『今のピアノでショパンは弾けない』
という書名を見て
はっとするようでもあり
安堵するようでもある感覚で
「ごもっとも」と納得しました。
ショパンは2010年に生誕200周年を迎えた人物。
今の人ではありません。
勝手ながら私が連想したのは香りのこと。
「名香と呼ばれている香水を一度ゆっくり鑑賞したい」
とある人から言われ、ずっと引っ掛かっていたのです。
そもそも当時使用できた香料は
現在存在しないか、法的に使用禁止になっているものがあり
たとえ名前が残っていたとしても
実際はいま調達できるもので
現代市場に合わせてつくられていると聞いたことがあるからです。
現代の人にかつての名香も含めて香りの魅力を体感してもらうには
伝える側が
人と香料との出会いに始まる歴史は勿論
可能な限り香料の実態に精通し
伝え方を模索しなければ…とちょうど考えていたところでした。
音楽、ピアノについて語られている本ではありますが
香りを仕事の専門としている私にはまず上記のように響きました。
他ジャンルにおいても、先人の築いてきた価値、魅力について熟考し
これを絶やさず、さらに発展させながら後世に伝え繋げていきたい
という信念をもつ人にはぜひ勧めたい一冊。
6月19日 高木裕「今のピアノでショパンは弾けない」日経プレミアシリーズから発売!
「紀元前から人に愛された薔薇の天然香料の香りの魅力を
現代の音楽家にピアノで表現してもらいたい…」
そんな私の企画が3年前に実現した場所は
まさにこの著者の高木裕さん主宰のタカギクラヴィア松濤サロンでした。
素晴らしい音に圧倒されて涙がこぼれたのは私だけではありません。
『ピアノ・アロマティーク〜アキコ・グレースが奏でるローズ・ヌーヴォーの香り』(2010,2,3 )については、そのときの企画からコンサート実施、アキコ・グレースさんへのインタビューをまとめた私の論文についてコチラ
後半部に記しています。
そのインタビューの中でグレースさんが
ピアノという楽器の魅力について次のようにおっしゃっていました。
「ピアノは豊かな倍音が鳴るので、複雑でオーガニックなニュアンスを表現しやすいですね。音域が広く、10個もの音を同時に鳴らすことができる万能の楽器です。
ローズオットーのように繊細で余韻の深い香りを表現するのに適していると思います。…」
今回、高木裕さんのご著書を一読し、
あらためてこのグレースさんのお言葉を思い起こしています。
グレースさんのような音楽家に出逢えたことはもちろん
こうした楽器の魅力に精通された方による空間で
「香る音」を堪能できたことはまさしく私にとって幸運でした。
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