2010年11月22日月曜日

香りという衣服

フランス語では「香水を身につける」というときに "porter le parfum" という表現を用いるそうです。"porter" という動詞は、既製服という意味を示す「プレタポルテ」すなわち "prêt-à-porter" にも使用されるように「着る」という意味も含みます。ですから、服を選ぶように香水を選ぶ、と考えるとよいと思います。

服を選ぶとき、自分に似合うもの、自分の魅力を引き立ててくれるものをと思います。自分の外観の特徴を知り、それを生かしてどう見せたいのかと考えます。そして、それをいつ、どんな場所で着るのか、誰と会うのか、そのシチュエーションの中で自分はどういう存在でありたいのか。ここまで考えて服は選択されます。さらに着方にもひと工夫したりします。

自分が好感をもつことができ、自分の描くイメージにも合う。そんな香水を探すためには服と同じく試着が必要です。香水自体のコンセプトやイメージヴィジュアルなどからもある程度、自分との相性は想像できるかもしれませんが、リアルに自身の鼻で香りの時間経過による変化を確認し、手首など自分の肌につけた状態の香り方を試してみないと実感できないかもしれません。
嗅覚は体調にも大きく左右されますから風邪をひいている時は避けて…と気分の良い五感のシャープな時がベストです。

さらに大切なこと。特に東京のように人口の密集したところでは強く香らせすぎてはマイナス効果。これでどれだけ多くの日本の人が香水をネガティブにとらえていることでしょう。鼻から近い部分は避けて、ウエストから下の脈打つところ、手首など体温の高いところに少量を纏ってみます。じっとしているときは香りが主張を控えていますが、ふと立ち上がったり歩いたときにふわりと下から上に立ちのぼるのです。そんなふうに香水を香らせる「着こなし」の人がもっと増えると素敵です。

視覚情報が圧倒的とはいえ、人は他人のイメージを他の感覚と共にとらえます。何かが強すぎてもそれは違和感となりますが、五感に程良く届く情報は無意識のうちに好感をもってとらえるように思います。シャワーで清潔に整えた身体でも、一歩外気に触れたら好ましくない様々なにおいの空気にさらされ、不本意なにおい分子にまとわりつかれ、自分自身の体臭も変化するのです。そんな中でも、香りという衣服で自分のオーラを保つことができるなら…たとえ鏡を見なくても自分に自信が持てるでしょう。

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