナ氏は著書の中で、「オー・ソヴァージュ」は男女共用の香水として発売40年経った今でも変わらぬ人気と評しています。

どんな香りが自分に似合うのか、決めるまでに時間の余裕がある人には、こうした名香を試香紙につけてゆっくりとその「香りを聞く」時間を設け、自分なりにイメージを膨らませてみるのも面白いでしょう。その上で最近発売された香水からのイメージを比較すると色々な発見があるはずです。




2 件のコメント:

  1. sawaさま

    お久しぶりです。ブログ拝見させていただきました。大変興味深い記事ばかりですね!

    私は1966年生まれなのですが、オー・ソヴァージュのことを知り、とてもうれしく思いました。早速試しにいってみようと思います。ちなみに今は、アリュールオム・スポルトを使っています。

    最近は、ウッディー系のアロマオイルをアロマバスで使っています。サンダルウッド、ジュニパー、プチグレン、ベチバーなどが、私には合っている気がします。時々、複数のオイルを混ぜてみるのですが、これはなかなか難しいですね。いつか自分にあった香りを作れたらと思っています。

    これからも有意義な記事を楽しみにしています。
    shin.M

    返信削除
  2. Shin.Mさま

    おひさしぶりです。楽しくお読み頂いたようで嬉しく思います。
    同じ誕生年のフレグランスっていうのも縁ですね。ぜひお試しを。

    返信削除