2018年2月15日木曜日

History was his story ・『ベロニカとの記憶』(The Sense of an Ending)



イギリス映画を観たいと思っていた矢先、この映画のタイトルと原作小説のタイトル《The Sense of an ending 》に目が留まった。記憶、感覚、エンディング。どうやら初恋の記憶が鍵らしい。出演者には謎めいた眼差しが印象的なシャーロット・ランプリングもいる。予告編を観た。魅力的なイギリスの街並み、過去と現在の重なり。謎の手がかりとなるのは手紙。





映画パンフレットより



映画『ベロニカとの手紙』公式サイト

http://longride.jp/veronica/

120より全国公開


私は原作を読んではいない。映画は予め用意されたストーリーも重要かもしれないが、目と耳とで同時に感受できる映像独自の力のほうが大きい。ストーリーは映画を鑑賞した人が頭の中で再構成するものなのだから。見えている映像、聞こえる音声は、その映画が語る事実であり、主人公の頭の中で作られた彼の過去という歴史でもあった。さらにこの映画作品を観た人がそれぞれの物語を想像したり解釈したりする。



この映画では謎が提示されながら、最後まで全ては明らかにならない。生きている人間は死んでしまった人間の気持ちを確かめることができないように。たとえ生きているとしても人は本心の全てをそう簡単に他人には伝えないだろう。表情や行動、態度から想像力や憶測で様々な解釈は可能だ。しかし真実は謎のまま。仮に生き残った人間を「勝者」と呼ぶならば、過去を綴る歴史は常に勝者の物語である。



映画パンフレットより


映画観賞直後の私は、主人公である男性の視点から謎の答えを考え、想像した。しかし翌日、このシャーロット・ランプリング扮するベロニカの瞳と声を思い起こしつつ、彼女の視点から想像した。2種類の物語は全く違う。ベロニカの母、主人公の友人、それぞれの物語があるはずだ。人が分かり合うためにはやはり、傷つくことを恐れずに言葉を交わし続けなければならない。ふと考える。「あの人」と最後に交わした言葉は何だったろうか。




映画チラシより


断片の印象より

若かりし英国人の2人がぎこちないフランス語で会話するシーンは素敵だった。

主人公が40年前の学友2人と再会時、皆体型も髪型も大きく変貌しているというのに、互いに「変わらないなあ」と笑う。こうした関係性は宝物だと感じて心が温かくなる。



東京にて、sawaroma より。



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