2014年4月16日水曜日

ジャン・パトゥ100年目・伝説の3部作は現代にいかによみがえる?

昨日の記事で伝記を紹介したガブリエル・シャネルと
ほぼ同世代のデザイナー、ジャン・パトゥ(1887年生まれ)について
興味深い記事をアメリカのWebサイト "FRAGRANTICA" に発見。

Jean Patou celebrates 100 years with the rebirth of three iconic fragrances
04/14/14 21:01:26 (9 comments)
by: Miguel Matos


写真はそのページ上部を撮影したもので
この男性の名は、Thomas Fontaine、
ジャン・パトゥのインハウスパフューマーとのこと。
彼へのインタビュー記事である。


この英文記事、香水愛好者にはもちろん
クラシックなフレグランスのクオリティを回顧しつつも
現代にふさわしい香りを探求し続けたい人に是非読んでいただきたい。

以下私が興味深く読んだ部分より所感を列記。

創業者ジャン・パトゥもやはりシャネルのN.5には大きな影響を受けたらしい。
彼はブランド初のフレグランスとして、1925年に伝説の3部作をつくった。
その考え方の背景がおもしろい。シャネルのように1種(N.5)のみを発表する
のではなく、自分はあくまでも3種発表したい、1種ではすべての顧客の要望
には応えられないとし、ヴィジュアルイメージを重視。

3種の髪色に合わせるイメージで
ブロンドにフローラルグリーンブーケの"Amour Amour"(恋よ、恋)
ブルネットにフルーティーシプレの"Que Sais-Je?"(何がわかるの?)
レッドヘッドにフローラルでグリーン、ある種ガーデニアタイプともいえる
"Adieu Sagesse(良識よ、さらば)
を提供。
( )内の日本語タイトルは
『フォトグラフィー 香水の歴史 』ロジャ・ダブ著・新間美也監修より

いずれもローズとジャスミンの天然香料は使用されており、
あの世界的に有名な"JOY"の前身であったということだから
3種つくってはみたものの、結局はこの1本、という願いがこめたれた
"JOY"が誕生し、それが3部作よりも有名になっているところが
感慨深い。

往年のファンからの昔のフレグランスのリバイバルへのリクエストは
多いらしく、それにどのように応えるのかという質問に対し
Thomas氏は最大の難関は天然香料への規制であるという。
昔使用できていた香料が、アレルギーの疑いにより
どんどん使用できなくなっており、その規制がどうやら過激なのだそうだ。
全ての植物に万人が問題ないということはない、
だからといって多くの人が問題なく使えるものを全面的に規制してしまうのは
香水文化、の衰退につながるのではと危惧されるほど。


原材料の事情だけではなく
そもそも当時とは社会が違う、時代が違う。
それに伴い人の感じ方も確実に変わっているはず。
ロングセラーのフレグランスとはいえ
ベースとなる特徴は守りつつ
原材料事情も含め現代の空気にあわせて微調整されている
のではないかと思う。

来る9月にジャン・パトゥからは
最新の3部作がデビューするらしい。
初めて創業者がフレグランスを作ろうとしたときに3つの香りが必要だと考えた
その想いを受け継ぎ、これまでの伝説を踏襲した現代版。
なんとなく記事のあの写真のボトル?
という予測が立つが
調香師Thomas氏は
マーケットに無理に合わせるつもりはなく
顧客が好きになってくれたらそれでよい、
好きでない場合その理由がマーケットに合っていないから
などと言われてもそんなことは気にしないという。
いわゆる「ラグジュアリー」でも「ニッチ」でも全くない、
ジャン・パトゥのフレグランスは
特別で非常にエレガントで高い品質をもつ、
それは必然的にタイムレスでクラシックであり
常に現実に身につけられる香りなのだと。
ニッチなものは興味深い香りではあっても
身につけ難いものも見受けられる。
確かに身につけられるということが重要…
(おや、こうした言葉はシャネルもよく言っていたと回想)
そう語る現代の調香師の感覚に期待したいと思う。

改めてブランド誕生から100年目を迎えた
ジャン・パトゥの歴史を
ブランドサイトのコチラのページで振り返ってみたくなった。

100年存続したということは
その事実から、時代に合わせて変化し対応できているという
何よりの証明になる。
その志を揺るがさず次の100年を切り拓かれますように。



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