そんなタイトルの記事を真紅の薔薇の写真とともに発見。
My Name is Red - Mon Nom Est Rouge
10/25/12 18:19:32
By: Serguey Borisov
いや、正確にいえば数多くの記事のアイコンから、今日の私の目に真っ先に飛び込んできたのが赤い薔薇の写真だった。
赤い薔薇。
4週間前を思い起こす。
撮影のために用意すべき薔薇はピンクのはずだった。
しかし私は
カメラマンはじめスタイリングを行うスタッフ全員が
薔薇の命や力、強さと圧倒的な魅力を感受しながら撮影に臨むには
この真紅の薔薇の存在が現場にどうしても必要と感じ、持ち込んだ。
撮影対象になるかどうかは問題ではなかった。
さて、上記で紹介のインタビュー記事では
"Mon Nom Est Rouge"(フランス語で「私の名は赤」)という
フレグランスが生まれた経緯が語られている。
モチーフとなったのは
トルコ出身のノーベル文学賞受賞作家、オルハン・パムクの代表作
"My Name is Red" 「わたしの名は赤」である。
この作品に魅了され、深くインスパイアされたディレクターは
赤という色、そのものの意味を掘り下げて言語化し、イメージを描き
各香料を原料手段として置き換えられる調香師に嗅覚表現を託す。
このプロセスが実に興味深い。
なぜならば、私が8年前から大学で実践している講義が
香りの言語化、視覚化をテーマとする表現の探求であるから。
上記英文記事から一部をご紹介。(続く「 」は私による要約翻訳)
…
We decided it is a spiced rose. Rose with a velvety sensation, with a metallic taste of blood from its thorns. Rose Femme Fatale—passionate, attractive and dangerous. Geranium gives a metallic nuance, cardamom and especially cinnamon share their passion and brightness. Rose is not at all tender. Incense, cedar and musk root ground the rose, make her strong and stable…
「赤の表現としてスパイスで香りづけされた薔薇を選択。そのベルベットのような感触、棘による血液の金属的な味、情熱的、魅惑的、そして危険なファム・ファタル(運命の女)。ゼラニウムからは金属的ニュアンスを、カルダモンととりわけシナモンからは情熱的で明るいトーンを。薔薇自体は決して優しいものではなく、シダー、ムスクルートによってその強さと安定感を引き立たせる…」
その他すべて読み応えあり。
香りによる表現を仕事とされている方々には
特にこの文章に続く調香師のコメントを英文で堪能いただきたいと思う。
さて、「赤」の意味。
時を超え文化を超えて、人が普遍的にこの色から思い浮かべるものは何だろうと考えたとき、筆頭に挙がるのはどんな人の身体に流れている血液の色かもしれない。血液は命には無くてはならない必要なもの、あたたかいもの、熱いもの。同時にこの色が少しでも見えるということは危険と警告をも意味する。多面的な抽象概念を言語化し、小説として紡ぐのが文学者であるならば、多くの香料の香りの持つイメージを言語化し、香りとして表現できる調香師は「香りの文学者」である。
私自身はそのような文学者でもなんでもないが、大切な気分と雰囲気を作るために赤い薔薇の力を借りた。生きている人、熱い情熱をもった人にしか達成できない仕事に臨むために。この色から多くの意味を感じとっていたからであったと振り返る。
0 件のコメント:
コメントを投稿