2011年2月1日火曜日

秘めた情熱の香り・ジャスミン・アブソリュート

ジャスミンの小さな白い5枚の花びらが南仏グラースの畑に広がる写真を見たことがあります。一面みどりの葉の中に咲き誇る星型の白い花。明け方近くのまだ暗い闇の中で、この可愛らしい花がまるで星のように白く輝き、芳香を放つ情景を思い浮かべてしまいます。

私は様々な花の香りを好みます。特に好きなものがローズとこの白いジャスミンの香りです。どちらも花香料の双璧であると思います。ローズに関してはWebサイトパレチカの中でその魅力を様々な角度からご紹介しています。薔薇は外観の華やかさから感じられる期待に応えるかのように香りも華やか。一方香料用のジャスミンの花は華やかというよりも清楚で静かな佇まい…その花から熱をかけず丁寧に抽出されたアブソリュートと呼ばれる香料は、うっとりとさせる甘美な陶酔感とともに、どこか妖しくも動物的な匂いをたたえた香りを放ちます。まさに秘めた情熱の香り。

このジャスミン(グランディフォーラム・ジャスミンと呼ばれる種類のもの)はインドが原産地とされ、2000年以上の昔からエジプト、ペルシャ、ローマや中国の人々に愛されていたという記述が、文献*にありました。そしてこの花の栽培と香料抽出が、17世紀以降の南仏グラースの天然香料製造会社の始まりとなったというのです。栽培および抽出技術進展に貢献した農学者や技術者として数名のフランス人の名前が挙げられていました。フランスで磨かれたジャスミン・アブソリュートの抽出技術が現在エジプトやインド、モロッコでも適用されています。

かつて異国で出産した友人が、お土産にとこの香料を私にプレゼントしてくれたことがありました。彼女が産後まもなく、アロマテラピーショップに立ち寄ったとき、なんとなく滅入っていた気分がこの香りを感じているうちに晴れやかになったから、というのです。うっとりとさせるこのジャスミン・アブソリュートの香りは産後のマタニティブルーを払拭したのでしょうか。女性でいることを忘れさせない、まさに歓喜の香りと感じたことを憶えています。



国際香りと文化の会・会報誌 "VENUS"1990 VOL.2より
「神秘的な香料素材1」ミッシュル・デマレー(ルール)氏によるジャスミンについての文章を参考にいたしました。







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