2011年5月10日火曜日

GUEST & Me…ゲストと私の間に漂う香りのおもてなし


"GUEST & Me" 。ちょっと前から気になっていた香りのプロダクト。身につけるためのフレグランスではありませんが、日々を少しでも心地よくすごすためのラインナップになっています。

身体を洗うための石鹸。清潔になったという確認とともに自分からほのかに優雅な残り香が漂ったら天国気分ですね。

空間を静かに香らせるフレグランスバー。どんな人でも、入ってきたときにさりげなく素敵と感じる薫風を感じるほうが笑顔になれるに決まっています。

大切な睡眠に安心して入れるようにとシーツや枕カバーに使用できるリネンウォーター。いざ寝ようと思ってリネン類が疲れた自分を想像させるようなにおいでは、ひと時の安らぎに浸ろうという気にはなれませんね。清潔で、ドリーミングな芳香がかすかに感じられてこそ。

そして一日のうちで最も頻繁に洗う手。ネイルを華やかに飾るのも良いですが、しなやかな手の動きとともに綺麗な空気が漂ったら、自分だけでなく周囲の人はどんなに幸せでしょうか。私が生まれて初めて香水をつけた場所は手首と指先。親しい人にものを手渡したり、「どうぞ」と示したり。ふっと感じるか感じないかくらいのデリケートさで香りを伝えたかったことを思い返しています。

見えないけれども…。
細かくて小さな香りの分子はいつも人と人との間に浮遊しています。
ゲストは必ずしも外からいらっしゃるお客様だけではありません。大切な家族と自分との間にも洗練された香りを漂わせたいものです。日本人が伽羅をはじめとする香木の香りに抱いた感銘。その心とともに発展した香道の文化が現代のライフスタイルに例えばこのような形で反映されていくとしたら、素敵なことであると思います。

見えないものだけに…。
コピーライター糸井重里氏とデザイナー佐藤卓氏の伝え方、見せ方へのこだわりも感じられます。




2011年5月8日日曜日

香り かぐわしき名宝 展 (Fragranceーthe aroma of the masterpieces)

うっすらとした霧雨の土曜、5月7日。
みどり薫る上野の森を抜けて東京藝術大学大学美術館へ向かいました。




展覧会のポスターに使用されている、夜の梅が匂い立つ日本画は、速水御舟による昭和5年の作品。実物は是非直接会場でご覧の上、馥郁たる香りを想像していただきたいと思います。

香り かぐわしき名宝 展 が開催されてからちょうどひと月目。このような展覧会が、茶道、華道に並ぶ香道という芸道を発展させた日本で初めて開催されるという事実。何故今なのでしょう。私にとってはずっと以前から待ち望んでいた展覧会でした。数多くの芸術家を輩出している東京藝術大学とともに日本経済新聞社が主催であり、さらに1828年創業以来フランス香水文化を築いてきた歴史あるゲラン社が協賛するという背景。ここに、有史以来培われてきた文化における香りの価値を、広く一般に伝える必要性が強調される時期がついに訪れたことを実感します。





595年という、今から1400年以上昔の日本人は淡路島に漂着した「沈水」が芳香を発する香木であることを発見し、宝物として使用しようとする感覚を持っていました。会場では、本物の白檀の木から漂う繊細で雅な香りを体感することもできました。こうしたものの価値を感じる心が以来脈々と受けつがれてきたとすれば素晴らしいことです。

会場の展示を順に鑑賞していくと、いかにそれぞれの時代において人が、特に高い身分の人であればあるほど、人間としての自然を超えて、より良く好ましい状態であろうとしたか、その香りとの付き合い方を通じて感じられるのではないかと思います。そしてそれはまさに文化そのものです。

昨今の日本の香り嗜好について一部では、香りなどない方が良く無臭を好む傾向があるという声もききます。ですが、江戸時代に庶民までもがあれほど香を楽しんでいた様子から考えても、本当に「香り」が嫌われているのではなく、香り方、香りとの距離感に問題があるだけなのかもしれません。視覚や聴覚に偏り過ぎず、五感をバランス良く使う生活を改めて心掛けたいものです。

展示順路では最後に当たる「絵画の香り」。この展示が始まる場所に掲げられていた文章の中に、速水御舟の印象的な言葉が綴られていました。
「芸術の上に常に欲しいと思うのは芳しさです」
そうした芳しさを、この展覧会で多くの方に感じていただきたいと思います。

参考文献:
「香り かぐわしき名宝 展」図録


2011年5月7日土曜日

これから母となる人にも「母の日」を

母の日。
母に感謝をこめてその気持ちを表現する日ということですが、私が昔から母に言われてきたのは「私に何かプレゼントなんていいの。貴女が元気でいてくれることが何より。」そして70才をとうに過ぎた母は今でも何かと言えば「元気でいる?ちょっと美味しいもの見つけたから送るね。」と電話してきて、私がそのお礼とともに喜んでいることを伝える電話を嬉しく思っている様子。

こんな気持ちが最近しみじみとわかるのです。自分も母になったからでしょう。とにかく我が子には元気で大きくなってほしい、ちゃんと生きていけるように丈夫な身体と心をもって、と。もちろん我が子から心のこもった素敵なプレゼントをもらった時も嬉しかったのは事実です。

さて、母といえば子を産んでからも守り育てる苦労はありますが、出産前、自らの体内で育てている約10ヶ月もそれはそれは大変なものです。つわりから食べ物への気遣い、感染症からの防御、重くなる身体を支える足腰のケア…子を守るために自分の身体をまもる日々は、もうすでにこの時から母としての大仕事が始まっていることを自覚することでしょう。

「母の日」は、こうした出産前の女性にも周囲からいたわりと優しさを伝えたいものです。母の喜びを感じる前提には女性としての深い喜びがなくてはなりません。そうした思いにひたって心穏やかに小さな命を育むことができたら…と、昨年臨月の女性にローズオットーの香りの使い方をご紹介したところ、春に嬉しいおたよりを頂きました。
「ローズに癒されて・出産前」…ちょうど5月は薔薇の季節です。





2011年5月6日金曜日

「虹の女神」アヤメに出逢う (J' ai rencontré un iris…)

まるで虹色。虹色の女神?不思議な花に出逢った。
よく見るとアヤメ。





帰宅してから調べたところ、仏和辞典にはアヤメを示す"Iris" と"iris"の二語が続けて記され、小文字で始まる後者が植物名または眼球の虹彩を示す単語であるのに対し、大文字で始まる前者は「虹の女神で神々の使者」という固有名詞であるという。私がこの花から一瞬感じた言葉の通り。

そう言えば、PARFUM157号に、アヤメ科アイリスの香料が使用されたフレグランスの特集ページがあったと想起。そのページを開くとやはり「虹の女神」と記されていた。この見開きページに記されたフレグランスの中には、イリスの花の香りの追求から生まれたプラダ インフュージョン ディリスや、調香師が浮き世という儚い夢の中で咲いているかのようなアイリスに注目したというエルメッセンス・コレクション イリス ウキヨエ、ニューヨーク発のブランドであるルラボによるアイリス39などが紹介されている。

神々の使者…ということから
この花に出逢えたことを、良い知らせと思いたい。




2011年5月5日木曜日

国際香りと文化の会より・6月は在仏調香師による講演会開催

連休中の昨日、国際香りと文化の会から6月講演会の案内が届く。

私はこの会の会員になって7年目。年に数回、興味深い見学会や講演を楽しんでいる。香りの仕事をしている私には貴重な情報源であり、年一度発行されるVENUSもまさに完全保存版。昨年度の薔薇特集号には私も寄稿させていただいた。

今年3月後半にも、ランの専門家による講演会が予定されていたが、東日本大震災の影響が考慮され延期となった。講演会の内容ももちろん楽しみではあったが毎回ここでお会いできる調香師や香料業界の方々との交流も貴重なので、新年度の案内がこんなに早く届いたことは非常に嬉しい。

さて、6月7日の講演演題は二つ。
①「フランス香水事情~香りの嗜好と流行をめぐって~」
講師は新間美也氏(調香師・在パリ)
新間美也氏といえば、1月のブログ「香水のゴールデンルール・読後1」にてご紹介。フランス在住の日本人調香師としての視点から、日仏の嗜好や流行の相違点もお話いただけるだろう。
②「香りの空間演出」
講師は吉武利文氏(香りのデザイン研究所代表・別府大学客員教授)
美術館やプラネタリウム、各種イベントでの香り演出などご経験豊かな吉武氏のお話にも期待。

この講演会は会員向けのものなので、会のWebサイトに掲載の入会案内にそって入会、会員となれば個別に案内が届き申し込むことが可能。香りに関心のある個人、企業を問わず、得られる情報と面白さという価値は十分あると思うのでこの場を借りてお勧めしておきたい。




2011年5月3日火曜日

フランスをひとくち・「3種のベリー、とろけるキャラメル」

美味しいコンフィズリー(フランス語名詞: confiserie 砂糖菓子)を発見。

すでにパッケージの写真から魅かれてしまったのですが、一粒ごとにまるで白いブルーム(果粉)をうっすらまとった摘みたてブルーベリーのような外観が愛らしく、数粒お皿に。





早速口に含んでみると期待的中。まず華やかなラズベリーを中心としたフレーバーが、口溶けと共に他2種のベリーとともに立体的な香りを拡げてくれます。そして…加速度的に溶け始めるキャラメル。ベリーソースとキャラメルクリームのハーモニーが絶妙。

実は昨晩、食後のお茶にと他にケーキも買ってきていたのですが、この一粒ひとくちですっかり満足してしまい、ケーキは本日いただいています。それでもあのベリー&キャラメルの数秒間の芳醇な香りが忘れ難く、また一粒。

「3種のベリー、とろけるキャラメル」はカンロの新製品。「フランスをひとくち」というコピーと共に、「メゾン・ド・コンフィズリー」というフランスの砂糖菓子文化紹介サイトが楽しめるのも魅力です。

砂糖菓子を示すフランス語名詞、confiserieに関連して…。
コンフィ (confit,またはconfite) は、砂糖や酢、油などに漬けた、を示す形容詞。コンフィチュール(confiture)はジャムを示す名詞。それぞれすでにカタカナで日本語に入り込んでいます。フランス語の音で呼ぶと何となく豊かな香りをイメージできそうで…やはり言葉は文化の象徴、と思います。



2011年5月1日日曜日

ギャラリーの魅力・美篶堂ギャラリー

2003年から2010年まで、7年間の美篶堂ギャラリーにおける過去の展示。数えてみると159。おかげで多彩な創り手の方々に出逢うことができ、自由なクリエイティビティに刺激を受けた。日常の中で何気なく見てきたもの、付き合ってきたモノにこんな楽しみ方があったのかと気付かせられること多々。モノだけではなく、今のこの時代の空気を感じながら生きている創り手さんたちとの出逢いがあったことを何よりも嬉しく思う。

同じように、展示された作品を鑑賞できる場所といえば美術館がある。私はパリに滞在していた頃は美術館巡りに大半の時間を費やしたことを記憶している。歴史的遺産ともいえる作品も多く、そこで鑑賞した作品の作者の多くは既に他界していた。一方、ギャラリーという存在を強く意識したのは20代の半ば頃、主に現代ガラス作家の作品を扱うギャラリーで仕事をしたときだった。オーナーの価値観で選んだ作家に直接交渉し、作品だけでなく作家にも可能な限り来日(米国やドイツ等から)してもらい、私も直接彼らと様々な話をした。作品を販売することを前提に展示するギャラリーでは、来廊者に「眺める体験ができて良かった」だけではなく、「欲しいと思える作品に出逢えて良かった」という喜びを提供できる場であることを目指していた。

美篶堂ギャラリーでは、私自身も香りの作品を出展させていただいた。2005年,2007年,2008年のクリスマスプレゼント展において他の創り手の方々の作品と共に。2007年にガラス作家とのコラボレーションを展示できたときの内容を当時のコラム「出展」にも記している。これもひとえに私が最初に作ったアロマキャンドルに関心を寄せてくださったオーナーのおかげ。このギャラリーのおかげで、「温」「凛」「想」「縁」という4種の香りの作品を創り、一部の方々に喜んでいただけた経験も私の宝物そのものであると思う。