強い生命力を感じさせる、くっきりとした周囲との境界線。
そのようなものを見て私は自分も生きていると感じた。
野村哲也 著『世界の四大花園を行く―砂漠が生み出す奇跡』(中公新書)。
荒涼とした砂漠に花園が出現することがあるという。
雨季とともに別世界となり、まもなく消えて行く。
この本の著者で写真家の野村さんは
南半球の驚くべき花園との出逢いを綴っていく。
ペルーでは甘い香りを振りまく瑠璃色の花「ノラナ・ガイアナ」に心惹かれ
南アフリカでナマクワランドから喜望峰へ全長600キロも続く花園に出逢う。
オーストラリアには自然が作り上げたハート型のリースフラワーに感激。
チリでは、断崖絶壁に咲き誇る深紅の花「ガラ・デ・レオン」に一目惚れ。
まずは写真のみを目で追った私は
文章がなくても十分感激した。
見たこともない花、植物、動物、風景。
多種多様の生き様は圧巻。
文章がまた楽しい。野村さんと共に旅をしているように思えてくる。
私が知りたくなったことはたいてい野村さんが現地の人に尋ねている。
花は雨の気配を巧みに感知するのだろうか。
環境を鋭敏に読み、時を得て咲く。
種は土の中で時を静かに待つ。
限られた命が満開となる一瞬。
だからこそ、砂漠の花園の存在は
生きた私の内側に強い衝撃を与える。
本来ヒトもそうした力を持っているのではないか。
常に変化する環境が生き物にとって厳しいのは当たり前であり
そのような環境からの情報を的確に読める感覚の力が
命をつないできたのであろうし、これからも。
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