私が生まれて初めて海外を訪れ、生活したのは大学3年の冬から春。1人で飛行機に乗り、南回りの航路でパリに向かいました。
大学で専攻したフランス語を使ってみたい、実際に生活してフランスを知りたいという気持ちがありました。ステイ先はフランス語しか話せないマダムの住むマンション。
午前は語学学校、午後はフリーでしたから美術館巡りと街の散策に明け暮れていました。一度だけ学校の選択受講で午後にパリ郊外の香水工場を見学したこともあります。パコ・ラバンヌというブランドの工場です。大好きな香水がこんなにも工業化されたシステムで作られていることに驚いたことも憶えています。
パリでの生活で印象的なことの一つに食生活があります。断然美味しいと思ったのはパンです。"pain"というのはまさにフランス語。小麦の香りでしょうか、パリッとした香ばしさと噛みごたえが魅力です。ランチといえば、大概ハムやチーズが挟まれたバゲットサンドイッチを食べていましたが飽きませんでした。
朝食はセルフサービス。マダムは姿を見せません。食卓にあるフルーツ、パン、シリアルと冷蔵庫にある飲み物、ヨーグルト、チーズ、コンフィチュール(ジャム)を自由に食してよいのです。フランス語で朝食のことを"petit-déjeuner" といい、直訳すると「ちょっとした食事」ですがまさにそんな感じです。目がさめたばかりでフルーツだけでいいという人もいれば、ミルクとシリアルという人もいました。私はせっかくなのでパンかシリアルにフルーツ、ミルクかヨーグルト、など日替りで楽しんでいました。パンやシリアルの種類の豊富さにも驚いたものです。夕食はマダムの手料理です。野菜と肉が煮込んであることもあれば焼いてあることも多く、味付けもそれほど濃くはなく、と私は恵まれていたのかもしれませんが、違和感なく頂いていました。一度だけ驚いたのは米のプディングが出されたときです。長い米粒でしたから日本の米のタイプではなく
それが甘いフルーツのシロップで煮固められていたのでした。甘い米?とは思いましたが食べてみるとお菓子のようなものと受け入れることができました。
外食で最も印象的だったのはクスクスという粒状パスタをスープにたっぷりかけて頂く料理。ごろごろとした野菜とスープの味が優しくておなかいっぱいになりました。
小麦を生かしたパン、ふんだんな野菜とフルーツや乳製品からイメージできたのは農業国フランスならではの食文化でした。朝食の形式の合理性もフランス人らしいなと思います。この形式は私自身が現在の生活で取り入れることもあります。私がいなくても、わざわざ起きなくても家人が自分のお腹の具合に合わせてセルフサービスで食べられるようにしておくのです。朝は調理する時間がない、または調理の匂いを身体につけたくない、そんなニーズにもかなっています。記憶がうすれないうちに、これからも私の異国体験をすこしずつ綴っていきたいと思っています。
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