毎年、梅から少し遅れて蕾から花へ。梅が春告花であるならば、沈丁花は春を囁く花と呼びたい。密やかにすこしずつ、この植物は蕾を膨らませ、花開き、寒い冬を乗り越えてきた命に染み入るような香りで春を囁くのです。
お香で名高い沈香の香りと、丁子(クローブ)が名前の由来のようですが、丁子に関しては、香りに由来、という説と、花のつき方の外観が似ているから、という説と二種類あるようです。花は多数の小さな花の集合体なのです。
植物学名(ラテン語)がまたユニーク。音をカタカナ表記すると、ダフネ・オドラ。ダフネとはギリシャ神話中の登場者で、月桂樹となったニンフ(精霊)のこと。オドラとは、香気ある、という意味です。
香りの印象は人それぞれでしょう。私は、和らいできた空気によく映える、凛としたみずみずしい香りであると思います。まだ寒くても確実に春は来ている、とこの時期に囁く花ありとして多くの人に知っていただきたいと思います。
この花の香りを冒頭で讃えながら始まる名曲として、「春よ、来い」(1994年)
があります。松任谷由実さんの作品です。イントロのピアノの響きはまさに、ひとつひとつの小さな花が香り始める瞬間のようで、心に染み入ります。
…桜の季節へ移る前に、沈丁花の写真が撮れたら添えようと思います。
参考文献:
「香りの歳時記」
諸江辰男 著
東洋経済新報社 刊
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