それは洋服のように
綺麗な状態で、日の当たらないクローゼットのような場所に。
香料が光や酸素や温度で劣化することがわかっているから、
ということもあるけれど
ある日、どんな香りを纏っているのかは
家族にすら秘密にしたい、と私は思う。
これは口紅やアイシャドウも同じ。
お気に入りの何本かは
クローゼットの扉を開けて手の届きやすい所に。
1枚の服だけで日々の装いがつくれないように
1種のフレグランスだけを使うことはできない。
先日鑑賞した映画 "Jeune & Jolie" (2013年フランソワ・オゾン監督)
の中で印象的だったシーンのひとつが
17歳のイザベルと母が共有している化粧室のドレッサー。
鏡の前には数種類のフレグランスが置かれていた。
なんとそのうちの1本は
某ブランドの特徴的なリボンのついたボトルだったので
すぐに何であるかわかってしまったが
奇遇にもその時私が身につけていたものでもあり
記憶に残ってしまった。
邦題『17歳』
のイザベルはさほど服装に凝ってはいない。
いやむしろ、凝っているように見えないところが美しい。
友人同志のパーティーに出掛けるとき
素顔で行こうとしたら、弟のヴィクトールに
「最低限したほうがいいよ」とアドバイスされるほど。
この弟が実に良かった。愛がある。
とはいえ、イザベルは
高校生であるときの自分と、そうではない「女」を創るときとは
服を替える。母のグレーのブラウスを拝借してしまうところが
なんとも愛らしいと思ってしまった。
たとえばフランス人にとって
フレグランスは日常的な必需品ゆえに
ラフにいつでも使えるよう、ドレッサーに置いているのかもしれない。
それはそれで、使いやすくてよいとは思う。
かれらは劣化の心配など無用な位のペースで使い切るだろうから。
遠い昔、私の母が
ドレッサーの上に無造作にフレグランスを置いてくれたおかげで
6歳の私はこの素晴らしいフレグランスというものに出逢えた。
確かに美しいボトルは多いが、飾っておくだけでは意味がない。
中の液体は人とともに香るために創られたのだから。
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