この不思議な形に初めて出会ったのは2004年の夏、仕事で滞在した石垣島にて。
川平湾に面したホテルの支配人から、種をぎっしりと含む実が数個連なる枝を見せていただき、「月桃」の名前を知る。乾燥した実の外側には独特の線が渦巻き、中からは銀色がかったグレイの種がのぞいていた。淡い茶色とグレイの姿。ずっと忘れられなかった。
東京へ戻り数ヶ月後。この月桃の葉から得られた精油があることを知る。香りを試したときの最初の印象は、ほろ甘いスパイシー感。ほろ苦いのではなく「ほろ甘い」というのは幻覚のようなかすかな甘さ。ショウガ科ハナミョウガ属ときいて、ショウガにもミョウガにも通じる感触を確かに思い起こす。幻想的な香りの印象と「月桃」という名前が重なる。
月桃という名称。主に花、蕾の外観から呼ばれたという説もある。英語でもフランス語でも学名のAlpinia zerumbetで調べると情報が得られた。
英語ではおもに「shell ginger」と呼ばれ、他には「shell flower」、「pink porcelain lily」などと呼ばれるらしい。そのピンクの花の蕾が貝殻のように見えるそうだ。
一方フランス語では? 英語同様に「gingembre coquille =shell ginger」の他に
「fleur de mon âme 」(私の魂の花)、「larmes de la vierge 」(聖母の涙)、
「fleur du paradis 」(天国の花)など抽象的に表現されたものが見られる。
日本語の「月桃」という名前が腑に落ちる。花だけではなく実と種という最終の姿を初めて見た私には、すべての過程においてあり得ないような儚さを携えた、それでも実在する存在感という意味でも。このキューブを眺めながら香りを回想して和むと、色々な想像が楽しめそうな気がする。
Sola cube
http://usaginonedoko.net/products/solacube/concept/
東京にて、sawaroma より。
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