2014年1月24日金曜日

「香り」の未来を考える〜 Michel Roudnitska 氏の言葉より


未来のことを考えるとき
原点を見つめ直すために時折読み返す本の一つが
『香りの創造』エドモン・ルドニツカ著 /曽田 幸雄訳 (白水社)。
4年前、香りの音楽表現をテーマとする論文を執筆したときも
この本を参考文献としていた。

エドモン・ルドニッカ(Edmon Rondnitska)。1905~1996。
20世紀に活躍した偉大な調香師の一人。

ちょうど今月読みなおしていた矢先。

マグノリアに魅かれてチェックした記事
Magnolia Grandiflora – Michel
01/21/14 18:08:43
By: Jordan River
の中で
ルドニツカ氏のご子息であるミシェルさんも
現在調香師として香りを創造していることを知った。
彼は最初は写真家として、ビジュアルアーティストとしての
表現活動を積み上げた後
40才になって本格的に調香の仕事に取り組んだという。

そんな彼への貴重なインタビュー記事も発見。
彼は過去の人ではない。
父親譲りの繊細な感性、観察力、洞察力をもって
現代に生きるデザイナー、表現者である。
ゆえにこのインタビューでは過去の功績話で終わってはいない。
21世紀の現代
「香り」のマーケットが置かれている深刻な現状を
鋭く簡潔に指摘し、これから成すべき歩みに言及している。
Exclusive Interview with Michel Roudnitska
07/24/09 15:34:05
By: Michelyn Camen

この記事が書かれた2009年は私にとって忘れ難い年。
文化としての香りの価値を伝えるべく
稀少な天然香料の一つであるダマスクローズ香料のブランド、
パレチカの監修をはじめた年でもあった。素材あってのクリエイションの発達、その可能性を現代の解釈で再構成できる感性こそがこの先求められるはずであるし、前世紀に使い放題で枯渇しつつある天然資源と自然環境のサステナビリティを考える上で重要なアプローチになればと考えていた背景があった。

この長い記事の前半、父エドモンさんの弟子でもあったジャン=クロード・エレナ氏(現在エルメスの専属調香師)とミシェルさんとのエピソードも実に興味深い。
調香の修行を積んできたエレナ氏。
一方で幼い頃から父と暮らし様々な香りに触れてきたとはいえ
20代以降写真家や視覚表現におけるキャリアを積んできたミシェルさん。
二人が同時に別々の考え方で調香した香りのクオリティレベルが
二人で互角と認め合えたらしい。
表現者としてのキャリアが確実に活きていたと言えるだろう。

視覚表現、音楽表現それぞれでキャリアを積んだ経験が
調香のクリエイションに活きた例は他にもいくつか知っている。

人は、生きるために呼吸を止めることはできない。
何かを視ているときも周囲の匂いを同時に感じ
耳栓をしていない限り音も感じている。
見えないものを同時に「視て」いる。そして感じる。
三つの感覚が響きあってこそ感じられる。

2年前に書いた記事。
見えなくても確かに存在するもの
この記事後半に記した大学でのアプローチを
今年度まで9期にわたって実験的に行ってきた。
結果、クリエイターを目指す若い彼らによって
未来へと開かれていく「香り」活用の可能性を
私自身が期待しているところでもある。

0 件のコメント:

コメントを投稿