その情報を処理し行動へと出力しているのは脳。おびただしい数(1兆を超えるともいわれる)の神経細胞を内包する脳の仕組みを知ることは、脳を最大限生かすことにもつながる。
この仕組みを知らずして自分はアタマが悪いなどと決めつけるのは、脳に失礼。生きているかぎり、諦めてはいけない。
私が脳について強く興味を持ち始めたのは、香りを感じる嗅覚のしくみを学んだときから。嗅覚を意識する日々の中で記憶と想像力とが交錯するうちに生まれるヒラメキは、まぎれもなく脳の複雑な仕組みからであろうと推察した。
嗅覚は、生命維持、種族保存に関する本能的な中枢である「大脳辺縁系」に直結し、その情報に基づき、身体の機能調節に必要な指令が発せられるという。
*この大脳辺縁系には、記憶を司る「海馬」がある。約4000万の神経細胞からできている。そして「扁桃体」。アーモンドのような形状で、内臓感覚や五感などのすべての感覚情報が送り込まれ、感覚刺激に対して過去の体験や記憶から自分にとって有益か有害かの価値判断を行う。その判断によって快不快の情動反応を起こす。
嗅覚がこのように重要な部位に直結しているということは、それほど重要な感覚であることを示唆しているように思えてならない。
1999年、私が初めてアロマテラピーの概念を専門学校で指導しはじめたとき、脳についての解説の参考にした良書が発刊された。吉成真由美著『やわらかな脳のつくり方』(新潮社)。今は絶版となっている。吉成さんはアメリカの大学や大学院で脳科学や心理学を学んだサイエンスライター。科学的な内容が平易な表現で説明されていた。
そこで2007年に吉成さんが、脳科学者でアイオワ大学精神医学教室教授であったナンシー・アンドリアセン博士との共著でまとめた本を入手。
ナンシーさんは、脳の画像を用いた、精神疾患、特に統合失調症や脳と心の仕組みの研究の第一人者であり、PTSDの概念を世界で初めて提唱した人物でもあると紹介されている。彼女の他の著書も読んでみたい。
100ページにも満たないこの本には重要なことが書かれていた。まだまだわからないことは多いようだが、日々驚くべき発見と研究が続いているのが脳科学。
アロマテラピーを深く学びたい人は、いずれ必ず脳科学に興味を持つはず。そのときにはぜひこうした本を読んでほしいと思う。
*
『NHK 未来への提言 ナンシー・アンドリアセン 心を探る脳科学』
著者:ナンシー・アンドリアセン+吉成真由美
日本放送出版協会 2007年発行
p15より引用
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