2013年9月30日月曜日

秋の空・金木犀・JEAN PATOU の"1000"

爽やかな風が描く秋の空。



この空に香り立つ
金木犀の清々しさは
秋の喜びそのもの。

金木犀。オスマンサス。
この花の香りが生かされた名香が
JEAN PATOU の "1000"(1972年)。

JEAN PATOU 公式Webサイト "timeline" のページ中
1972年のところにこの香りのことが記されています。
調香師はジャン・ケルレオ。
エキゾティックで洗練されたこの香りには
稀少な花々…ブルガリアのローズ、グラースのジャスミン、そして
中国のオスマンサス(金木犀)が調合されています。

2013年9月29日日曜日

国宝 興福寺仏頭展 / 東京藝術大学大学美術館、そして根津神社

千代田線根津駅から徒歩10分。


国宝 興福寺仏頭展 / 東京藝術大学大学美術館 。実物に対面したときの清々しさと安らぎは素晴らしく、千年以上も前にこのような人物が存在したかと想像するだけでも厳かな気持ちになりました。
この銅造仏頭に辿り着くまでの空間には
木造十二神将がいきいきとした立ち姿で展示されており
そのどれもが、様々な角度からじっくりと眺めたくなる躍動感に満ちており
当時の人間の心映えの豊かさが伝わってきます。

像も素晴らしいものでしたが
最初に見た、文字がびっしりと書かれた巻物の美しさも忘れられません。




さて、美術館を出て谷中へ。
このように大きなヒマラヤ杉に出会いました。




根津神社 裏門をくぐると爽やかな金木犀の香りに迎えられ、乙女稲荷の紅い鳥居をくぐり、秋の夕暮れの一時を過ごしました。

2013年9月28日土曜日

カイユボット展/ブリヂストン美術館にて10月10日より

来月以降の美術展情報をチェック。

カイユボット展/ブリヂストン美術館
10月10日から12月29日まで。

世界各地から集められたギュスターヴ・カイユボットの代表作。
いまだ知られざるこの画家の全貌を日本、
そしてアジアで初めて紹介する展覧会とのこと。

展覧会Webサイトのトップの作品『ヨーロッパ橋』を見て
これは実物を是非鑑賞したいと感じました。
近代の大きな変化の只中にあった19世紀後半。
当時のパリの空気感が伝わってくるようです。
当時パリを象徴すると言われたらしきサン=ラザール駅に
架かる橋、ヨーロッパ橋。
駅を見下ろす男性と、散歩を優雅に楽しむカップルとは
その装いから階級の違いがうかがえます。

どことなくこの画家の作品は
映画の1シーンのようでもあります。
印象派の特徴をたたえた光の表現とともに
写真を彷彿とさせる写実性も併せ持つ新鮮な魅力。

ギュスターヴ・カイユボットという人は
モネ、ルノワール、ドガらとともに
印象派の興隆を支えた同派を代表する画家。
裕福な生まれである背景から
印象派の画家たちの作品を買い取りその活動を支えたそうです。
その収集のおかげで
多くの優れた作品が後にオルセー美術館に収蔵されることになり
約100年後、大学生当時の私もパリで鑑賞することができたわけです。

印象派では女性美が描かれた作品も多いですが
カイユボットのテーマは広く、当時の人、風景、社会が
じわじわと感じられそうで楽しみです。

2013年9月27日金曜日

生地の触感を香りに(2)・ETOFFES DE PARFUM par JARDIN DE FRANCE


生地の触感を香りに(1)・ETOFFES DE PARFUM par JARDIN DE FRANCEに引き続き、同じシリーズのレディス3種の香りを試してみました。



右から。
まずは"Cœur de Velours"。
cœur は心(心臓)、 veloursはベルベットを示しますから
これを「ベルベットの感触」と名付けてみます。
滑らかで暖かで幸せにみちた温もりを期待。
トップノートから花です…。フランジパニとオレンジ花。
ミドルに甘美な喜びを醸し出すジャスミンに
艶やかな柔らかさを彷彿とさせるヘリオトロープ。
アンバー、パチュリ、ホワイトムスクのぬくもり。

中央。
"Soie Sage"。
soie は絹、sageは賢い、おとなしい、慎みのある、等を示します。
「絹の品格」と名付けてみます。
真っ先にバラを思い浮かべたのですがまさに使われていました!
確かに穏やかな上品さが感じられる香り。
女性の香りのタイプの王道の一つでしょう。
繊細なバラとパウダリーなすみれ。そのデリケートな存在感を
トップノートのベルガモット、ピンクペッパー、フランボワーズや
甘美なジャスミンが引きたてて…柔らかなムスクに包まれていきます。


そして左端。
" Tentation Dentelle" 。
tentation は誘惑、dentelleはレース。
繊細で可憐な愛らしさの中に見え隠れする妖艶な魅力。
ベルガモットとプルーンの明るい華やぎから始まるこの香りは
漆黒の夜に香気を漂わせるミステリアスなチュベローズやジャスミン、
そしてローズの清楚さとともに陰影深く高まります。ラストノートが
見事なまろやかさ。上質なパチュリーとインセンスの余韻が素敵。

昨日ちょうど私は
青のレーシィなブラウスを白のインナーの上に重ね
その青と白の間にほんの一滴、この香りを纏いました。
ささやかな仕草のたびに
可憐にエレガントに
レースの動きに共鳴して囁くように香り
鏡で確認しなくても笑顔の明るさに自信がもてたのでした。

JARDIN DE FRANCE 。1920年、生まれはフランス、アンボワーズ。

ETOFFES DE PARFUM
オートクチュールに使用される様々なファブリック(生地)。
触覚が捉えた肌触り、質感にインスパイアされた創られた
ツイード、レザー、絹、ベルベット、レース、計5種の香り。

2013年9月25日水曜日

生地の触感を香りに(1)・ETOFFES DE PARFUM par JARDIN DE FRANCE

パリ在住の調香師の方からお土産にと
JARDIN DE FRANCE の香りサンプルをいただきました。

JARDIN DE FRANCE。1920年、生まれはアンボワーズにて。
フランス中部、ロワール川沿いにある街。

ETOFFES DE PARFUM(香りのファブリックシリーズ)がユニークなので丁寧に試してみたいと思います。

このシリーズ、5種類あります。
サンプルパッケージを開けると
5種類の生地に包まれたスタイルのシルエットとともにこんなフレーズ。

"Mêler le sens du toucher à celui de l'odorat"
( 触覚を嗅覚に混ぜ合わせる)

オートクチュールに使用される様々なファブリック(生地)。
触覚が捉えた肌触り、質感にインスパイアされた香り。
まずはメンズの2種類から。



右側。アーバン・ツイード。
何とも甘く暖かいトップノートがフルーティー。
焼きリンゴ、レモン、プラムの芳醇な組み合わせでした。
焼きリンゴ!!まずはこの発想に驚きです。
トップノートを受けてフレッシュな海風のような清々しさ、
緑の陰影、樹木の深みへと流れる香り。
女性でも使ってみたいと思う方が多いはず。

左側。デュー ア キュイー
(直訳では「皮によく馴染む」という感じ。
一方、"dur à cuire"で「したたかな」という意味もあるらしい)
胡椒、柚子、グレープフルーツの鮮烈なインパクトが
ヴァイオレットリーフに滑らかさからスパイシーでウッディな香りへ。
その中で上質な皮の質感が綺麗に浮き彫りになっています。
これはやはり
明るく軽快な魅力とともに
皮をエレガントに着こなす男性の香りです。


2013年9月23日月曜日

シナノドルチェ・みずみずしく芳醇な今だけのリンゴ

早生種「つがる」に続き
9月後半に旬の品種、シナノドルチェ。


「つがる」とは全く違います。
ちょっと大ぶりで硬く、重量感があります。
なんとなくタテに長め。


いろいろなリンゴを見てきましたが
これは格別愛らしい、と感じたのは
色付き方なのか、窪み方なのか…。

信州ギフト シナノドルチェ によると、これは長野県生まれの信州オリジナルリンゴで、「シナノ ドルチェ」命名は、前長野県知事の田中康夫氏によるものだそうです。

たしかに「ドルチェ」。
同じく「甘い」を示す英語「スイート」とのイメージの違いは
芳醇な香りとともに爽やかな触感をもつ複雑さでしょうか。

酸味が「つがる」よりもハッキリと感じられ、
シャキシャキした噛み応え。
噛むたびにジュワッとあふれるジューシィな甘さがたまりません。
懐かしいリンゴ本来のフルーティー感のその奥に
桃やバラのようなさまざまな愛おしい香りがかすめていきました。

「リンゴノキモチ」研究日誌 険しきアップルファーマーへの道のり
シナノドルチェ
のように、大切に育ててくださる方に感謝。

来月は紅玉の季節。

2013年9月21日土曜日

香りの専門誌 "PARFUM" 167号(秋号)発刊

まもなく秋分の日。
香りの専門誌 "PARFUM" 秋号が発刊されました。



表紙を開けると
見開きに紫のボトルの新作フレグランスニュース。
「パルファム プリーツ プリーズ イッセイ ミヤケ オードパルファム」は
この9月に発売されたばかり。5日前に入手したこの香りの試香紙が
今も柔らかくまろやかなラストノートをたたえています。

今号からスタートした
映画評論家の橋本光恵氏による新連載、「香り立つ女優」。
第一回目のミューズはジョアンナ・シムカス。
橋本氏がフランス映画に惹かれるきっかけとなった作品「冒険者たち」
に出演していたそうですが…語られる魅力に引きこまれ、私も記憶。

華やかな新作フレグランス情報も満載。
私が" Elegance is all " ・繊細なオーラを描くレペットの香りでもご紹介したレペットの新作に関するインタビュー記事もありますし、まるで霧につつまれているようなシルエットがロマンティックな「Mademoiselle Ricci L'Eau」やフタを開けた途端真っ赤なポピーが空中に浮遊していきそうな「Kenzo Flower In The Air」のヴィジュアルも素敵。

雑誌「リシェス」(ハースト婦人画報社)9月末発売号の香水記事に
本誌編集長が寄稿しています。
深まる秋の気配とともに
香りの豊かさを楽しむ時間が増えますように。

2013年9月20日金曜日

『努力する人間になってはいけないー学校と仕事と社会の新人論』(芦田宏直 著) を讀む


『努力する人間になってはいけないー学校と仕事と社会の新人論』(芦田宏直 著・株式会社ロゼッタストーン)

「努力する人間になってはいけない」???
そんなバカな、と思った人にこそ勧めたい。
日頃「努力」という言葉をどう解釈していたかを振り返ることができる。
他にも「先生」「一流」「読書」…そして「可能性」。
こうした言葉への認識を深くえぐられるような感覚に出会える。

とどめは最終章の追悼・吉本隆明。
著者の芦田宏直氏が自らの思想のお父さんのようなもの、と記す
吉本隆明とは、『言語にとって美とはなにか』の著者である。
そして、私にとって何度も読み返す1冊となった本の著者でもあった。
「匂いを讀む」(吉本隆明 著・光芒社) を読み直す

これでもかと言葉のみで伝え切ろうとする一冊。分厚い。
しかしながら偶発的に開いたどのページも期待を裏切らない。
言葉で生きている人間ならば必ず響くフレーズがある。
まるで話しかけられているように。
まさに、と頷くこともあれば
まさか、と驚きや疑問、発見へと豊かに繋がっていく…。

私はこの本に書かれていた内容の多くを
著者のブログやツイッターへの投稿で読んでいた。(と思っていた。)
購入の動機の一つは、それらをいつでも一冊の本として自由に読める
楽しみのためだったと思う。
しかし、そんな既視感への期待は最初から裏切られる。
冒頭、引用されたハイデガーの文章。
「人間の嗅覚とは、…」に始まる文章は初めて目にするものではあったが
私が20年来仕事を通して考えてきたことが言葉で明瞭に表現されていた。
著者なくして私はこのハイデガーの言葉に出会うことはなかったと思うと
この本のデビューに感謝する。

目次10章のタイトルとその順序自体が、現代を物語っている。
この現代という時代の登場人物の中でも
未だ「社会人」となっていない学生を筆頭に
かれらの教育に関わる全ての人たちには特に読んで欲しい。
なぜならば、かれらは次の「現代」をつくる人たちであるのだから。

甘み・とろみ・土の香り

今が旬のサツマイモ。
ヒルガオ科の植物です。

ころんと小ぶりなサトイモ。
サトイモ科。

そしてゴボウ。
キク科。

これだけ揃ったら
ゴロンゴロンと煮てみたくなります。

日本酒に合わせダシ、
大きめの羅臼昆布を落し蓋のようにかぶせて
弱火で。


手前の黄色みを帯びたサツマイモ。
ほくほくと一番最初に柔らかくなりました。
真ん中はサトイモ。つるつるしていますが
ゆっくり弱火で煮ないと中まで程良い柔らかさにはなりません。
ゴボウはシャッキリとした触感が残る程度に。

サツマイモの甘みと
サトイモのとろみ、
ゴボウから香ばしく漂う土の香りで
秋を満喫。

2013年9月18日水曜日

ミツバチの恵み

今日の"ル・モンド"記事。

Des aides débloquées pour une apiculture en crise
「危機に瀕した養蜂家への援助再稼働」

今春のフランスの異常気象は養蜂家にとって大きな痛手であったらしく
蜂蜜はほとんど収穫できなかったようす。これにフランス農業省が対応
している様子が記事になっています。

ミツバチは確かにハチミツもつくりますが
それだけではなく
さまざまな植物の受粉に貢献しているはずであり
ミツバチの動きは
農作物を食糧とする人間にとってきわめて重要です。

先日発見し、
あまりにも愛らしいミツバチの姿が印象的だった記事を
回想。大きな瞳とふわっとした胴体で花から花へ。
記事後半には
蜂蜜の香りをテーマにしたフレグランスも紹介されています。

Liquid Gold - Honey
07/18/12 16:22:38
By: Marina Milojević


こんなに小さなミツバチ一匹が一生に集める蜜の量は
なんとティースプーン1杯の1/12であるというから驚きです。
あの黄金のハニーは
どれほど多くのミツバチが日々働き続けて集めた結果でしょう。

そして
一匹のミツバチが世界中を飛行するのに必要なエネルギー分の
蜜は、テーブルスプーン2杯分にすぎないのです。
なんという栄養価。
植物の成分がハチの体内でこんなにも素晴らしいものとなるのです。

近年、大量のミツバチが失踪した事例を聴いています。
気候、環境、農薬、ストレスなど様々な理由が考えられるそうです。
植物の生殖にも関わるだけに
ミツバチの生態は地球環境の問題。

蜂蜜の香り、といえば
私はさまざまな花を
とりわけダマスクローズの精油の
甘い芳醇な香りを思い起こします。


2013年9月17日火曜日

やさしい酸味と香り・冬瓜

夏から初秋に収穫される冬瓜。
去年も秋分の頃に料理したことを回想。

緑の皮。
楕円の回転体。
ウリ科。

私が幼い頃、郷里では「カモウリ」と呼んでいました。



生のまま千切りにしてサラダにしても美味しいのですが
今夜は
小さながんもどきと合わせて
富山の日本酒とだしとでゆっくり煮込みました。


淡白ながら
ほんのりさわやかな酸味と
日本梨さながらの上品な微香。

煮汁をたっぷりと吸って
ホロンとこぼれる触感がすばらしく…
この風味は日本酒にもよく合います。

2013年9月15日日曜日

秋祭り

彼岸まであと1週間。

9/14,15と近所の秋祭り。
出掛けてみた。



かれこれこの界隈に住んで20年。
桜の季節と秋祭りと、初詣のたびに訪れる場所。

今年も
きびしい猛暑を乗り越えて
なんとか生き抜いた人達が
つかの間のリラックスを楽しんでいるようにも見える。

お好み焼きや焼きそばのソースに混じって
ジャガバターや串焼きの匂い。
かき氷のシロップ
やあんず飴の甘ったるい匂いとともに
ほろ酔いのアルコール臭や
浴衣姿から漂う香水の香り。
香ってくるのはフルーティーな香調が多い。
妙に周囲と調和していおもしろい。

いつもは静かな住宅街。
よくこんなに老若男女がいたのかと
思うくらいに人が集まる。

2013年9月14日土曜日

葡萄の香りと葛の花

葡萄。ぶどう。
皮ごといただくと
甘みと酸味と渋みのバランスが抜群です。


GRAPE(英語)
RAISIN(仏語)
UVA(伊語)…

そのまま食べても美味しくて
ワインになっても美味しくて。
香りも素晴らしい。



そんなぶどうの香りを彷彿とさせるフレグランスが日本にあるようです。
武蔵野ワークス 「葛の花」
このフレグランスがつくられたきっかけとなったエピソードが素敵。

葛の花は
外見も遠くからみると葡萄の実のようなのですが
その香りも甘くフルーティー。
まさにぶどうのようだという意見もあります。

葛は秋の七草の一つでもありました。

2013年9月12日木曜日

「清潔感」を残り香に…ザ・ランドレスの香り

先月末にコチラの記事で書いていた、THE LAUNDRESS(ランドレス)。

今日は急に真夏に逆戻りしたような残暑で
着ていたコットンのブラウス、
薄地ウールのカーディガンとともに
デリケートな生地でできたアイテムを手洗いすることにしました。

襟元のうっすらとした汗染みをキレイに洗い落とす
WASH & STAIN BAR を泡立てると
昔なつかしい外国の石鹸そのもののクラシカルな香り。
これは、ランドレスを象徴する"classic"という香りで
淡くサンダルウッド、イランイラン、パチョリにシトラスという
柔らかなフローラルタイプ。

WOOL & CASHMERE を少量、溜めた水にかき混ぜて
ウールのカーディガンを浸します。
ウールは水につけるとチョット独特なウール臭が立つのですが
シダーなどウッディでスパイシーなキリッとした香りのおかげで
爽やかに洗い上がりました。

デリケートな素材のランジェリーや外出着は
DELICATE WASHで。
"lady" という香りの名前から
フェミニンな香調を想像していましたが
グリーンハーブの清らかさに
まろやかなアンバーとシトラスが上品に融合し、
凛とした清潔感が前面に。
この残り香であれば
女性に限らず男性にも似合いそう。

衣類を洗うために濡らすと
水で濡れることによって
繊維や素材のあまり好ましくないニオイが立ったりしますが
そんな違和感もこうした香りのおかげで気にならず
なおかつ干してしまうと
気がつくかつかないかという程度に
かすかな香りが
清潔感という印象を残すのみ。

ナチュラルで心地良い香りは
ファブリックケアの記憶に刻まれ
キレイに乾いてアイロン掛けされた服に
なおいっそうの愛着を持てるはず。

ザ・ランドレスオリジナルの香りには
天然精油が使われているそうです。

2013年9月11日水曜日

"Portrait " (Paul Smith )・香るたび、ポートレート

フレグランスをきっかけにブランドを知り
そのブランドの他のアイテムにも興味を持ち始める、
私にはそのような経験が何度かあった。

今回もそのケース。
Paul Smith 自体はブランド名もこれまでのフレグランスも
「知識」としては知っていた。

しかし
このブランドについてもっと知りたくなり
ブランドヒストリーまで読みふけってしまったのは
今回の新作フレグランス"Portrait "のニュースを知ってからのこと。

私は、身につけるフレグランスの魅力とは
動きとともに、場所によって、
一瞬一瞬香るたび、香りを感受する人にのみ見える
ポートレートのようなものであると考えていた。
それがまさに、今回のフレグランスの名前となっている。

PAUL SMITH PORTRAIT
Posted by William Charlesworth on Monday, June 10, 2013 · 0 Comments


シルバーメタルとスモーキーグレイグラスの組合せによる
柔らかな曲線でつくられたボトルもどことなくモダンでありながら
エキゾティックな魅力をもつ。

香料は?と別の記事もチェック。

Paul Smith Portrait
09/08/13 14:41:55
By: Sanja Pekic



レディスとメンズのペア。
それぞれに重なり合う香料がある。
トップからミドルノートには
共にベルガモット、カルダモン、ブラックカラント。
ラストにはミルラ。

フローラル・グリーンのレディスは
紅茶やピーチの香りで初々しくフェミニンなプロローグ、
ミドルのローズやジャスミン、ラストのムスクが
パウダリーでムスキーな印象へ。

ウッディ・スパイシーのメンズは
ピンクペッパーやゼラニウム、
シダーやバルサミックなラブダナムによって深い余韻を残すはず。

フレグランスのイメージヴィジュアルも象徴的。

2013年9月10日火曜日

リンゴとレモンとシナモンと


秋一番のリンゴ、つがる。
9月には店頭に並んでいます。




フレッシュで優しい甘さが初秋の味わい。
生でも美味しいのですが
週末、煮てみることにしました。

リンゴに三温糖をふりかけ、しばらく待つと
リンゴから水分が出てきます。
これをゆっくりとレモンと共に煮ました。
最後にシナモン。

雨続きの日曜日でしたが家の中は
爽やかなレモンのトップノートから
フルーティーでフローラルなバラ科のリンゴ、
ほのかにスパイシーなシナモン…
と素晴らしい香りに包まれ、幸せでした。

おかげで
ヨーグルトやバニラアイスクリームに添えたり
バタートーストに挟んだりと
美味しい二日間でした。

来月あたりが旬の紅玉ほどは酸味が無いですがレモンで補って
シナモンの余韻とともに秋の香りを満喫。


2013年9月8日日曜日

"JEAN PATOU" 100年目の "JOY FOREVER"

香水史上、特筆すべき"JOY"。

1914年にフランス人ジャン・パトゥが創設した
ファッションブランド、"JEAN PATOU"によって
世界恐慌の只中にあった1930年にデビューした
英語の名前のフレグランス。

当時、新作候補としての提案がことごとく気に入らないパトゥに対し
調香師は、それまでに研究してきた小瓶を差し出したという。
高価な天然香料をふんだんに使った、市販では非現実的な試作を
「まさかこれは絶対選ばないだろう…」と思いながら。
しかし、パトゥの言葉はこうだった。
「これだ、すばらしい!…これを香水のロールスロイスにするんだ」

この瞬間、デザイナーのサプライズという「歓喜」が
コストの制約を超越した。

"JOY"の発売直前に株式市場崩壊、世界恐慌。
裕福だったアメリカの顧客の大半の経済状勢は悪化。
そのような中パトゥは
バカラクリスタルのボトルに詰められた「世界一高価な香水」を
揃いの服を着た従業員に一軒ずつ顧客の玄関先に届けさせたという。
これは文字どおり「歓喜」を贈ったことになるのではないか。

…このエピソードはこれまでに何度も様々な書物で読んだ。
シャネル5番の誕生秘話もそうであったが
稀少で高価な天然香料、ジャスミンとローズの威力はもちろん、
デザイナーが自身のサプライズに忠実な決断(選択)を行い、
絶妙なタイミングをもってデビューさせる情熱がなかったら
こうした名香は市場に登場し得なかっただろうと感じる。

"JEAN PATOU"誕生100年目目の2013年11月。
ブランドの象徴的存在となった"JOY"の名を冠した新作デビュー。

Jean Patou Launches Joy Forever
09/06/13 15:28:58
By: Elena Knezhevich

Jean Patou launches Joy Forever
(Launches/Relaunches, Fragrance)


"FOREVER"(永遠に)。
現に私はこのニュースを知ってあらためて83年前の"JOY"のことや
"JEAN PATOU"の本国のサイトでそのブランドヒストリーを読み直し
記憶に再度刻みつけようとしている。

"JEAN PATOU"Webサイト中のコチラ
"JOY" のページ から、誕生から100年目を迎えたブランドの顧客への愛情が感じられて温かい気持ちになった。

参考文献
『フォトグラフィー 香水の歴史』
ロジャ・ダブ著
新間 美也 監修
株式会社 原書房

2013年9月7日土曜日

ゲランド(Guérande)の塩


ゲランドの塩。
フランス西海岸、ブルターニュ地方にあるゲランドの塩田で
太陽光と風だけで結晶化させられた自然の風味。


一昨日訪れたケーキショップで30g小分けパックを購入。
その海からの恵みの旨味を味わうと
コチラの記事 で書いたようなブルーカラーを思い起こします。

"STYLE'S CAKES & CO."では
この塩を使って焼かれた塩ケーキもありました。

お菓子はもちろん、
サラダにもステーキにも。
ミネラルの旨味を柔らかく含んだ海の味は
生き物の故郷の味。
ホッとするような美味しさにしてくれます。

ゲランドの塩田の歴史は1000年以上とききました。
このような伝統的製法でつくられている塩職人さんに感謝。

2013年9月6日金曜日

"STYLE'S CAKES & CO."のパイとケーキ


昨日の記事 の続きです。

色とりどりの宝石のようなタルトやパイの中で
大好きないちじくを選びました。
いちじくレッドがキラキラ。



フレッシュな香りのいちじくを味わう嬉しさが
程よい甘みと生地のバター&ほんのりソルトな優しさで
もっともっと素敵なものになりました。
旬のフルーツの香りを存分に楽しめるパイです。

そしてこちらもフルーツが主役のロールケーキ。



中身は季節によって変わるのでしょう。
生地の優しい味わいは
その時だけの旬の果実の香りをひきたてています。

いちじくは今週いっぱいで終わるそうですが
林檎の季節にはまた訪れたいと思っています。

"STYLE'S CAKES & CO."のタルト・ケーキ・キッシュなどの情報は
コチラ
定番となる美味しさの秘密には
旬の香りをひきたてる塩や砂糖にもあるようです。

2013年9月5日木曜日

"STYLE'S CAKES & CO."での個展


神保町駅A5出口から徒歩5分。
ケーキショップ"STYLE'S CAKES & CO." へ。




先日コチラの記事 を書きながら楽しみにしていた個展がこのショップ店内で観られるからです。




あたたかみのある木のナチュラルブラウンを基調に
壁のグレイッシュな、というかスモーキーなブルー?の色が
シックな店内。
波多野さんのモノクロームの絵が溶け込んでいます。
思わずこのブルーに似た色は?と
DICフランスの伝統色から見つけたのは…

「色名: BlEU BROUILLARD
由来: ブルー・ブルイヤール。
霧の中のブルー: 地面や海面に接した地層内で水蒸気が凝結し、
無数の微小な水滴となって大気中に浮遊し、煙のように見える
中にみられるブルーの色。」

由来の細やかな説明に納得。

波多野さんの描く白い花。
ユリ、タイサンボク、ツバキ、キク、ケシ、ユッカ…
植物の曲線美にあわせた額装のサイズで眺める実物は
ひとときの涼とともに
秘められた香りまで想像させてくれました。

"STYLE'S CAKES & CO."の
美味しいケーキについては次回に綴ります。

2013年9月3日火曜日

ドライフルーツにピンクペッパー

9月。

夏の疲れを癒そうと…
私にとっての貴重なタンパク質&カルシウム源の一つであるヨーグルトを
より美味しくいただくために
ドライフルーツをあれこれトッピング。



プルーン、レーズン、パイナップル、パパイヤ、マンゴーなどの
ドライフルーツカットを散らしたあと
先日コチラの記事 を書いていて思い起こしたピンクペッパーを中央にひとひねり。

程よい甘みと柔らかなフルーツの香りに
かすかに鮮烈なピンクペッパーの刺激。

ほんの少量でも映えるピンクペッパーの赤。

忙しい朝だけでなく
秋の温かいお茶の時間のデザートとしても
定番にしたいです。

2013年9月1日日曜日

Aroma Space Design ・嗅覚から空間美を求める試み

Aroma(アロマ)、という言葉の使われ方は多様。

本来は「芳香」を意味していたのに
20世紀半ばにフランス人化学者が、強い芳香を持つラベンダー精油の治癒特性の再研究を通じて「アロマテラピー」という言葉を造語してからというもの、アロマは治療のイメージと結びつけられることが多くなった。しかし、香り成分の薬理効果だけでなく、嗅覚による感じ方やイメージの受け方による個人差が微妙に絡み合う香りに対する人の反応は、西洋医学の薬効の捉え方だけでは把握できない問題もあり、日本では必ずしも治療の概念に直結させず、リラクセーションや心地よいライフスタイルの手段として非医療従事者が手がける分野として発達してきている。

幼少時からフレグランス(香水)が好きであった私は、他人にわかるかわからないか程度に香りを身につけ、常には鏡で見ることのできない自分を快い香りを漂わせる存在として感じる楽しさを知っていた。香水愛好者だったからこそ、後にアロマテラピーを学んだときに様々な天然香料の素晴らしさを感じ取れたのではないかとすら思っている。ゆえにフレグランス(香水)もアロマも人の嗅覚に良い香りと訴える存在、という意味では「根」は同じと考える。天然由来の香料があってこそ合成香料も生まれたのだ。

それでは…フレグランスとアロマの違いは何か。
フレグランス(香水)は人にとって化粧や衣服のような存在であり
その動作とともに漂う、パーソナリティーの表現に直結するもの。
アロマはもっと広い対象、食事に代表される人の活動時間の快感を
増幅させるものであったり、人が存在する建築空間のイメージを
決定するもの。

このあたりのことは
"aroma"という言葉を再考する好機となった、MFU第44回ファッションマーケティング研究会 でも記しており、
『アロマ空間デザイン』の事例から~MFU主催第44回ファッションマーケティング研究会 でご紹介した株式会社アットアロマでは、広義としてのアロマを活かす
アロマ空間デザインを実践している。

まさにこうした考え方が
一人のアーティストの作品写真とともに綴られた英文記事を発見。

Aroma Space
04/23/12 12:10:56
By: Naheed Shoukat Ali


記事中の作品はオランダ生まれのクリエイター、
Maurice Joosten によるもの。

彼はアロマ空間デザイナーとして株式会社アットアロマの依頼も受けていたようだ。空間アロマはその空間のヴィジュアルデザインに結びつけやすいということで
あたかも香り物質が空間を漂う軌跡を描いたようなオブジェが印象的。
素焼きの陶器でできた石のようなオブジュも実は香りの拡散器である。

人を意味づけるだけでなく
環境までをも意味づける香り、アロマの魅力は
これからも多くのクリエイターの心を捉えていくものだと想像する。
その魅力の根底には、治療的効果などという以前に
人の潜在意識をくすぐる想像力の源泉が溢れている。