2014年3月27日木曜日

『10皿でわかるフランス料理』から楽しむ地域文化史と香り


日本が北は北海道から南は沖縄まで
異なる地域文化の集まりであるように
フランスもアラブ、スペイン、イタリア、
ドイツ、イギリス、北欧など、
隣接地域の影響を受けながらも独自に発展してきた食文化の集合体。
改めてそのような多様性と可能性を
美味しい料理のなりたちと共に楽しめる本。

著者がオーナーシェフを務める「レストラン・アイ」のページより。
松嶋啓介著「10皿でわかるフランス料理」発売!!


食べることは生きることの基本、ゆえに文化の根幹。
この本を一読した今
深々と回想したこと三点を記録しておきたいと思います。

まずは、著者松嶋氏の食への情熱と探究心が、立場は違えど発酵学・醸造学の専門家である小泉武夫氏の食文化論を彷彿とさせるものであったこと。小泉氏が中学生の頃に憧れて自ら鶏を育ててまでつくろうとしたフォアグラ(『食に知恵あり』p221)がなぜそう簡単には得られないものであったかのか……秘密は、松嶋氏の新刊第二章「ラングドック」に記されています。そのルーツははるかエジプト文明にまで遡るのでした。

次に、第七章「ノルマンディー」で言及されている、"restaurant"(レストラン)という言葉の語源。この本質的な意味を深く理解された松嶋氏ゆえに「レストラン・アイ」なのかと納得しました。料理同様、言語も文化の痕跡です。
私自身はコチラの本で初めて知ったのですが、restaurant(レストラン)とは、1760年代に肉をベースにしたブイヨン・レストラン(体力を回復させるスープ)を出していた店に由来し、この料理名から体力を回復させる場所としての「レストラン」が生まれたのだそうです(『フランス語のはなし』p206)が、まさに食の本質そのものではないかと改めて思います。

第三に、第十章「コルシカ」より
香りをこよなく愛したナポレオンの独創性。
松嶋氏にとってコルシカ島上陸の第一印象は「香り」だったそうですが、それほど様々な植物の香りに満ち溢れたコルシカ島に生まれたナポレオンゆえに、"4711"はここまで愛されたのかもしれないとコチラの写真を回想。おなじみの"4711"ですが、ナポレオンがブーツにさしこんで携帯できるように創らせたという細長いボトルの復刻版だそうです。爽やかな柑橘系のオーデコロン。そういえば、丸かったパンを携帯できるようにバゲットにしたのもナポレオンだったと書かれていた本を読んだ記憶も…。

一冊読み終えて改めて…
先日「レストラン・アイ」でのパーティーのお土産にいただいた、まろやかな香りの保存食に込められた想いが伝わってきました。秘密は第五章「ロワール」に発見。豚肉という食材を地域の香りで美味しく活かす文化。一読位では到底味わえない素敵な本を、これからも時折噛みしめるように読んでいきたいと思います。


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