2018年12月28日金曜日

〜ばら色の京都 あま色の東京 『暮しの手帖』新編集長、大いにあわてる〜を読む





…雑誌には匂いがある。これに弱い。雰囲気という意味ではない、物理的な匂い。新しい紙やインクの立ち上がってくる香りです。本や雑誌を買うとついくんくん嗅いでしまいます。…( I  京都、そして暮しの手帖社へ ・「このかぐわしき」 p59末尾の文章より引用 )


ハイ、わかります。印刷物特有の匂いがあるのですね。それが出版社の選んだ紙質等々とあいまって絶妙に独特な香りとなるのです。私が小学生時代の1970年代後半に母が定期購読していた『暮しの手帖』や『きょうの料理』にはそれぞれ違った匂いがあり、以来あらゆる雑誌は紙の触り心地や匂いと共に私の記憶にありました。





〜ばら色の京都 あま色の東京  『暮しの手帖』新編集長、大いにあわてる〜

https://www.php.co.jp/books/detail.php?isbn=978-4-569-84177-9


長いタイトルです。しかし、このひらがなと漢字の混じった一続きのフレーズが著者の心情を表現しているのですから、噛み締めるように何度か呟きながらこの本を数日かけて一読しました…ああ、だからひらがなの「ばら色」と「あま色」なのですね。



著者の澤田康彦さんは1946年創刊の『暮しの手帖』現編集長です。私の母校、上智大学外国語学部フランス語学科の先輩でもいらっしゃいます。つい二ヶ月半ほど前、上智大学でお会いしました。フランス語学科同窓会主催の年に一度の勉強会講師としていらしたのです。ご講演タイトルは、~『暮しの手帖』というタイムマシン~。


澤田さんのキレのよい淡々とした語り口が今も忘れられません。ユーモアたっぷりに、ご自身の歴史と『暮しの手帖』の歴史をタイムマシンに乗っているかのような旅人感覚で語ってくださいました。そのお話の中で、12月後半に新しいご著書が発刊されるとおっしゃっていたので楽しみにお待ちしていたのでした。



さて、この御本ですが、私は初めは真面目に最初から順に読みましたが、考えてみれば唐突に開いたどのページから読んでも楽しいのです。澤田さんご自身もそんなようなことを記されていました。なんといってもリズムにキレがあるテンポの良さ。まるで俳句か短歌のようです。


日本語の語感を五感で楽しむ、とはこういうことでしょうか。聴いたことのない人の声、美味しそうな料理のにおい、ぎゅっと握ったり抱きしめた手の感触… 言葉で喚起される遠い記憶。最初に読んで爆笑、当分忘れそうにないフレーズも多々。何度も読み直して楽しみたいです。



東京にて、sawaroma より。



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