代官山蔦屋書店で先週来、『ティエリー・トグルドーの憂鬱』(明日8/27より公開)のポスター展示が行われていた。主演のヴァンサン・ランドンや監督のステファヌ・ブリゼの過去作も紹介。
これまで私は彼の出演作(日本未公開のものも多い)を鑑賞することを通して応援してきた。その彼が日本でもこのように脚光を浴びる機会を得たことが嬉しい。
『ティエリー・トグルドーの憂鬱』
原題は《LA LOI DU MARCHÉ》。直訳すると「市場の法則」。
本国フランスでは100万人が観たという。この社会派ドラマである本作に主演することにより、2015年カンヌ国際映画祭、2016年フランス・セザール賞において主演男優賞W受賞したヴァンサン・ランドンの魅力を紹介してみたい。
VINCENT LINDON (ヴァンサン・ランドン)。
私は20代の頃、彼が初めて主演した映画を観てその表情の豊かさに驚いた。
私は20代の頃、彼が初めて主演した映画を観てその表情の豊かさに驚いた。
この人の眼差しや表情は、時に深いフランス語の台詞を見事に体現していたし、当時28才の彼が、少年のようなひたむきさと成熟した大人の優しさを香らせていたことも記憶に残っていた。以来…彼の出演作を探し続けることになる。
これまで私が《SAWAROMA》で綴ってきた記事の中で、彼の出演作に触れながらその魅力を紹介しているものが以下の4本。
「キアラ・マストロヤンニからヴァンサン・ランドンへの回想」/SAWAROMA /2013,10,29
(日本未公開の『Les Salauds』紹介))
「立冬・半年先の新しい香りと映画の中のブルーと」/SAWAROMA/2013,11,7
(邦題『ガスパール〜君と過ごした季節』紹介)
「"Quelques heures de printemps"は「人生に必要な言葉を交わせるか」を問う映画」
/SAWAROMA/2013,12,21(邦題『母の身終い』鑑賞記)
「『友よ、さらばと言おう』(MEA CULPA)/フランス映画祭2014」/SAWAROMA / 2014,6,29
彼へのインタビュー記事を読むためにフランス語の辞書を何度も引いたことを思い起こす。極めて深く物事を考えているゆえに慎重に言葉を選んで表現する人であることも感じられた。それゆえに作品中の表現でも言葉に頼ったりしない。その行動はいつも印象を残す。装い、眼差し、表情の変化、全身の動き方…全てに込めている。観る側の想像力が大いに刺激されるのだ。
今回の『ティエリー・トグルドーの憂鬱』では、現実に真っ向から挑む男性を演じるようだ。憂鬱という日本語の漢字は重い。重いだけに乗り越える価値があるはずで、今を生きる現代人へのエールになるのではと期待。明日からの公開を楽しみにしている。
公開に向けて、ヴァンサン・ランドンへの素晴らしいインタビュー記事が映画関係者の方々から発信されている。そのほんの一部ではあるが、斎藤香氏の記事と杉本穂高氏の記事2本をご紹介したい。
「現代のヒーローは権力にNOと言える人」フランスで100万人が見た映画『ティエリー・トグルドーの憂鬱』主演男優に会ってきたよ!/撮影・執筆=斎藤 香( c ) Pouch
カンヌで男優賞受賞のヴァンサン・ランドンインタビュー!
その抑制的な芝居の魅力とは/杉本穂高
https://filmaga.filmarks.com/articles/849/カンヌで男優賞受賞のヴァンサン・ランドンインタビュー!その抑制的な芝居の魅力とは
次回作では彫刻家のロダンを演じるために髪を短くしたというヴァンサン・ランドン。このヘアスタイルと面差しから、20代で彼が若き警官役としてほんのチラリと出演したときの表情を思い起こしてしまった。年齢を重ねながらも失わない自由な心を感じた。……まずは明日からの公開作が盛況となりますように。
東京にて、《SAWAROMA》より。
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