最近よく思います。楽器になりたいと。私の身体が楽器になってそのときどきの雰囲気に合った音色とリズムと音量で鳴ってくれたら楽しいなと。実際に音が鳴らなくても脳に記憶されたメロディやリズムは、私の内部でちゃんと再生されます。14才、学校の課題のためにピアノでつくった曲。22才、バンドで自分が歌うために鼻歌とキーボードでつくった曲。ある時ちょっと思い出したなあと追想してみたらフルで憶えていて自分でもビックリ。あまりに素直なメロディラインなので、今の私ならこんなアレンジするかな、などと一人静かに頭の中で音を再生しています。
この楽しみは香りに対しても同じでした。自分でつくった香りだけでなく、かつて長く愛用したフレグランスの香りもしっかりと記憶に刻まれています。あの香り…と思い起こすだけで心地よくなれることもあります。念じることで実際に香りを発散させることはできなくても、その香りによって得られた気分と笑顔は確実に再生できます。
そんなことを思いながら昨夜聴いたジャズ。2月に開催したコンサートで薔薇の香りをピアノで音楽表現してくださったアキコ・グレースさんが、今年のローズ・ヌーヴォーの香りを音にしてみたくなった…とブログで表明直後のライヴです。今回はベースとドラムスとのトリオ。光のように駆け巡るピアノの音に、大地の底から命が共鳴するかのように調和するベースの響き、風がそよいでいくかのようなドラムスの流れ。そんな中でグレースさんが、"エッジのきいた" 今年のローズの香りのきらめきを演奏されました。ベースやドラムスの音とともに、繊細で複雑なこの花の香りが私の内側に再生されてくるのを感じた夜でした。
楽器になりたいと思ったのは、こういうことだったのかもしれません。
身体の中に香りと音楽。いつまでも。
参考情報:
ピアニスト、アキコ・グレースさんブログより
「鍵盤とローズオットー」
「ローズ・ヌーヴォーとピアノ」
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