2011年2月3日木曜日

香りのグラデーション・1

これまでよく質問として受けるものの一つは「どうしたらいい感じに空間を香らせられますか?すぐ弱くなってしまうし、気づいてくれない人もいるし。程よく持続性をもって香らせたいんですけど。」というもの。

プライベートルームの中、香りを感じるのが自分1人ならばその都度自分の感じ方に合わせれば良いのですが、こと不特定多数の人が不定期に出入りする空間は確かに、発信側が意図するようにはなかなか感じてもらえないようです。

人の嗅覚は生命を守るための情報キャッチという機能をもつゆえに、急に異種の香りを感じると敏感に察知するものの、その感知は長くは持続しません。自分にとって決定的に危険ではないとわかると、次なるさらに重要な嗅覚情報をキャッチするため、既知の香りは意識しない限りだんだん感じなくなっていくのです。例えば電車の中でこんな経験はありませんか。…ある瞬間に違和感のある匂いを感じたとしても、携帯電話を眺めたり他のことを考えたりしているうちにいつの間にか気にならなくなっていて、今度は別の匂いが気になっていた…等。

こうした感じ方そのものも、人のその時の体調や空間の温度、湿度によっても変わってきますし、出入りする人自体もフレグランスをはじめ、衣服に染み込んだにおい、外気の様々なにおいを運んできます。さらに香り自体も変化します。特に熱源で温めて拡散させる方法は短時間で広範囲に香りを拡げてはくれますが、高温によって香りの質自体の変化が加速される…。

理想的な状態の香りをどのタイミングで感じさせたいかという目的にあわせて、香源の空間配置をデザインしなければなりませんね。季節によっても実験が必要と思われます。

必須なのは空間の入り口に常に一定の質の香源を設置し、空間の外から入ってきた人が明らかにふわりと感じられるようにすること。空間が広くなければ、このエントランスだけでも十分効果的です。かなり広い場合は、人の動線に合わせ一定の距離を空けて数か所に香源を設置します。要するに受け手側からみて、「…ああなんだか、ここは素敵な香りがするなあ、…あ、挨拶しよう…楽しい気分になってきたなあ…あ、またさっきのいい香りがかすかにしてきた、やっぱりいいなあ…」と、最初は強く感じた香りが徐々に弱くなったかと思うとまたある瞬間少し強調される。そんな香りのグラデーションを描けるように。








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