2014年1月29日水曜日

『ディア・ライフ』アリス・マンロー著に出会う

月曜日。
品川の書店で、ふと、あてもなく新刊を探す。
しなければならない仕事が山積みで
直ぐにでも帰宅して取り掛かるべきなのだろうが
こういう時に限って私はまったく仕事とは無関係の世界を覗きたくなる。

目を引いたのは見憶えのあるタッチの植物画。
波多野光さんのイラストが表紙になっている。
赤い帯には「アリス・マンロー」。
そう、この名前を昨年10月にノーベル文学賞受賞者として聞き
亡き父と同じ1931年生まれと知ってから
必ず作品を読んでみたいと思ったのだった。


『ディア・ライフ』アリス・マンロー著 小竹由美子訳 (株)新潮社

6才のころ、母から世界名作全集を与えられたときのように
純粋に「ひとつひとつの物語を読んでみたい」気持ちになった。
何かを学ぶためでもなく、知るためでもなく、感じるために。

短編集。
50ページにも満たない短編が14。
さっそく最初の物語を読んだ。
すぐに次を読もうという気持ちよりも
ぐっと深い余韻から、想像力を刺激され
登場人物の女性のその後を頭の中で映像化するのを楽しみたい気持ちに
数日間浸った。

物語を文章で表現することの創造性に、文章の長さは関係ない。
アリス・マンローが「短編の女王」と呼ばれただけではなく
30代後半から82才に至るまでの彼女の執筆活動に対して
世界的な文学賞がおくられた事実から、あたたかいものを感じた。

ディア・ライフ。
英語教師であった私の父は一年前の今日、まだ生きたかったのに他界した。
彼が終わりを予感したときに"Dear Life."という気持ちになったかどうかは
わからないが、いつ命の終わりがくるのかわからないからこそ、
生きているうちにそんなふうに感じる心を忘れたくないと思った。




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