十数年ぶりにシャネルが新コンセプトの名でフレグランスをデビューさせるということで様々な期待があったと考えられる。その期待から外れたという声も聴く。何が期待されたのだろう?フランス語で言うところのOVNI(英語のUFO、未確認飛行物体を表す)のような衝撃? 奇抜さ? 既視感を否定し続けるその果てに究極のエレガンスがあるわけではないだろう。奇抜さは装いではなく人そのものの中にあれば良いのであって香りだけにその効果を期待するのは危険である。
私は今回の新作に良い意味で裏切られた。この香りに、定番のリアルクローズのような価値を感じたからである。
服で言うならばカシミアの肌触りのよいニットや柔らかなブラウス…。ベイシックなアイテムほど、見せ方は未知数。個人的に今年はこうしたアイテムを見直し、日常着を自分に合ったものに厳選したいと感じていた。
そもそもシャネルのフレグランスには、香りとしてのクオリティの高さを実感しながらも、私自身が身に纏いたいと感じたものはこれまでには無かった。今回は自身の日常(仕事の日もオフの日も)で気軽に纏える普遍的なクラス感(心地良い上質な空気感)を見出せた。ラストノートにこれまでのシャネルフレグランスとは微妙に異なる香り方を感じ、最初から直接皮膚で試すとこのボトルヴィジュアルさながらに花々の香りが立体的に四方にきらめくように立ち上がる一瞬が見えた。その鮮烈な光の印象のあとは静かに私を包むオーラとなっていく。持続性にこだわる気持ちなど消えていた。この体感だけでも一日が変わる。
ボトルも素晴らしい。マットな質感、抑えた光沢を持つシルバーゴールドのキャップは正方形のネームラベルと同じ大きさであり、揺らめく光を思わせる液体を映すガラスも見事。このボトルだけでも欲しいと思ってしまった感情が優先してしまったかもしれない。しかしながらその直観に後で感謝した。実際の香りもこのヴィジュアル通りなのである。正方形に奇抜さはないかもしれないが普遍的な形としての存在感とガラスの質感の新しさが中の液体をことのほか美しく見せている。今日はどんな香り方をするのかと眺めるたび思う。
ガブリエル。フランス女性名として良くある名前のようだ。先日鑑賞したセザンヌとゾラの映画にも登場していた。未だ形の決まっていない存在、どこにでもいるかもしれない女性が光に導かれ、自由な心でチャレンジしながら新しい未来を切り開こうとする可能性を秘めている。その光は一人一人異なる人生を輝かせるきっかけになるのかもしれない。年齢も立場も超えて。女性性を象徴するのにあえてローズを外し、四つの白い花で新しい花を生み出そうとしているのも興味深い。
『ガブリエル/シャネル』のラストノートに私が出会った時の印象は既にこちらの記事の中でも綴っていた。この中に『ガブリエル/シャネル』公式ウェブサイトも貼っている。
http://sawaroma.blogspot.jp/2017/09/3.html
そして昨夜、この新作に関しフランス語で書かれた記事で共感できるものを見つけた。
この記事の最後に、シャネルの言葉が引用されている。
「贅沢とは貧しいことの反対ではなく、下品であることの反対である。」
まさしくこのブランドが目指しているのはそういうことであり、新作でも具現化されている。
2017年の香り方、シャネルから。
J’ai trouvé un poste écrit en commun avec mes impressions sur ce parfum.
Gabrielle Chanel/
mardi 19 septembre 2017 /
THE EMPTY BOTTLE
http://the-empty-bottle.blogspot.jp/2017/09/gabrielle-chanel.html
東京にて、sawaroma より。
…écrit par 《SAWAROMA 》à Tokyo.
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