2013年1月4日金曜日

塚田朋子 著 『ファッション・ブランドとデザイナーと呼ばれる戦士たちー西洋服後進国日本の千年ー』と出逢えた理由

漠然と大量の新刊本を一望して出逢えた一冊。

ファッション・ブランドとデザイナーと呼ばれる戦士たち
ー西洋服後進国日本の千年ー
塚田朋子著 同文館出版株式会社


一読してまず思うのは
この本を、「ファッション」や「デザイン」という言葉が冠される職業のみならず、仕事を通して真剣に価値創造に携わっているという意識を持つ人には興味深く読めるのではないかということ。




私がこの本に魅かれた理由は主に3つある。

1,「デザイナーと呼ばれる戦士たち」。このフレーズには深く共感。挑む対象の本質を忘れることなく、過去のアイデアなど蹴散らして、サプライズとハピネスを常に提供するべく前に進むしかない戦士たち。例え時間をかけて磨き上げ生み出したものがそのプロセスなど想像も理解もされないまま日の目をみることもなく埋もれる経験を嫌というほど積み重ねても。

2,著者はマーケティングの専門家、教授である。はしがき第一声で「私は…マーケティングという言葉を嫌うようなファッション業界の…プロの方々に向けて…この本の構想を練りました。…」とある。この直球な挑みを潔く感じた。

3,第1章タイトルに掲げられた二人のデザイナーの名前。三宅一生と川久保玲。
鷲田清一 著『ひとはなぜ服を着るのか』で振り返る「境界を意識した歴史」で紹介した本でも「一枚の布 ー 三宅一生の仕事」、「モードの永久革命 ー 川久保玲の仕事」として大きく取り上げられていた二人。私の記憶には、この二人が「着るものをつくる」という本質を軸に挑戦し続けるデザイナーとして強く残っていた。

千年の歴史の中から著者が拾った120のニュースの中には、現代の様々な現象を裏付ける歴史的背景があり、まさに謎解きさながらの快感を提供してくれる。それは読む人の視点、知識、興味によって様々であるはず。

私にとって読後最も強く印象に残った内容。
それは第3章の終わり5ページの記述にあった。
現代の「ラグジュアリーブランド」システムの遠い祖先ともいえる中世ヨーロッパの「ある事情」に依る仕組み「ギルド」のことが触れてある。そして、日本にはこうした仕組みがなかったかわりにマイスターの精神を「秘すれば花」と文章化した世阿弥がいた、と。

私が2012年の暮れにこの本に出逢えた理由は、初めてフランスを訪れたときに感じた「美」という概念への問題意識に端を発する。その後経験したデザインコンサルティングの仕事、ファッション誌編集者としてミラノを訪れたときの感覚…香りという目に見えないものの価値を伝えるには素材活用の歴史を知ることだと思い至りアロマテラピーを学び、結果香水を含むファッションの領域に関わる仕事に携わっていること。そのようなプロセスなしには、この本を手にとり一分も経たないうちに今の自分にとって必読の書と決断できなかったかもしれない。

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